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「アルスラーン戦記」作曲家・岩代太郎インタビュー 音楽制作や生誕50周年への想いを語る

『アルスラーン戦記』の劇伴でも知られる岩代太郎が、生誕50周年と作曲家人生25年記念したコンサート「岩代太郎とアルスラーン戦記×アジア映画音楽」を開催する。これを機にその音楽制作について伺った。

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「アルスラーン戦記」作曲家・岩代太郎インタビュー 音楽制作や生誕50周年への想いを語る
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■ 『アルスラーン戦記』の音楽はクラシカルな手法で作られている

――アニメ化した『アルスラーン戦記』は荒川弘さんによる漫画が原作になっていますが、さらにその原作は田中芳樹さんの小説になっています。

岩代
そうそう、そこがまたすごいところなんだよね。僕は今50歳だけど、そうなると僕の周りとか友達にはアニメファンはあんまりいないんです。そのなかで僕が今までに関わったアニメーションの中で、一番反響があったのが『アルスラーン』。日頃、連絡もくれないような友達や親戚が「面白い!」って(笑)。確かに見てて面白いし、中高年ですら楽しめる。考えさせられるテーマがある。その根幹はやっぱり原作だよね。

――岩代さんが『アルスラーン戦記』から感じたテーマとはどんなものでしょうか?

岩代
宗教や武力をもってして、本当に平和が訪れるのかということですよね。架空のストーリーとはいっても、世界史に対してのアンチテーゼかと思うような話ですよ。それにドハマりしたんじゃないかと。
意外に思うかも知れないけど、僕の中では『アルスラーン』の世界観、その訴えているテーマと、ジョン・ウー監督が作る映画作品のメッセージ性は極めて近いものがあると思ってます。

――なるほど。だから50周年記念コンサートのもうひとつテーマが、ション・ウー監督の『レッドクリフ』なんですね。

岩代
僕の中ではほぼ共通したテーマですね。「『アルスラーン』とジョン・ウーってどれだけ振り幅あるのよ」って意見をネットで見ましたけど(笑)。自分が50歳という人生の節目を迎えて、何を感じて、何を考えて、何を伝えたいのか。どんな曲をやるにしろ、そこのクオリティは担保したいし。人として、親として思うことを、コンテンツを通して自分の人生観だったり平和観に蓄積させていく。それをより伝えられると思ったんだよね。

――最後に読者へメッセージをお願いします。

岩代
ちょっとマニアックな話をしますが、“メロディ”と“モチーフ”という音楽用語があります。メロディは皆さんが口ずさむ歌と同じで、8小節とか16小節とか、ある程度長いものです。それに対して、皆さんが一番よく知っているモチーフは『運命』。ダダダダーンですよ。たった4つの音符の集まりで、メロディと言うにはあまりに短いでしょ。これをモチーフといいます。
壮大な音楽作品、例えば交響曲とかを書こうと思った時は、このモチーフという最小の単位を様々に広げていく。それで初めて、30分にものぼるシンフォニーが書けるようになります。ワンコーラス1分半みたいなAメロ・Bメロ・サビという構成の歌は、どんなに頑張ってもそこから30分のシンフォニーには広げられないんですね。
大きなものを書きたい時こそ、最小の単位からスタートさせるというのは、実は全てのコンテンツに言えることです。一番根幹となる「なぜその作品を作りますか」というテーマを、一言に凝縮できた時に壮大なシリーズ化が果たせる。『アルスラーン』では、まずそのことを意識しました。何十曲作ってもある種、最後は一点に絞り込めるような凝縮された世界観というものを音楽で表現したいと思ったの。これは、極めてクラシカルな手法です。
それをお見せしたいと思っているのが今回のコンサートなんです。『交響曲アルスラーン』みたいな、ほぼ純然たるシンフォニーと思って頂いていいです。僕が思うところの『アルスラーン』の最小単位をもってして4楽章を形成していく、ということですね。
作曲家本人が言うと口幅ったいですけども、そこまでの緻密な音楽製作をしている日本のアニメーションっていうのは、僕が知る限りだけど極めて少ないと思う。そういう意味では、最も音楽的な完成度を極めているアニメーション作品だと思うので、ぜひそれを体感しに来て欲しい。その上で、第2期を楽しみにして頂きたいですね。
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《キャプテン住谷》

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