ーー古代は今回キーマンに連れられて、地球が隠していた重要な秘密を知ってしまいます。
小野
秘匿されていた部分であり、古代が知らされていなかったこと。あれはショックでしたね。ひとりの男としても、軍人としても悔しかったと思います。第一章でも、地球が一枚岩ではないことが醸し出されていましたけど、第二章で明確になるんです。それはある種、地球の裏切り。地球のためにやるべきことをやろうとしているのに、その地球がひとつになっていない。僕も演じていて怖かったですね。
ーーそれでも古代を突き動かすもの、宇宙に導いたものは何だと思いますか。
小野
『ヤマト2199』で、「俺たちは異星人とだってわかり合える」っていうようなセリフがあったんです。それってもう理屈抜きで、人と人だからわかりあえないことなんてないっていう、本当にポジティブな考え方。それは古代にしか言えないセリフだと思うんですよね。真田も島も、もしかしたら沖田艦長でも言えないようなことを、彼は理屈抜きで言えてしまう。とても愚直ですけど、何もかもをひっくり返すぐらいの熱い思いを持っている人だから。今回なぜ旅に出るのかも、突き詰めていくとそこに集約されると思っています。人と人はわかりあえないことはないっていう。あと、困っている人がいたら助けるっていう、子供の時にお母さんに教えられたようなシンプルな、人がなすべき道理であり仁義かもしれません。そういう部分を『宇宙戦艦ヤマト』はたくさん描いていると思うんですよね。
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ーーだからこそガミラス星人であるキーマンだけは、理解ができないというような表情をしているわけですね。
小野
「なぜそこまでするんだ」っていうね。わからない、理解ができない。でもそのガミラスと地球は共闘していますからね。キーマンや外交官のバレルみたいに、こちらと接点を持ってくれる人たちもガミラスにはいるわけですから。古代は今キーマンに反発してますけど、あれって逆説的にとると、会話ができるっていうこと。僕はあの関係性すらもポジティブにとらえています。バレルさんとも話したら多分分かり合える気がしますし。
ーーバレルはいい人に見えますしね。
小野
いい人か悪い人かが役者さんの演技からにじみ出ている気がしますよね。てらそままさきさんの声を聞いてると、絶対バレルは悪い人じゃないなって僕は思いますし。ガトランティスのズォーダーだって見た目はすごい悪そうだけど、「愛とは」という発言に信念と、ちょっとした温かみすら感じられますからね。
ーーキーマンと二人きりで話せる古代って、ガミラスやガトランティスとの間を取り持てる唯一の地球人なのかもしれないですね。
小野
外国に行ってその土地の言葉がわからなくても、なぜか現地の人と意思疎通ができちゃう人っているじゃないですか。古代ってああいう人だと思います(笑)。そして、その人がいるとなんかみんなが助かるっていう。ガンガン前に進んでいくし、どんどん道を切り開いていく。外国人の方と話すと「言葉がわかればな」って思いますけど、確かに「人間同士なんだからわかりあえないことなんかないんじゃないか」って、僕もわりと思っちゃうタイプなので。古代がなぜ艦長代理としてヤマトを動かしているのかも、理屈じゃなくわかるんです。それはヤマトクルーがいてくれたから。だから旅に出られたんだなと、今改めて思いますね。
ーー逆に言うと、古代はひとりだと何をするかわからない?
古代
そうなんですよね。真田さんや島など知っているメンバーがブリッジにいるだけで本当に安心しますし、島が乗ってくれて本当によかったなって。スタジオで鈴村(健一)さんの顔を見てホッとしましたからね(笑)。みんながいてくれないと困ります。『ヤマト2202』はクルー同士のつながりが格段に深いなと思います。
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ーーちなみに、アフレコ現場で小野さんもほかの方のお芝居や演出を聞いていると思うんですが、敵キャラクターがその後どうなるかは耳に入ってしまうのではないですか。
小野
みんな自分の役については知っている部分もあるんでしょうけど、みんなで共有しているわけではないんです。キーマン役の神谷さんは、先々のストーリーというよりも、彼は何をする人なのか、どういう立ち位置にいて、どういうことを考えて行動する人なのかを逐一、羽原さんと福井さんに聞いていましたしね。そうやって演者自身がわかっている部分は各自あるんですが、さっき言った「バレルはいい人な気がする」っていうのも憶測でしかない。でも演じているのがこの人なんだから……ってどうしても考えてしまいますよね。土方を石塚運昇さんが、山南を江原正士さんがやってるんだからって。各キャラが何を考えてるのか、どういう意思を持ってその場にいるのかが、演者さんの声で全部わかる感じがする。見事なキャスティングだなと思います。
ーー最後に、第二章の中で小野さんがお気に入りのシーンを教えてください。
小野
いろいろあるんですけど、ヤマトを発進させるために地球に残るという選択肢をしたクルーがいるんです。ヤマトに乗るだけが地球を守る使命に準ずるっていうことじゃないというのが、そのシーンで語られている。彼らも絶対に乗りたかったと思うんですよ。でも敬礼して見送ってくれる。彼らの思いも持って宇宙に行こうって強く思いましたし、アフレコをしていてもグッときましたね。そこから、威風堂々としたヤマトの発進シークエンスにつながっていく。あの一連はちょっと鳥肌が立ちましたね。旧作から見てくださっているフリークの方々は、あのシーンを見ると「あぁ、旧作と同じだ」って思われると思います。『ヤマト』の良さがあのシーンに凝縮されている気がしています。
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