『スノーピアサー』 ポン・ジュノ監督インタビュー “子どもの頃はよく洋服ダンスや押し入れの中にいました” | アニメ!アニメ!

『スノーピアサー』 ポン・ジュノ監督インタビュー “子どもの頃はよく洋服ダンスや押し入れの中にいました”

2月7日、映画『スノーピアサー』が全国公開となる。フランスのバンドデシネをもとに『グエムル-漢江の怪物-』などで知られるポン・ジュノ監督が圧倒的な映像を実現した。本作をポン・ジュノ監督に語っていただいた。

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ポン・ジュノ監督
ポン・ジュノ監督 全 4 枚 拡大写真
全世界が注目する韓国の鬼才、ポン・ジュノ監督。2006年公開の映画『グエムル-漢江の怪物-』において韓国の歴代観客層動員数を大きく塗り替え、また『殺人の追憶』(2003年)や『母なる証明』(2009年)では緻密でダイナミックなシナリオから導かれる圧倒的なドラマ展開を見せ、その手腕は世界各国で評価された。彼の最新作『スノーピアサー』が2014年2月7日(金)、いよいよ日本で公開となる。

この度アニメ!アニメ!ではポン・ジュノ監督に単独インタビューを敢行した。今回の緻密なシナリオを書き上げる際に意識しているポイントなど、限られた時間の中でじっくりお話をうかがった。
過密スケジュールの中、いくつものインタビューを受けた後の時間だったが、疲れた様子も見せず穏やかに丁寧に受け答えをする監督の姿が実に印象的だった。
[取材/構成 細川洋平]

『スノーピアサー』
2014年2月7日(金)、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
/http://www.snowpiercer.jp/

― アニメ!アニメ!(以下、AA)
原作はB.D.(フランスコミック)とのことですが。

― ポン・ジュノ監督(以下、ポン)
そうです。80年代のB.D.『LE TRANSPERCENEIGE』という作品の版権を買ってこの映画を作りました。「氷河期が訪れ、生き残った人類は走る列車に乗っている」という基本設定が非常に独特でした。
その設定はこの映画にも生きていますが、それ以降描かれた設定・キャラクター・ストーリーは新しく私が加えていったものです。1年間かけてシナリオを書き、新たに人物関係図やストーリーを作っていきました。
ですが元の核となる部分「氷河期」「人類の生き残り」「走る列車」「永遠のエンジン」「後方車両から前方へ進んでいく」という設定は原作から来ています。

― AA
ポン監督は『殺人の追憶』での側溝や洞窟、『グエムル』での地下水路など狭い空間というものを印象的に描いています。今回はその狭い空間=列車がほぼ全編に渡ります。撮影に当たってはかなり苦労されたのではないでしょうか。

― ポン
それは苦労した点でもあり、同時に楽しく、興奮した点でもありました。狭い空間では普通、息苦しさを感じると思いますが、人には2通りあるそうなんです。密室で恐怖を感じるタイプと、広い空間で恐怖を感じるタイプ。私はだだっ広い空間にいると恐怖を感じる方で元々狭い空間が好きでした。子どもの頃はよく洋服ダンスや押し入れの中にいました。
列車の中で2時間狭い空間を撮り続けられるわけですから、私にとっては人生でまたとないチャンスだと興奮しました(笑)。

― ポン
ただ、私がよくても、観客が退屈したら困るわけです。どうしたら観客を退屈させずに狭い空間を作っていくことができるのかは悩んだ部分でもありました。
列車は車両ごとに分かれていて、風景が変わっていくわけですよね。ですから車両が変わる度に新しい世界、新しい光景が開けているというプロダクションデザインにこだわり、工夫しながら作っていきました。
そしてもうひとつはカメラの動きです。列車自体が動くだけでなく、カメラも多様に動いていく。狭い列車の中でいかにダイナミックにカメラを動かすか、撮影監督とも十分話し合って作っていきました。

また列車はひとつですけれどもいろんな人物が登場します。ポスターをご覧いただければわかるように、メインのキャラクターはかなりの数になります。
俳優の顔というのはそれそのものがスペクタクルなものです。その多彩なキャラクターでこの狭い空間を突破していこう、そして観客を退屈させないようにしようという思いがありました。

fd


― AA
今作にはまさに多彩なキャラクターが登場します。それではキャスティングに関してうかがいたいと思います。今回はポン監督の常連であるソン・ガンホだけではなく、実に豪華でさまざまな国籍の俳優が揃っています。何か特別にキャスティングに関して気を遣われた部分はあったのでしょうか。

― ポン
いえ、いろんな国の俳優さんたちがキャスティングされたからと言って、特別変わった方法があったわけではありません。基本的な方法に沿って、まずシナリオを送りオファーをする。
先方(俳優サイド)では監督はどういう人なのか、また制作にはどういうスタッフが揃っているのか、監督の前作はどういうものなのか見て検討する、という基本的な過程に添ってキャスティングは行われました。

ただ今回は、ジョン・ハート(ギリアム役)とティルダ・スウィントン(メイソン役)がこの作品を作る上での出発点になりました。二人は『グエムル』と『母なる証明』がとても好きだとおっしゃってくださっていたんです。私も以前からこの二人をとても尊敬していて、お互いが好感を持った状態で話をすることができました。シナリオを渡しギャランティーの交渉などといった正式なオファーをする前に、お二人とは個別にお会いしています。お互いがお互いのファンとして会い、そして「一緒に作品をやりましょう」と意気投合したところから始まっています。
このお二人によって本当にいいスタートを切ることができました。というのもティルダ・スウィントンとジョン・ハートは多くの俳優から尊敬されている存在なんですね。二人がこのプロジェクトに参加してくれたことによって、以降のキャスティングがとてもスムーズになりました。

― ポン
最後に決まったのがエド・ハリス(ウィルフォード役)でした。非常に重要な役どころです。映画の終盤にしか登場しませんが、映画の中ではみんながずっと彼の話をしているわけです。「エンジンを作ったウィルフォード/ウィルフォードはいったい誰なのか」と。
そして最後にとうとう登場する、それはまるで『地獄の黙示録』のマーロン・ブランドのような存在です。そういった意味で、演技以前に俳優として存在感を放つことができる俳優さんが必要でした。どんな俳優さんがいいのか、様々に考えた結果、エド・ハリスに決まりました。
彼はまさに「生きたエンジン」を表す人物でもありましたし、映画のハイライトを飾るにふさわしい存在感を持った俳優でもありました。彼の出演決定は実に幸運でした。

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