高浩美のアニメ・マンガ×ステージ評 「ペルソナ4」「戦国BASARA」「戦国無双」 | アニメ!アニメ!

高浩美のアニメ・マンガ×ステージ評 「ペルソナ4」「戦国BASARA」「戦国無双」

高浩美のアニメ・マンガ×ステージ第173回■舞台『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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高浩美のアニメ・マンガ×ステージ
第173回

■舞台『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』

2014年に上演された舞台『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』、今回の舞台『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』は、前作の”その後”の話になる。
おなじみの楽曲が流れ、足立透が登場、出だしは、ちょっと思わせぶり、それからキャラクターが全員登場する。そしてこの作品のキーマン、皆月翔、自称”黒幕”、二刀流でめっぽう強い、「お前の力が必要」と足立に言う。

前回と異なり、今回は3D映像で『ペルソナ4』の世界を舞台上に”再現”するが、特に戦いの場面や「ペルソナ~!!」とキャラクターが叫んだ後の映像は圧巻で、舞台を傍観する、というよりも物語の中で”体験する”といった感覚だ。また巽 完二演じる滝川英治が3Dで登場する自身との共演は必見シーン、演じる方は難しいと思うが、動きをシンクロさせていてコミカルで率直に面白い。映像だけの真田明彦との掛け合いも俳優陣にとってはなかなかやりにくい場面ではあるが、こちらも稽古の成果が垣間みられる。ゲーム・アニメと同役で真殿光昭が演じる足立透は、もうそのものでファンには嬉しいポイントであろう。
物語は、足立透の思惑、企み、そして皆月翔を中心に進行する。この二人の心の奥底は孤独で寂しく、性根が垣間見えた瞬間はどこか哀しい。足立と鳴上の生い立ちは似ており、鳴上は仲間との絆を育んだが、足立は他者との関わり合いを拒んでしまい、”光”と”影”のような立ち位置に。皆月は彼自身の中に真逆なものを内包させ、それが彼を悩ませる。彼らの心理的な状況は一種、哲学的だ。

ラストは鳴上悠を中心に”あの仲間”が一致団結して戦うが、率直に熱い。単独では力及ばないが、心をひとつにして立ち向かっていく様は迫力の映像と共に観客に迫る。友情、絆、そこから”奇跡”が生まれる。間口は狭いが高さのあるGロッソ、空間をめいっぱい利用した3D映像演出、ヘリが降りてくるシーン等は臨場感があり、一層リアルに迫ってくる。シリーズ化して欲しい作品である。

[公演データ]
舞台『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』
2016年7月6日~7月10日
シアターGロッソ
(C)ATLUS (C)SEGA/(C)P4U2 STAGE PROJECT
撮影/洲脇理恵(MAXPHOTO)
http://www.negadesignworks.com/p4u2/

■斬劇『戦国BASARA4 皇』本能寺の変

本格的な「斬」をひたすら追求する「戦国BASARA」シリーズの舞台最新作“斬劇『戦国BASARA4 皇』本能寺の変”、「是非も無し!」等の名台詞で知られるあまりにも有名な事件だ。
オープニングは、大立ち回りから、早々に真田幸村ら、おなじみのキャラクターが登場し、しょっぱなからテンションが上がる。個々のキャラクターの”紹介”パートは、得意の技を披露し、華やか、かつダイナミック、決め台詞がこれでもか、というくらいに出てくる。
織田信長は「戦国BASARA」では第1作から登場しており、シリーズ通じての最大級の悪役である。ワイルドで冷酷、残酷、もうこれでもかというくらいの邪悪さだ。舞台でも登場したとたんに、その強さをみせつける。自称「第六天魔王」というだけあって、その力は絶大だ。対する明智光秀も第1作から登場している。見た目は端整であるが、その実態はさしずめ狂人、である。また粘着質の後藤又兵衛等、個性的な面々が登場し、物語を盛り上げる。
今回の構成・演出はヨリコ・ジュン、映像に頼ることなく、メリハリの効いた使い方で”ゲーム感”を出すが、アナログ的なところもあり、全体として観やすくなっている。また、アンサンブルはアクロバット的な動きがさらに多くなり、また、殺される時の表情がなんとも言えない”迫力”で、”斬劇”の”斬”を際立たせる。一幕では、この圧倒的な悪の織田信長におなじみのキャラクターが向かっていくが、苦戦する中でお互いへの信頼や友情、想いを育んでいく。そして伊達政宗と真田幸村は「第六天魔王、あんたを討つ!」と叫ぶ。
それぞれの正義、忠義、互いを思いやる気持ちがぶつかり合う。ラストは怒濤の展開、一瞬も目が離せない2幕ものとなっている。

[公演データ]
斬劇『戦国BASARA4 皇』本能寺の変
【東京】
日程:2016年7月1日(金)~7月10日(日)
会場: Zeppブルーシアター六本木
【大阪】
日程:2016年7月16日(土)~7月18日(月祝)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
(c)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.basara-st.com/

■舞台「戦国無双」~四国遠征の章~

人気ゲームシリーズ「戦国無双」(コーエーテクモゲームス)、初演は有名な関ヶ原の合戦をクライマックスに、しかも大坂の陣とシンクロさせ、”時代劇”という観点からも新しい描き方で大きな話題を呼んだ。今回は石田三成を主軸に据えての物語、1582年、織田信長が討たれた”本能寺の変”から始まる。ゲームの中でも人気の高い中国の章、四国の章の登場人物も加わり、戦国の世に生きた武将たちの生き様を描く。

舞台、幕開きは合戦後のシーンから始まる。武将たちが倒れている光景、力を誇示し、武勇を立て、天下を目指した末の顛末、そこへ笠を被った僧が現れ、真田幸村の声が響き渡る、「誰もが己の信念により……」皆、自分が信じた道を突き進む。激しく、煮えたぎる心情と戦乱の世をアナログ的に表現する。アンサンブル陣の激しいコンテンポラリーダンス、布や旗を使い、縦横無尽にところ狭しと駆け抜ける。「反骨の魂だ」長宗我部元親は叫ぶ。
各武将の策略、想いが交錯する。熱い台詞の応酬が観る者の心を燃やしてくれる。1582年、あの”本能寺の変”、炎上する様をアンサンブルが赤い旗をはためかせて表現する。そして秀吉は「信長を超える存在に」と言って光秀を滅ぼす。「皆が笑って暮らせる世」を創るという主君の夢を実現させるべく、側近の石田三成は己の知恵と力で戦に挑む。クライマックス、四国攻め、ゲーム的な効果音、和楽器主体の楽曲が「戦国無双」の世界を盛り上げる。
舞台にしつらえてある”高低”で殺陣、アクションをダイナミックに立体的に見せる。舞台上にいくつか”お立ち台”があり、状況に応じてマンパワーで動かし、武将の立場や置かれている状況をビジュアル的に提示。あくまでも”人力”にこだわった演出、映像は一切使わない、出演者の”パワー”だけが頼りだ。しかし、人間の力だからこそ見えることがある。真田幸村のモノローグが効果的で、ストーリーや状況をわかりやすくする。

全体としては歌舞伎の荒事のようなテイストもあり、歌舞伎の見得に当たる決めポーズも多く、派手な衣装も相まって、かっこ良く、それでいて物悲しいストーリー、日本人の琴線に触れるような感触が美しい作品だ。

[公演データ]
舞台「戦国無双」~四国遠征の章~
2016年6月29日(水)~7月4日(月)
AiiA 2.5 Theater Tokyo
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)舞台「戦国無双」製作委員会All rights reserved.
http://www.marv.jp/special/stage-musou/

《animeanime》

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