脚本を初めて読んだ時の感想は?
―高橋渉監督(以下、高橋)
荒馬のような印象をうけました、速く、力強くて、言うこと聞いてくれない(笑)
絵コンテの最中は何度振り落とされたことか。でも障害をものともせず突き進んで行く物語進行ははじめての快感でした。中島かずき脚本。これはクセになります。
とはいえ父親をテーマにしたことに加え、「父ゆれ同盟」で世界を広げ。頑固おやじ側の父親像としんちゃん側の父親像の対比で繊細な深みも生み出す。
もう「さすが」の一言に尽きます。
―AA
あがってきた脚本に対して、高橋監督から何か追加したものはありますか?
―高橋
これは今作に限らず「クレヨンしんちゃん」全体にいえることですが、制作過程でスタッフから出てきたアイデアはどんどん取り入れていきます。ギャグ一つとっても、脚本にあるものはもちろん入れますし、声優さんのアドリブも入れたり、作打ち(作画打ち合わせ)で「これ入れたら面白いかも?」とアイデアが出たら入れたり、みんなでお客さんを楽しませようという気持ちがあるからですかね。コントロールされた、全部計算尽くめの作品では無いんです。
無軌道なようですが、今作は中島さんに太い筋道のついた脚本をいただきましたので遊べるところは思いきり遊ばせていただきました。
―AA
映画でみせて笑わせるほどのおやじギャグはそう思い通りに浮かぶものではないですよね。
―高橋
そうなんです。思いついてスタッフに「このギャグどう?」「う~ん…つまんない」と返されるとうんうん言いながら3日くらい考えた挙げ句、トイレでアイデアが浮かんだり。コントロールされていないというのは、だいたいそういう意味でもあります。
―AA
「父親像」と聞いて高橋監督がイメージするものは何でしょうか。
―高橋
僕の父は寡黙で、厳しい人でした。作中の頑固おやじほどではありませんが…。ガーッと怒鳴ることもあれば、お酒を飲んでぐでんぐでんになって潰れていることもありました。強いところも弱いところもある人間味あふれる人でした。実際にギックリ腰になっていましたし、子どもの頃には腕相撲をしてくれました。父はわりと早くに亡くなったので、結局勝てずじまいでしたけどね。
後編に続く


