藤津亮太の恋するアニメ 第19回 万葉の引用(前編) 「言の葉の庭」
藤津亮太の恋するアニメ第19回は、新海誠監督の『言の葉の庭』が話題に。雪野さんのリアリティについてNとSが語る。
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藤津亮太の恋するアニメ
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僕は思わず笑い出しかけたが、Nににらまれたのであわてて言った。
「いやでも、万葉集を突然引用するなんて『イノセンス』のキャラクターみたいだよね」
「『イノセンス』ってそういう話だった?」
「うん。『イノセンス』の世界って全員電脳化されていて、検索をがんがんかけながら有名なフレーズをちりばめて会話するキャラクターばっかり出てくるの。まあ、電脳化されているから、意味ありげなフレーズをいわれても、その場で検索してすぐにネタもとがわかっちゃうだろうけどね(笑)。でもさ……」
と僕は付け加えた。
「でもさ、百香里には百香里なりの、思わせぶりなセリフを言う理由があったんじゃないかな。それは単なるイタさとはちょっと違う気がすると思うんだよね」
「どういうこと」
「百香里って、かなり不器用なキャラクターでしょう? 助けを求める声の出し方が下手なんじゃないかな」
「声の出し方が下手?」
「そう。ほら、女子と会話をするのが苦手な男子って、話のきっかけを作るときに考えまくって、ついヘンな話をしちゃうことがあるじゃない。ああいう感じ」
Nは、わかったようなわからない顔をしている。
「つまり、本当は誰かに助けを求めたいんだけれど、それが下手なので、ああいうねじくれた表現になっちゃったんじゃないかなぁと思うんだ」
「どうなのかなぁ。じゃあ、Sはどういうふうに百香里を考えたの」
珍しくNが正面から僕の意見を聞いてきたので、僕は答えることにした。
(続く)
《animeanime》
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