コミック連載開始から90年以上、とぎれることなく続く老舗ミュージカル「アニー」 2ページ目 | アニメ!アニメ!

コミック連載開始から90年以上、とぎれることなく続く老舗ミュージカル「アニー」

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 超長寿のマンガ連載、映画、ミュージカルと長年に渡って多角的に展開し、世界中で知られるようになった元気少女アニー

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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コミック連載開始から90年以上、とぎれることなく続く老舗ミュージカル「アニー」
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■ 『Tomorrow 』は一度聴いたら忘れられないメロディ、子供達の熱演、演じきった笑顔が清々しい

ミュージカル『アニー』と言えば有名なナンバー『Tomorrow 』がある。一度聴いたら忘れられないメロディ。この曲は『アニー』のテーマでもある。どんなに辛くても明日を信じる。主人公・アニーはいつか両親が迎えにきてくれると信じている。だから孤児院の辛い環境でも笑顔とユーモアを忘れない。
当時のアメリカの世相を考えると、超不景気でも前を見て、明日はきっといいことがある、という意味なのかと思ってしまう。

ミュージカルにはホームレスの人々が寄り集まっている場所が描かれている。大恐慌で仕事を失くした人々であろうか。現代にも通じる部分で、なかなか社会派なミュージカルなのかもしれない。貧しいが、協力し合ってより添って生きている。アニーは孤児院を抜け出すも、結局は孤児院に連れ戻される。ハニガンはアニーが嫌いだ。どこか癇に障るのだろうか、大した理屈などはなさそう。ハニガンの孤児院は今なら絶対に”改善命令”が出そうな劣悪な環境だ。
そんな時に誰もが知っている大富豪・ウォーバックスの秘書・グレースがやってくる。クリスマスを一緒に過ごす子供を探していたのだった。グレースはアニーを一目で気に入り、連れて帰る。アニーにとっては夢のような生活だ。アニーの快活さに心を奪われるウォーバックス。働いて巨万の富を築いたが、お金で孤独感は埋まらない。仕事に邁進しているが、心の満足度は低い。仕事で虚ろな心をごまかしているようだ。豪華な部屋には”世界遺産”級の絵画が飾られている。

ウォーバックスの成金ぶりがよくわかる。ミュージカルでは語られてないが、彼もまた、両親を早くに失くしたようで、孤児のアニーに共感するところがあったのだろうか、瞬く間にアニーに心惹かれるのである。
アニーが両親を探していることを知り、アニーのために両親を探してやろうと決意する。もし、アニーの夢が叶ったらアニーがいなくなる。それでもアニーを愛しているからこそ、の決意である。笑顔の下にある寂寥感はちょっと心が痛い。結末を知っていても、である。

楽しいミュージカルナンバー、ダンス、まさに王道のブロードウェイ・ミュージカルだ。演じている子供達、厳しいオーディションを経てキャスティングされたので、どの子も熱演している。大人の共演者たちも子供達のエネルギーを感じながら、であろうか、
ゲネプロに関わらず、こちらも熱演だ。結末は誰もが知っていて”お約束”感はたっぷり。ウォーバックス演じるのは三田村邦彦、なかなかソフトな紳士ぶりに比べて、青木さやかのハニガンはちょっとドスを効かせて子供達の嫌われ役を好演していた。

ルースター演じる崎本大海は軽いノリの悪といった感じで一緒にいる甲斐まり恵演じるリリーはチープ感漂うお色気満載がマンガチック。秘書のグレースは劇団四季出身の木村花代が演じ、歌もダンスも申し分ない。アンサンブルの面々もクオリティの高いダンスと歌を披露、部屋を皆で掃除する場面はなんとも楽しい。
タップダンスの群舞、ここは毎年工夫を凝らしている。ダンサーの子供達が一生懸命で、中にはかなり小さな子もいて思わず”頑張れ”と手に力が入ってしまう。踊りきった笑顔は清々しい。ここはミュージカル『アニー』ならでは。ゲネプロではスマイル組、アニー役は黒川桃花が演じ、演出はジョエル・ビショップが担当していた。

このシーズンになると必ず上演されるミュージカル『アニー』。今年からは新国立劇場に場所を変えており、このゴールデンウィークの”定番”として劇場は子供達の歓声で賑やかになることだろう。連載開始から90年以上、100周年は意外ともうすぐだ。アメリカから遠く海を渡ってやってきたマンガ原作ミュージカルだが、1924年の連載開始時、誰も『アニー』が海を渡るなど想像も出来なかったと思う。ある意味、奇跡のミュージカルなのである。

ミュージカル『アニー』
2015年4月25日~5月17日
新国立劇場・中ホール
http://www.ntv.co.jp/annie/
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《高浩美》

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