という『アニメライターの仕事術』を作るまでの経緯、後編です。
■好きなことしかできない“オタク気質”
もともと、子どもの頃から夏休みの宿題が8月31日まで全然終わらなかった私。
ライターになってからも、原稿は、締切り最終日にエイヤッと体力任せに上げているような状態でした。
それが、30代半ばになって徹夜して原稿を上げることが難しくなったことで、仕事についてどん底まで悩むことになりました。
もうライターとしてやっていけないかも……と思ったときに、“心の柱”にしたのが、「好きなことなら頑張れる」という性分。
もともと私は好きなことに熱中しがちな“オタク気質”でした。
算数の宿題をほったらかしで、牛の肉のどの部位が美味しいかという自由研究をがんばっちゃう。図工の時間内に絶対に終わらない巨大迷路の設計図を作っちゃう。
好きなことをやっていると、苦手なことがおろそかになって、いつの間にか学校(社会)が設定するゴールとズレてしまい、成果として認めてもらえない、そんなタイプです。
高校までは残念なことが多かったけど、大人になると好きなことで評価してもらえたり、みんなに喜んでもらえることが増えてきました。大人って素晴しい!(笑)
さてそんな私が30代半ばになって仕事のやり方に行き詰まり、そこから他の人はどんな仕事術を持っているのかを調べ始めました。
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■他人様の仕事術を見てトライ&エラー
でも、本屋さんのビジネス書コーナーに行っても、なかなか“フツーの人”が読んで参考にできる本は少なかったです。。
初めて読んだ仕事術本は、年収4000万円を稼ぎ出す弁護士さんによるものでした。
《嫌なことは、朝一番に上げてしまえば心が楽になります》
ううっ、これは無理・・・。
そもそもその頃には、パソコンがある机に座ろうとすると胃がきゅうきゅう痛くなるくらい“仕事に手が付けられない病”をこじらせていたのでした。
それからたくさんの本やライフハック系Web記事にある仕事術にトライするのですが、私の性分的に、うまくいくものとそうでないものに分かれることに気がつきました。
無理だったのは嫌なことを嫌なことのまま頑張る系。
よかったのは、1日の時間を定量化して、1タスクごとに達成感を得たり、ごほうびを設けるものでした。
好きなことなら頑張れるけど、嫌いなことはまったくできない。
落ち込むとそこで手が止まっちゃう。
要は感情に左右されすぎる。だから嫌な気持ちがあると、感情の波にやる気が押し流されてしまうんです。
このやっかいな性分を私は「テンション型」と名付けました。
感情の波に溺れず淡々とこなせる「コツコツ型」には、残念ながら私はなれない。
だから、「自分のテンションを上げるような仕事術」を探っていくことにしました。
一番落ち込んでいた当時、最も大きな気付きになった一文があります。
『脳を活かす仕事術』(茂木健一郎/PHP出版)の言葉です。
「脳は生命の輝きを放つためにある」。
〈脳は、うれしいとき、楽しいときに最も活動する〉という論です。
感情がノッてくると集中力が上がる「テンション型」の私にとって必要だったのは、「苦痛に耐える我慢力を身につける」ことではなくて、「作業自体を楽しんでできるようにする」ことだったんですね。
楽しいと感じることで、自然に継続力へと繋がっていく。どうすれば困難に思えるタスクに対する敷居を低くして、心がラクに続けていけるか。
この連載では、そんなことを書いていきたいと思います。
■ 渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
アニメを専門にするカルチャーライター。インタビュー記事、評論、エッセイなどの原稿を書いたり、誌面を構成したり。web媒体『ASCII.jp』で「誰がためにアニメは生まれる」を、隔月刊『Febri』で「妄想!ふ女子ワールド」等を連載中。単行本『ワタシの夫は理系クン』(NTT出版)など。渡辺由美子ブログはこちら。
イラスト・宮原美香