劇場版「名探偵コナン」静野孔文監督が語る、名作シリーズならではのこだわり【AJ2017】
2017年3月25日(土)・26日(日)の2日間にわたり東京ビッグサイトにて開催された、日本最大級のアニメ総合イベントAnimeJapan 2017。昨年につづき設置されたクリエイションエリアでは、アニメファンや業界を志す人々へ向けたセミナー型イベントが多数開催された。
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その初日、3月25日のセミナーステージ第一弾が、主催施策の展示「Production Works Gallery」でモチーフとされた劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢』の監督、静野孔文による特別講座「アニメの「監督」について」だ。
静野孔文は、2005年にアメリカで放送されたTVアニメ『G.I.ジョー: SIGMA6』の総監督をはじめ、日本国内にとどまらない活躍をつづけるグローバルなアニメーション監督。2011年には劇場版『名探偵コナン』シリーズの15作目となる『劇場版名探偵コナン 沈黙の15分』の監督に抜擢されたのを契機に、以降の『劇場版コナン』で監督を務めている。ほか、アニメーション映画『GODZILLA』の公開が今年に控えているなど、いまもっとも注目すべきアニメ監督の一人だ。
今回のセミナーでは、海外作品の制作にも数多く携わってきた静野監督の考える「アニメの監督とは何か?」がたっぷり60分にわたり語られた。
高校時代はロサンゼルスへ留学し、海外での活動経験も豊富な静野監督によると、日本と海外ではアニメ監督のスタイルにも大きな差があるという。目にしてきた海外の現場では、監督は全セクションを統括する俯瞰的なポジションから指示を出し、具体的な作業は各セクションが担うというスタイルが一般的、それに対して日本では、監督自らが細かい具体的なアイディアを出し、実作業にも積極的に携わる。その違いに当初は戸惑ったという静野監督だが、日本での仕事を通じて独学で作画とCGのスキルを習得し、2017年4月公開予定の最新作『名探偵コナン から紅の恋歌』でも、爆発シーンのエフェクトを自ら描いているという。
ほかにも、『名探偵コナン』シリーズを例に取りながら、監督の役割や仕事内容について解説。劇場版『名探偵コナン』では、まずプロデューサーが大まかな方向性をまとめた企画案を提示、それをもとに原作者と打ち合わせを重ね、それを踏まえたところからシナリオライターと監督で映画全体を組み立てる作業がスタートするという。「『コナン』の映画は監督が作っていると思われているけれども、プロデューサーや原作者があってこその作品」と、アニメ制作は何よりも集団作業である点を強調した。特に『名探偵コナン』は長年愛されつづけているシリーズなぶん、5年後や10年後までを見据えた視点から企画を練るようにしていると、長期シリーズならではの情熱とこだわりを語った。
質疑応答では、業界志望の学生から「様々な映像表現があるなかで、アニメならではの魅力や強みは?」という質問も。それに対して静野監督は、「アニメーションの場合、手描きや3DCGなど様々な映像表現とそれにともなう制作工程がある。アニメーションだからというよりも、大事なのは、自分自身のビジョンや、それぞれの作品のコンセプトに合った表現手法を選ぶこと」と、より広い視野からのアドバイスを返した。最後に、「監督には、様々な制作スタイルや表現手法に対応する柔軟性が必ず必要になってくる」と語りセミナーを締めくくった。
AnimeJapan 2017
ビジネスエリア:2017年3月23日(木)~3月24日(金)
メインエリア:2016年3月25日(土)~3月26日(日)
会場:東京ビッグサイト
《深井孔》
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