第18回文化庁メディア芸術祭では、アニメーション部門においてアニメファンからも人気だった映画『たまこラブストーリー』と山田尚子監督が新人賞を受賞した。テレビシリーズ『たまこまーけっと』の続編として映画化された本作は、正統派な青春ラブストーリーとして幅広い客層から評価を得た。新人賞受賞を機に、そんな本作の見どころと、受賞の感想を監督の山田尚子さんにうかがった。
[取材・構成=沖本茂義]
第18回文化庁メディア芸術祭
会期: 2015年2月4日(水)~2月15日(日)
会場: 国立新美術館、シネマート六本木、スーパー・デラックス 他
入場料: 無料 ※全てのプログラムが参加無料
主催: 文化庁メディア芸術祭実行委員会
http://j-mediaarts.jp/
■ 日常のきらめきを描きたい
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山田尚子監督(以下、山田)
ものすごく嬉しかったです。本作の作業中もスタッフに「これ、文化庁メディア芸術祭狙いましょう」と冗談混じりに言っていたんです。言葉にしたら叶うかなと期待していたのですが、まさか本当に賞をいただけるとはビックリでした。
―高橋良輔さんによる講評では、日常に宿る感動を描く手腕などが評価され、「現在の日本のアニメの到達点」と絶賛されています。
山田
作品づくりに関しては、“日常のきらめき”を見つけようと意識してきました。なので、その部分が評価されたのは純粋に嬉しかったです。
―作品についてうかがっていきたいと思います。TVシリーズから少し趣が変わり、たまこともち蔵の“恋愛”が作品の主軸となっていました。続編制作にあたり心がけたことは?
山田
脚本家の吉田玲子さんを含めいろんな方と話し合った結果、主人公であるたまこを描き切ることがいちばん大切だろうと。それから、本作で「たまこシリーズ」をきちっと完結させられるように。17歳の女の子をしっかり描くということで、「恋愛」という要素に決まっていきました。
また、TVシリーズからの続編ということで、従来のファンの方にはもちろんですが、未見のお客さんにも楽しんでもらえるように配慮しました。
―ここまで直球な青春ストーリーも近年珍しいです。結果的に、TVシリーズ未見の方もふくめて幅広い客層から好評を得ました。
山田
もともと“直球”にしようと思っていました。ひとりの女の子の恋の芽生えというとてもささやかな物語ですので、ヘタな小細工をしてはいけないなと思いまして。ふつうなら「もっと壮大に」とか「どんでん返しを」と言われそうな企画ですが、“直球”を通してもらえて感謝しています。さらにそれがお客さんにも受け止めてもらえたのは何よりの喜びです。
―本編では出番がないデラですが、それも作品をシンプルにするためだったのでしょうか?
山田
たまこたちが自分たちの力で一歩踏み出さないと意味がないんです。でも、デラがいると彼がたまこたちの悩みを解決させてしまうんですね。最後までデラが出られる隙間を探したんですが……。デラには「ごめんなさい」と思いながら、そのぶん「青春映画をしっかりつくろう」と腹をくくりました。