CGアニメの未来とは?制作の最前線からのトーク 「黒川塾 二十九」レポート
「黒川塾 二十九」では、近年ますます関心を集める“CGアニメ”をテーマに「3DCGアニメーション制作のミライ」を開催。この分野で新たな取り組みをするクリエイターをゲストに招いた。
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エンタテインメントのホットなトピックスを取り上げることで定評のある「黒川塾」だが、今回テーマに定めたのは、ここ1、2年ますます関心を集めるようになっている“CGアニメ”である。「3DCGアニメーション制作のミライ」とタイトルし、この分野で新たな取り組みをするクリエイターをゲストに招いた。板野一郎氏、神山健治氏、土屋和弘氏、阿尾直樹氏、森口博史氏の5人である。
板野一郎氏は手描きのアニメーター出身。『伝説巨神イデオン』や『超時空要塞マクロス』のメカアクションで“板野サーカス”として一世風靡した。その後CGの導入、活用に取り組み、現在はCGスタジオのグラフィニカで作画や演出に加えて、人材育成や指導にも携わる。阿尾直樹氏と森口博史氏は、そのグラフィニカの中核スタッフである。
神山健治氏は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズや『東のエデン』などの傑作で知られる。映像表現の探求にも熱心で、『009 RE:CYBORG』ではセルタッチのフルCGにいち早く取り組んだ。今回のトークでも、現在取り組む新作のひとつが配信先行のフル3DCGテレビシリーズだと語っている。
こうしたなかでカプコンのゲームプロデュースを手掛ける土屋和弘氏は、異色な存在だ。実は土屋氏はアクションゲーム『アスラズ ラース』で、板野一郎氏と伴に新たな映像表現に挑戦した。
アニメのような映像と話題を呼んだ『アスラズ ラース』には、土屋氏や開発に携わったサイバーコネクトツーのアニメに対する愛情が溢れている。しかし、もともと本作はアニメスタイルで作る予定ではなかった。きっちりとストーリーを語りたいと考えるなかで、どんどんアニメに近づいて言ったのだという。
CGアニメをアニメ業界で語る時には、映画やテレビ作品が中心になりがちだ。しかし、映像表現としてゲームはアニメに近い存在だ。ゲームからのCGアニメへのアプローチは、CGアニメの本質を考える際に多くの示唆を与える。
トークでは板野氏の熱い語り口、神山氏の現状分析が強い印象を残した。とりわけ板野氏からは、アニメスタジオやアニメーターに対して厳しい発言も多く飛び出した。しかし、後半部分の板野一郎氏による映像の考え方やアニメの動きの実践レクチャーパートの語り口は、日本のアニメ業界の現状をあきらめるというよりも、もっとよくしたいとの情熱が感じられる。現状を変えられるとの考えがあるからこその厳しい発言、その手段としてのCGアニメなのかもしれない。
そのなかで、「3Dの人に2Dの技術を伝える」「ひとりひとりが生き残れるスキルを残したい」「コンテをやったことのない人にやらせる。そのなかから人が生まれている」といった言葉次々に飛び出す。一流の作り手・表現者として広く知られてきた板野氏は、同時に一流の教育者なのだとも感じさせる。
また神山氏は先のフルCGテレビシリーズ企画のほか、劇場映画の企画も進めているという。こちらはCGと手描きのハイブリッドになる。このなかではデジタル作画の導入を試みていると話した。異なったスタイルのアニメを同時に進め、かつ新しい技術に挑戦するのはいかにも神山氏らしい。
さらにトークでは、デジタル作画の問題点や「Storyboard Pro」を導入した絵コンテの作り方の変化など、監督ならではの考え方が紹介された。現在、進める作品が完成した際には、そうした試みの結果もより詳しく紹介されるに違いない。
豪華ゲストのトークもさることながら、板野氏とグラフィニカによる作画や映像表現の実践的なレクチャーもあり、盛り沢山の一日となった。参加者は様々なかたちでCGアニメのいまと未来を体験できたのでないだろうか。
なお3年間にわたり黒川氏が主宰してきた黒川塾は、次回で30回を迎える。11月12日に開催されるこの30回目は黒川氏が自ら語るとのこと。ジャンルを超えて、エンタテイメント業界を俯瞰する黒川氏のトークが期待できそうだ。
[数土直志]
《アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.biz》
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