今回は本作を手がけたフランス人監督のグザヴィエ・ピカルドさんにお話を伺った。1945年の誕生以来、長年愛され続けてきたムーミンの魅力や劇場版の製作秘話、さらにはムーミンのおしりへのこだわりまで、多彩なエピソードを聞くことができた。
[取材・構成=高橋克則]
『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』
2月13日(金)より、全国ロードショー
http://www.moomins-movie.com/
■ ムーミンとの出逢いは日本
――まずは『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』の製作経緯について教えてください。
グザヴィエ・ピカルド監督(以下、X.P)
ムーミンの権利を持っているムーミンキャラクターズ社が、2010年にアニメ化の権利をオープンにしたのがきっかけです。フィンランド人プロデューサーのハンナ・ヘミラさんから連絡を受け、まずは二分半のショートアニメーションを作ることになりました。その作品をトーベ・ヤンソンの姪であるソフィア・ヤンソンさんに見せたところ非常に気に入って頂いて、劇場版の製作に繋がりました。
――ムーミンという作品についてはどのような印象を抱いていましたか。
X.P
実は私がムーミンと出逢ったのはフランスではなく日本なんです。1990年に初めて来日したとき、東京の本屋さんでムーミンのイラスト本を見つけ、そのデザインの美しさに惹かれました。
ムーミンは児童小説や絵本など、幅広い読者に向けて多くの作品が刊行されてきました。劇場版の原作である「南の島へくりだそう」はイギリスの新聞に連載されたコミックスのエピソードで、大人の読者を想定した内容になっています。これまでのアニメとはまた異なる魅力を持つ世界観を楽しんでもらいたいです。
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(C) 2014 Handle Productions Oy & Pictak Cie (C) Moomin Characters TM
――「南の島へくりだそう」を原作にした理由はどこにありますか。
X.P
このエピソードはムーミン谷ではなく、地中海沿岸のリゾート地・リヴィエラが舞台です。私が日本でムーミンと出逢ったようにフランス人の中にはムーミンを知らない人も多く、これまで作品に触れたことがなかった人にもキャラクターの魅力を伝えたかったんです。
そのためにはムーミンを普段とは異なる環境に置くことが一番だと考えました。ムーミンたちが住むムーミン谷からリヴィエラへ旅することで、水から出た魚のように、彼らの長所や短所がよりクローズアップされたと思います。
また本作には、ボヘミアンな生活に憧れるモモンガ侯爵や映画スターのオードリー・グラマーをはじめ、面白いキャラクターたちが揃っています。それも「南の島へくりだそう」を選んだ理由の一つです。
――劇場版にはスナフキンやミイなど、原作エピソードには出ていないキャラクターたちも登場しています。
X.P
スナフキンはムーミンに欠かせない重要なキャラクターです。でも彼のクールなイメージはリヴィエラの雰囲気とは合いませんよね。それに彼自身バカンスへ行っても退屈するだけでしょうから、今回はムーミン谷で留守番をしてもらうことにしました。
逆にミイはぜひとも連れていきたかったんです。彼女はユーモアもあるし皮肉も効いていて素晴らしい。ストーリーを盛り上げるのに打って付けです。