「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明監督インタビュー 大切にしたのは“最初の読書イメージ” 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明監督インタビュー 大切にしたのは“最初の読書イメージ”

映画『夜は短し歩けよ乙女』が4月7日より全国公開となる。湯浅監督に、森見作品を読んで感じたこと、制作の際に考えたことなど、映画をいっそう楽しめる話をきいてきた。

インタビュー スタッフ
注目記事
「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明監督インタビュー 大切にしたのは“最初の読書イメージ”
「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明監督インタビュー 大切にしたのは“最初の読書イメージ” 全 8 枚 拡大写真
■読書イメージを大切に、原作とブレても面白ければOK

──お話を伺っていると、原作を読んだ湯浅監督の頭の中のイメージが、そのまま映像化されているんですね。

湯浅
基本的には最初に読んだ時の感覚で作っています。色々なところで勘違いした解釈もあるかもしれないし、人と違う独特のイメージも持っているかもしれません。でもそういう勘違いからも面白いアニメーションが生まれる。
実際に勘違いしていたのは、原作に「潜水艦のような丸窓のあるバーが……」と書かれていて、僕、それでてっきり「潜水艦バー」だと勘違いしちゃったんですよね。大阪まで行って取材して、映像を作って、それから本を読み返したら……。

──勘違いだった、と……(笑)。

湯浅
そうなんですよ(笑)。窓のことしか書いてないから「潜水艦バー」じゃないわけです。そのバーができたもの原作が発表されたあとだし。でもこれもその時に感じたイメージからですね(笑)。


──映像を作り上げていく中で、新たな発見や気付いたことがあれば教えてください。

湯浅
原作を読むと、ダルマとかりんごとか鯉とか、色々な関係やモチーフがバラバラに描かれているのですが結局はどこかでみんなつながっているんです。僕は絵コンテを描き終える最後まで気づかなかったけれど、李白さんが全部つなげているのだとわかりました。なんで急に竜巻が出てきて鯉を吸い上げちゃうのか、なぜ竜巻からりんごが落ちてくるのか。風邪の話とも一見すると何のリンクもないようだけれども、考えてみれば李白さんが全部つなげていた。絵コンテを描いてみて「これ全部みんなつながってるじゃん」って、セリフを足して、改めて描いてみました。


──他の作品でもそうですが、湯浅監督の作るアニメーションはシーンや出来事がめくるめくスピードで展開され引き込まれていくのが魅力的です。今作でもそれがいかんなく発揮されていて、とても楽しい作品になっていました。

湯浅
『夜は短し』でいえば、僕の原作に対するイメージがそれなんです。あとは、あんまり現実的に描きすぎないほうが伝わりやすい。「高い建物」って書いてあったらどこまでも高く、「窓が多い」とあれば異常なくらい窓を多く。実際のところを探っていくより、そこから想像したほうが読書イメージに近いというか。読書イメージを大切にして展開していってそれが面白いというのが、アニメーションの強みでもあります。それが多少原作からズレていても、きっと納得してもらえるはず。

──もう何度も京都にも足を運ばれたかと思います。湯浅監督にとって京都はどんな印象でしょう?

湯浅
『四畳半』で取材に行くまでは上品な古都のイメージでしたから、原作読むと突飛な印象を描かれていると思いました。しかし、実際に足を運んでみるとそれが本当にありそうで。何百年か前に実際に有名人が斬り合ったんだとか、本能寺があって信長がここで死んだのかとか、うっすら痕跡残る場所にいると不思議な感覚にとらわれる。某大学も魑魅魍魎が隠れていたり、樋口師匠みたいな大学生がいてもおかしくなさそうな雰囲気で。森見さんの作品って決して突飛なものじゃなくて、実際にそこにある京都の雰囲気からきているのだと感じました。


──歴史と由緒がある一方、大学がたくさんあって、若者も多くて。不思議なバランスで成り立っていると思います。

湯浅
行ってみると、思っていたイメージとはちょっと違ってきました。京都って薄味のイメージだけど学生が多いから意外と濃い味の食べ物も多いし、たぶんこれも学生が多いからだと思うんですけど古い銭湯やカフェもたくさんあって。のんびりしていて優しい感じもする。反面、なかなか受け入れてもらえないような雰囲気もあって奥深い。

──『四畳半』は、ひとりの男子学生の自問自答とそれを取り巻く騒がしくも愉快な仲間のお話ですが、『夜は短し』は振り返ってみてどんなお話だったと思いますか?

湯浅
「こうして出逢ったのも、何かのご縁」をみんなに改めて感じさせてくれるお話です。世の中には色々な面白い人がいて、みんなどこかでご縁がある、つながっている。黒髪の乙女が、そうした人間関係もお酒も本も、学園祭も何でも楽しんで、謳歌していく。先輩は努力の甲斐あって風邪を引いて黒髪の乙女に優しくされ嬉しい! みたいな。メチャクチャでもすごく楽しい。

──『夜は短し』に続けて、5月19日には同じく湯浅監督が手がけるオリジナル劇場アニメ『夜明け告げるルーのうた』が公開となります。こちらもとても楽しみです。

湯浅
『夜は短し』は絵柄的にマニアックな部分もありますが、『夜明け告げるルーのうた』はみんなが見やすい形、能動的に王道のアニメーション映画らしいものを、と思って作った作品です。少女漫画テイストを取り入れたいとずっと思っていたので、ねむようこさんにキャラクターデザインをお願いできて本当に嬉しい。いろんな世代の人に向け、たくさん冒険もしている映画なので、こちらもぜひ観て欲しいですね。

  1. «
  2. 1
  3. 2

《川俣綾加》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]