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舞台「戦国無双」関ヶ原の章 疾走感あふれる展開、飽きさせない新しい時代劇

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 舞台『戦国無双』関ヶ原の章、各武将たちの”生きる意義”を疾走感あふれる展開で飽きさせない、全く新しい時代劇

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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■ ラストの大立ち回りはキャスト全員の熱量120%全開で物語は最高潮に!

舞台中央には無機質なオブジェ。セット全体が無機質なイメージ。荒涼とした”戦国時代”の象徴であろうか。幕が開くとそこは戦いの後。大勢の武将が横たわっている。まさに”諸行無常”といった光景だ。”幸村さま~”と声がかかり、武将たちが立ち上がる。なかなかドラマチックな始まりだ。和楽器を使ったRock調の楽曲はおなじみ”戦国無双”。アクロバティックなアンサンブルのダンスとゲームに登場するおなじみの武将たち、入り乱れての戦いのシーンは迫力満点。物語は1585年からスタートする。
上田城の戦場に敵中深く斬り込んだ幸村、徳川軍相手に奮闘、その背中を鉄砲隊が狙う。万事休す、といった瞬間に三成が現れる。そこに上杉の将、直江兼続も加わる。「共に敵を打ち破り、義の勝利を手に入れん!」と誓い合う。友情を超えた”同士”といった関係となる。

場面は行きつ戻りつ、各武将たちの”生きる意義”を見せる。主君のためなのか、あるいは新しい時代のためなのか、あるいは”家”のためなのか、悩みつつもそれぞれの正義があり、貫こうとする男たち、しかし、そう簡単に正義が貫けるような時代ではない。「意地を曲げてでも守るものがある」という言葉に集約される。
ゲーム的な雰囲気や動きを尊重し、技を繰り出すシーンはなかなか圧巻でフライングで立体的にダイナミックに見せる。ゲームファンなら、ここは”ほぼゲームから出てきた”感が味わえるはず。誰かを主軸に据えるのではなく、群像劇、つまり”武将たちの物語”となっている。もののふとして生き抜きたい幸村、”真田”の家を考え、弟を思いやる信之、幼い頃は共に戦いの腕を磨き、競い合った仲であった。芯を通したい三成、その末路は言わずもがな。アンサンブルの”活躍”が生きるステージング、秀吉、家康といった”大物”をアンサンブルが演じるのだが、これが存在感たっぷり。

サブタイトルにもあるようにラストは関ヶ原の戦いだ。ここで散る者、生き残る者、皆、悲哀に満ちている。大きく時代が動いていく。それから時が”ワープ”する。大坂の陣、ここで真田兄弟は真っ向から対決する。幼い頃に木刀を交えた姿とだぶらせる。ストーリーの節目ごとに全身白装束の男が登場する。この男は全てを知っているのだろう、儚く散っていった武将たちを弔っているようにも受け取れる。
幸村役の安西慎太郎始め、若手俳優陣がキャスティング、難しい立ち回りや台詞に苦労の後が見える。そこに細かい心情をのせる。ハードルが高い方がやりがいがあるというもの、ゲネプロにもかかわらず皆、大熱演。もちろん、ゲームファンならおなじみの台詞も満載、ここは要チェックポイント。

昨今、映像を使う演出が多いが、あくまでも”マンパワー”な演出。例えばタイトルロールも上から布、といった具合。ここは演出家のこだわり部分であろう。旗や布を効果的に縦横無尽に使いこなす。アンサンブルの役割は大きく、時代の大物を演じたかと思えば、武将に従う家来だったり、心情や状況の”スケッチ”だったりする。ラストの大立ち回りはキャスト全員の熱量120%全開で物語は最高潮に達する。ゲーム的表現と前衛風の演劇的表現、そして歌舞伎の荒事的な表現の融合というチャレンジャーな試みであるが、こういった演出手法の可能性を感じさせる。

1幕もので上演時間は約2時間15分、長いように思われるが疾走する舞台展開で長さを感じさせない。ゲームファンはもちろん、歴史好きな人も楽しめる新しい時代劇。公演期間が短いのが残念だ。

舞台「戦国無双」関ヶ原の章
2015年5月2日(土)~5月7日(木)
東京・シアター1010
脚本・演出: 吉谷光太郎
原作: 「戦国無双」シリーズ(コーエーテクモゲームス)

[出演]
真田幸村役:安西慎太郎 真田信之役:小沼将太 石田三成役:植田圭輔/直江兼続役:五十嵐麻朝 藤堂高虎 役:秋元龍太朗 大谷吉継役:和田雅成/伊達政宗役:安川純平 片倉小十郎役:鮎川太陽/加藤清正役:小野一貴 福島正則役:早乙女じょうじ 島左近役:山沖勇輝 稲姫役:紗綾/雑賀孫市役:金子昇/
声の特別出演 松方弘樹
アンサンブル:平野勇樹 反橋宗一郎 Kan ユーキ 阿部直生 橋本顕 山田諒 仲田祥司 池田謙信 名取隆晃 浅井雄一 金森啓斗 白柏寿大 真嶋真紀人 

舞台「戦国無双」関ヶ原の章
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《高浩美》

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