フランスの中高生が選ぶマンガワ賞(その2)-費用をかけない賞のしくみ
[豊永真美] ■一書店の発案がきっかけ ■ お金がかからない賞のしくみ ■ 見返りが殆どない賞になぜ参加するのか ■ 出版社にとってはメリットが大きい ■ 日本ファンの集う拠点に
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このイベントは、一書店が企画したものであること、参加するためにその書店からの購入が義務付けられていること、候補作品の選択の透明性などの問題点もある。特に候補作の選考は主催者の一存のようで透明性を欠く点もあるだろう。「アンコリュプチブル」の候補作は1000人以上の専門家により選出されている。マンガワ賞が存続できるのは、フランスの特性というより、マンガワ賞が小規模で直接補助金を受けているわけでもないということもあるだろう。
一方、フランスのマンガ市場は基本1万部売れればよいという世界である。少女部門の受賞作の「orange」は第1巻が2万部も売れたということがフランスの出版社の宣伝文句となっている。一方、日本では映画の宣伝によると、2015年11月時点累計で310万部突破したとあり、フランスは日本の人口の半分であるということを考慮しても、日本と比較してマンガ市場の小ささがうかがえる。
その中で、マンガワ賞の候補となった722施設に売れるということはフランスの市場では大きな意味をもつ。さらに、多くの図書館は第1巻を買えば少なくとも第2巻は購入する確率が高いであろうから、出版社としては協力するメリットが大きいだろう。
このように、問題があっても低予算で図書館と中高生がふれあいの場をつくるという意味では、日本にとっても参考となるしくみだろう。さらに、日本でも、出版不況に苦しんでいる出版社にとって、例えば、翻訳文学、バンド・デシネやアメコミを対象としてなら、生徒が他の国の文化を知るという目的で開催を検討してもよいのではないか。
■ 日本ファンの集う拠点に
一方、日本のマンガを読むイベントにフランスの学校や図書館が700以上参加しているということは日本のコンテンツに関心を持つ層の広さを示している。
そこで、自発的ではあるが、アニメやコスプレのみならず、小説や折り紙まで関心が広がるとなれば、日本政府が文化活動を広げる拠点としては、利用価値があるのではないだろうか?
マンガワ賞に参加する生徒は、多少なりとも日本に関心のある層だろう。フランスで日本ファンの集う場所としては「ジャパン・エキスポ」が有名だが、マンガワ賞は参加施設がフランス全土に分布し、かつ、おそらくはまじめな生徒が参加している。こういったまじめな生徒は、日本の伝統的産品などにも興味を示す可能性が高い。図書館や学校では営利的な活動は制限されるかと思うが、検討に値するのではないか?
《animeanime》