「BLAME!」弐瓶勉×瀬下寛之インタビュー "ハードSFとウエスタンの融合"で新たな弐瓶ワールドが展開
舞台は人類が違法居住者として駆除される遠い未来。無限に増殖し続ける階層都市で霧亥(キリイ)は1人、階層都市の中心部にアクセス可能な存在“ネット端末遺伝子”の持ち主を探して旅をしていた。
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弐瓶
いきなりパイプのアップから入って、遠くの人物をパイプ越しに見るシーンがあるんですが、それを見て「大丈夫だ」と思いましたね。パイプが主役。本編もずっとパイプが映っていますし、これはパイプを見る映画ですよ。パイプだけ見ても十分楽しめるくらいいろんな種類が出てきます。本当にすごい執念で描いていますよね。
瀬下
パイプはハードSF的メタファーが強いですからね。無機物でありながら生活感があり、“生”を汲み取ることができるなど魅力に満ちあふれています。弐瓶先生はスタッフに向けて「弐瓶ワールドにおけるパイプとは何か」という授業も開いてくれました。
弐瓶
「竹のように節を等間隔に描いてはいけない」とか「壁には斜めではなく直角に入れる」といったことは伝えました。そういうものを踏まえて、正直やりすぎじゃないかというくらい執拗にパイプが描き込まれています。
瀬下
「とりあえずパイプなめ」という構図を想定して場面設計しました(笑)。
弐瓶
そのくらい振り切った方がいいと思うんです。何となくここにパイプを置いておけばSFっぽいだろうという中途半端な姿勢ではないですから。
瀬下
そうですね。徹底的に振り切ることによって弐瓶作品のエッセンスが映像にも宿ったんじゃないかという気がします。
――また、今作の特徴として“ウエスタン”というキーワードを瀬下監督は用いられていますね。
瀬下
ええ、マカロニ・ウエスタン(※)ですね。いわば無国籍性というか、その要素は狙って入れさせてもらいました。弐瓶先生総監修の元でつくったハードSFの世界観に、マカロニ・ウエスタンの持つ共感しやすいシンプルなストーリーラインが加わることで、新しいけどクラシックという少し不思議な印象の作品になっているはずです。
(※マカロニ・ウエスタン=主にイタリアで製作された西部劇の総称。非情・暴力・ニヒル・哀愁といったテーマが取り入れられた娯楽映画)
弐瓶
漫画を完結させてからも『BLAME!』には難解な世界観におもしろい物語をきっちり乗せるというやり方もあったよなとずっと考えていたんです。それを今回実現することができました。劇場版ではより多くの人に楽しんでもらえる作品にしたかった。そう考え抜いたものが実際の映像になっていると思います。
瀬下
弐瓶先生は本当に豊富なアイデアをお持ちの方ですが、脚本会議ではそれらのアイデアを詰め込んでいくのではなく、先生ご自身で「それはやめましょう」と肉を削いでいった。映像表現やストーリー構成、設定に至るまであらゆる要素を105分の映像作品に仕上げるために厳選しています。弐瓶先生の作品に対する取捨選択のバランス感覚も濃密に味わっていただけると思います。
《細川洋平》
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