お話は両作品から、さらに今後のCGアニメのあり方にまで及んだ。
[聞き手=数土直志、取材・構成=細川洋平]
『アップルシード アルファ』
2015年1月17日、全国公開
/http://appleseedalpha.jp/
■ 作り続けることで、大発明が起きるかも
―セルルック特有のタメやツメなどのアニメ的な表現は、実際の役者の動きをCGに移し替えるモーションキャプチャーでも考えるのですか?
荒牧
最初の頃はタメツメをかなりやっていたんです。ジャンプした時にゆっくりにしようとか。今回は役者の芝居中心です。アクションで時々使うくらいですね。役者を決めるためにオーディションをやるのですが、最近はこれが面白くて。いい役者さんを見つけると、彼に任せようという気持ちになる。絵の作り方も芝居中心です。
水島
『アップルシード アルファ』は『キャプテンハーロック』(*)に比べても圧倒的に実写っぽかった。荒野の感じとか「映画として勝負しよう」という絵作りになっている感じですよね。
*3『キャプテンハーロック』荒牧伸志監督、2013年公開
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―現在、3DのCG作品にはお二方の作品だけではなく、例えば『シドニアの騎士』(以下、『シドニア』)のような様々なルックの作品があります。
水島
『シドニア』はポリゴン(ポリゴン・ピクチュアズ)さんのコストの考え方がすごく徹底していると思います。
荒牧
よくあの原作を見つけてきたなと思います。「クローン」「制服」「ヘルメット」。全てCGでやるための成功要素ですから。(笑)
水島
キャラクターのモデル数を少なくすませつつ、それが世界観に帰依していて、しかも宇宙船シドニアの中の集団だけ描けば成立する。モンスター(寄居子)が柔らかいのでその表現が難しいですけど、不定形だからモデルの転用とかできるはずです。企画を決める段階で勝算があるんですよね。
荒牧
しかもロボットが歩かない。宇宙しか飛ばないのは効率的です。
水島
シナリオ担当の村井(さだゆき)さんの話のまとめ方もうまいんですよね。あらゆる意味で、このタイミングであれが出て来たのはすごいなと思いましたね。
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荒牧
ルックで言うと『楽園追放』でもっとCGぽい質感で作ろうとは思わなかった?できないことはなかったはずです。
水島
キャラクターはやはりセルルックから一気に表現を変えるとお人形が動いている感じがどうしても拭えないんですよ。アーハン(*)とかボディースーツはモデラーと一緒にこだわりましたね。とはいえそれもやり過ぎないよう気を遣いながらです。
視聴者には急激な変化を見せるんじゃなくて、時間をかけて新しいルック・映像を知ってもらう。振り返ってみるとすごく進化していた、という形がいいんじゃないかなと思います。あるいは、ものすごい天才が新しい表現を大発見するしかない(笑)。
*アーハン 『楽園追放』に登場するロボットの名称
荒牧
僕は表現よりもフローの大発明をしたい。日本のアニメはコンテがないと何も始まらないけど、そのフローを変えられたらおもしろいなと思っています。先に演技とアクションがあって、それに対してカメラが動いていくみたいな。
実写的だけど違う自由度につながる更におもしろいものがデジタルを使って作れそうな気がしています。それを作り続けると新しい才能が出たりするんじゃないかと思っているんですよね。
水島
3Dのアニメーターが演出的なノウハウを持っていて、一人一人がそれを元に新しい映像を作り始めると一番いい。それは本当にそう思います。
荒牧
言い方は違うかも知れませんけど、3Dにおける金田伊功みたいな人が出てくるべきなんですよ。
*金田伊功 アニメーター。エフェクトやアクション表現の先駆者。
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