――島を長く演じてきた鈴村さんとしては、彼の変化をどう見ていますか。
鈴村
『2202』のヤマトの旅って、入口があまりに荒唐無稽ですよね。テレザート星から救難信号が来たので助けに行こう、というただそれだけ。前作『2199』は、自分たちが絶望的な状況で救援が届いたことを一縷の望みとして旅立った物語だった。あの時助けてもらった俺たちなんだから、救援を求めている人を助けに行かないわけにいかないよということで、再び宇宙に行くんですけど。そんな中にあって島はすごく理性的で、思考が先行するタイプ。「気持ちはわかりますが、現実ってものがあるじゃないですか」っていうのが島の言い分なんです。島はヤマトに乗らないことでその意思表示をしたんですけど、やはりテレサのメッセージを島も共有していたことがわかる。再びヤマトに乗ることになった島は、相当大きな戦力になると思います。
――そう聞くと、島って苦労人とも言えますね。
鈴村
そうですね。お父さんがいなかったり、弟のしまじろうを地球に置いてきているし。
神谷
いやアクセントがおかしいから。
――弟の島次郎ですね(笑)。そういった事情がある島もやはりヤマトや古代に対して強い思いがあり、結果ヤマトに乗ることになるという。
鈴村
それが勝ったんでしょうね。頭で整理しきれないことがあって、だからこそ乗ることを選んだ島は吹っ切れる。この旅をどううまく成功させるかということに専念する。なにせ荒唐無稽なことを言う人がいっぱい出てくるし、それを諌めるという立ち位置に立っているのでね。ヤマトクルーには「島が乗ってくれてよかったでしょ?」って言いたいですよ。
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――島が持つ現実的な視点は、観客にとっても大事な視点になりますね。荒唐無稽な旅に出ることを理解するという意味でも。
鈴村
だって誰もが「そんな理由で飛び立っちゃうの?」って思いますもんね。なかなか頭では理解できない。
神谷
あぁやっとわかった、今回の『2202』の見方が。島の目線ってすごくニュートラルじゃない? でも最終的にはみんなの意見に乗り、ヤマトの意思に動かされて、みんなと一つの方向に向かうわけだけど。
鈴村
そうだね。
神谷
それって、旧作ファンなど『ヤマト』全体の物語を理解している人間は理解できる部分だと思う。だけどそうじゃない人にはわからないんじゃないかな。僕はキーマンの目線で見てるから、実は「こいつらわからんな」と思って見ていたんですよ。だけど今回の第二章の中で、「理由はない。あるとすればヤマトだからだ」っていうセリフがあるんです。
鈴村
あぁ、そうだ!
神谷
このセリフを聞いて納得できるのは、おそらく過去作のスピリットが宿っている人。逆にピンとこないのなら、キーマンの目線で『2202』を観るべきかもしれません。要するに、古代たちがどういうつもりでヤマトにまた乗るのかわからなければ、キーマンの目線で見るのが正解かもしれないって、今、話していて思いました。今後キーマンは文字通りキーマンになっていくと思う。ヤマトの乗組員の人たちの気持ちにどう左右されていくのかというのも、作品の見どころになっていくと思うので。
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鈴村
キーマンがヤマトクルーに感化されていくかどうかは、まさに視聴者目線でもあるわけだ。
神谷
うん、僕はそういうポジションでいなきゃいけないのかもしれないね。
鈴村
いい取材になりましたねぇ!(笑) 「ヤマトだからだ」ってセリフは、意図的に入れているのかもしれないよ。確かに物事を整理していくと島の言うことが正しいし、普通はこの航海を止めるよねっていう話だから。
――迷うことなく乗ろうとするクルーたちが大半ですが、「ちょっと待ってよ」と思う島のような人もいるという。
神谷
テレサからのメッセージを他人に説明したって、メッセージを受け取っていない人間はさっぱりわからないですよね。でも『ヤマト』の過去作を知っている観客なら、絶対に共感できる。
鈴村
あと『2199』を見ている人も、「そりゃ旅立つよね」って思ってくれるけどね。
――そういう意義でキーマンというキャラクターが登場したのかも?
神谷
そうかもしれないですね。キーマンを通して、観客のみなさんと気持ちがリンクしていけたらいいんでしょうね。この予想が正しいかどうかはわからないですけど(笑)。
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