ー作詞はGomさんとshitoさんの共作、作曲は曲ごとにどちらかが担当されています。このスタイルは結成当初から一貫したものですか?
Gom
そうですね、特に詞が共作というのはひとつの武器ですし、面白いところだと思っています。
shito
僕はそれまでDTMをやったことがなかったんですけど、HoneyWorksをはじめるに当たってGomにイチから教えてもらいました。編曲も最初はGomに頼っていたんですけど、だんだん作れるようになって、今では曲は編曲までそれぞれがやっています。
Gom
DTMというのはツールがあって使い方を覚えれば誰でもできるようになるんですけど、編曲は“絶対”がないので教えられないんです。shitoにどう教えたらいいのか悩んでいた時に、supercellのryoさんに「編曲の秘訣って何ですか?」って聞いたんです。そうしたら「根性だよ」って返ってきて(笑)。
それが僕の中ですごく刺さったんですよ。まさにshitoがそうだったんですね。僕が「編曲は根性だから、やるしかない」って伝えたら自分でどんどん成長して。
ー作曲家が2人いることで音楽の方向性がブレるかも、といった危機感はなかったのでしょうか。
shito
曲のテイストが違っても、歌詞は全て共作だし、イラストもあるので世界観はHoneyWorksになるんですよね。HoneyWorksはサウンドチームじゃなくて、動画も含めた作品を制作しているチームなので、不安はありませんでした。
ー作品作りはどういう流れで行っているのでしょうか。
shito
まず曲を作ります。そうしたら、2人が見られるようにGoogleドライブでリアルタイムに歌詞を書いていくんです。同時に、PVのラフな字コンテも歌詞の隣に書く。できたらヤマコに説明して、ヤマコが字コンテをブラッシュアップして絵コンテにする、という流れです。
ーヤマコさんとしてはそのやり方をどう感じていらっしゃるのでしょうか。
ヤマコ
元にあるものを膨らませる作業は個人的に好きなので楽しいです。曲は毎回一般視聴者と同じようにワクワクしながら待ってます。イメージがメンバー間で一致した時の達成感はすごく大きいですね。
Gom
曲作りはヤマコの絵に引っ張ってもらう部分も大きいんです。HoneyWorksは歌詞だけじゃなくて絵があって完成するので、その分奥行きも出る。絵があるから歌詞ではあえて言わないとか、特殊な作り方ができるのも特徴と思います。
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ーHoneyWorksを結成して曲をネットにアップした時、ユーザーの反応も大きかったと思いますが、どう受け止められたのでしょうか。
Gom
楽しかったですね。自分たちで考えた演出にみんなが反応してくれるとやっぱりうれしくて、「じゃあ次はこういう感じで」って考えたり。
shito
これだけ反応してもらえるんだったら「そう来るか!」と思わせたいなという気持ちも出るし、制作の励みになりました。
■『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』が揃った時に世界が広がった
ー「告白実行委員会」が、これで行けると思えたタイミングはどの辺りだったのでしょうか。
shito
『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』という2曲が揃った時ですね。少女漫画の世界観で「恋愛」をテーマに行こう、と最初から思っていました。大人になってから少女漫画を読んだらすごく面白くて、当時あまり少女漫画タッチの絵を描いていなかったヤマコにもオススメしたんです。
ヤマコ
その時に、実は私も少女漫画を描くのが好きだったという話をしたら、「少女漫画風のイラストでやろうか」という流れに自然となって。
shito
最初に『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』をそれぞれ主人公2人の物語で作ったんです。作詞をしながら、「前のPVに出た高校生キャラクターをこっちのPVで絡めたら面白いかも」って思いついて。それぞれ曲は独立してるけど、動画の中で絡めてみたところ、ニコニコ動画ですごく反応があったんです。前の曲にもそれを踏まえたコメントが増えたりして。そうしたらヤマコが「名前を付けたい」と。
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ーそれまでは匿名だったキャラクターに名前を付けることにしたんですね。
ヤマコ
やっぱり描いているとどんどんイメージができてくるので、血液型とか誕生日、家族構成まで2人にプレゼンして名前を決めました。
Gom
告白予行練習以前から「初恋の絵本」のPVで黒板に相合い傘が描かれて茶化されているシーンがあって、それが(合田)美桜と(芹沢)春輝でした。春の曲だったので春にちなんだ名前になっていて、それでしばらくしたらヤマコが今度は名字を付けてきて。
ヤマコ
勝手に付けました(笑)。
shito
6人のキャラクターを一気に付けてきたよね(笑)。
ヤマコ
PVのコメントでみんながキャラクターの名前を読んでくれるのがすごくうれしかったので考えちゃうんです。それ以降は新しいキャラクターが出る時には名前も一緒に付けるようになりました。
ー当初はボーカロイドが歌っていましたが、2ndアルバム『僕じゃダメですか?』ではキャラクターを声優さんが担当するようになりました。
Gom
豪華ですよね……(笑)。ここまで揃ったのは音響監督さんのおかげです。
ー音響監督は長崎行男さんですね?
Gom
長崎さんがすごく意気込んで声優さんにオファーしてくださったみたいで。
ヤマコ
全員主役級ですよね。声優さんにもアフレコのたびに「絶対アニメになるから!」って言ってくださったらしいです。
ー声優さんが決まったことでみなさんのキャラクターへ対する思いや創作方法などは変わりましたか?
shito
まずキャラクターが固まりましたね。例えば榎本夏樹は「元気でちょっとバカっぽい」という方向性が見えてきました。だから今度の歌詞ではそれまでに使ってなかった言葉をつかってみよう、こんなことを言わせてみようと。
Gom
今はキャストの声を思い浮かべながら作ってます。
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