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これからの「絵の具」―ニッカー絵具 数井浩子のアニメ社会科見学 第8回

アニメーター・演出の数井浩子さんが、アニメ制作になじみ深い道具アレコレの秘密を探る連載。今回はニッカー絵具の最終回。

連載 数井浩子のアニメ社会科見学
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■ これからの「絵の具」―絵の具アート

今年、ニッカー絵具は新しい「絵の具」を開発している。ひとつは、「マーブリング・デコ」という日本の墨流しに似た模様を転写する絵の具キット。もうひとつは、3D絵の具だ。

「マーブリング・デコ」は、ニッカーのアクリル絵の具と専用水溶液を使って、西洋では包装紙や便箋などに使われてきたマーブリング模様を手軽につくれるキットである。アクリル絵の具を使うので、発色が鮮明で紙以外にもあらゆる素材に転写できるのが特徴だ。なんと、ニッカー絵の具のディスプレイ・ケースには、マーブル模様のガンプラが置いてあった。

「絵筆をつかわなくても、“絵の具”でアートが出来ないだろうかと考えたんです」

今、小中学校では美術の時間が減ってきているため、専門学校に入ってから、美術の基礎を習う生徒もいるらしい。絵具に十分になじまないうちに大人になってしまう人もいる。いまや、絵の具や画用紙は「身近な遊び道具」ではないのだ。むしろパソコンや携帯ゲームで写真を撮ったり、撮った画像を加工したり、お絵かきソフトで色を塗るほうが身近な「遊び道具」なのだ。

「それでも、“絵の具”でなにかアートが出来ないだろうかと考えたんです」

マーブリングや3D絵の具は、絵を描くというよりは、色を使って「表現する楽しさ」が体験できるツールである。

近年、北米を中心にメーカーズ・ムーブメントが盛んになっている。また、美術教育分野でも、手で触って作ってみるハンズ・オンの創造性ワークショップが活発だ。3Dプリンターが普及すれば、もっと日常生活の延長として気軽にモノをつくる機会が増えるだろう。

ニッカー絵具は絵の具製造会社である。「絵の具」の心と技と身体を考えている会社である。絵の具をつかう人の指の先まで気にかけ、「いつでも同じ色」をつくる技を磨く。そして、これからも、モノをつくる楽しさや表現する気持ちよさを体験できる絵の具をつくり続けるのだろう。

■ 数井浩子 (かずい・ひろこ)
アニメーター・演出。
/http://www.kazuihiroko.jp/  (数井浩子 公式サイト)
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