2012年には自主制作作品『フミコの告白』の石田祐康さんに誘われるかたちでコロリドの所属となり、『陽なたのアオシグレ』でキャラクターデザイン・作画監督、『ポレットのイス』でキャラクターデザイン・アニメーションディレクターを務めた。
最新作の『台風のノルダ』では新井さんが監督、石田さんがキャラクターデザイン・作画監督と、これまでとは逆の役職を担い、コロリドの新境地を切り拓いている。今回は若干20代で劇場監督デビューを果たす新井さんに、作品の制作秘話や自身のキャリア、さらに今後のコロリドについてお話をうかがった。
[取材・構成=高橋克則]
『台風のノルダ』
6月5日(金)より公開
http://typhoon-noruda.com/
■ ジブリに入社した理由は『エウレカセブン』?
――まずはアニメーターになるまでの経緯について教えて下さい。
新井陽次郎監督(以下、新井監督)
もともとは風景画を描いていたので背景美術でアニメに関われることができればと思っていました。でも高校生の頃に『交響詩篇エウレカセブン』(2005-06)を見て、「キャラクターをこんな魅力的に描くことができるんだ」と衝撃を受けたんです。
そこからキャラクターデザインの吉田健一さんのことを知り、経歴を辿っていったらジブリに行き着いたという感じです。もちろんジブリは昔から好きでしたが、キャラクターに魅力を感じたのは『エウレカセブン』からなんですよ。
――アニメーターを経験されてみていかがでしたか?
新井監督
大変でしたね(笑)。ジブリでは動画を担当していて学べることは多かったのですが、ずっと続けていくのは自分には難しいんじゃないかと悩んでしまって……。そんな風にモヤモヤしていたとき、石田(祐康)君から『陽なたのアオシグレ』(2013)を一緒にやらないかと声をかけてもらったんです。
その時点での僕はキャラクターデザインや作画監督どころか原画すらしたことがなかったですけれど、「これはやらないとダメだ」とジブリを辞めて、スタジオコロリドへ行く決意をしました。
『アオシグレ』では自分の精一杯を出し切りましたが、今見るともう少し頑張れたのではないかとも思ってしまいます。ただ、動きの面白さを知ることができたのは非常に良い経験でした。
――石田さんとはpixivを通じて知り合ったと聞いています。
新井監督
はい。ジブリに入社する前からpixivやサイトで交流してました。だから石田君の『フミコの告白』(2009)が発表されたときは驚きましたね。「なんじゃこりゃ」って(笑)。個人じゃないと作れない勢いがありますし、何より一人で表現できてしまうものなのかと。当時は西ジブリ社内でも話題になっていました。コロリドに来てからは、石田君に自主制作や撮影について教えてもらったりもしましたね。
――その後はアートプロジェクト「Control Bear short」のPV『WONDER GARDEN』(2013)で監督を務めました。監督業にも興味を持っていたのでしょうか?
新井監督
僕がアニメ業界に入ったのは、何かを表現したいという思いが強かったからなんです。アニメーターの仕事で言えば、キャラクター単体や動きだけでなく、レイアウトなど全体的な絵を作ることがやりたかったですし、物語を描きたいとも考えていました。
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