「寫眞館」と「陽なたのアオシグレ」、心に響く短編アニメーション2本立て
2011年に設立したスタジオコロリドによるオリジナル短編アニメ映画 『寫眞館』と『陽なたのアオシグレ』。10月の限定公開、予告編のネット配信などで注目を浴び、11月9日に公開が決まった
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■ 予告編のネット配信で注目度アップ、“口コミ”で広がる
新しいアニメーション制作を目指し2011年に設立したスタジオコロリドによるオリジナル短編アニメ映画 『寫眞館』と『陽なたのアオシグレ』。10月の限定公開、予告編のネット配信などで注目を浴び、この11月9日に公開が決まったのだが、これはある意味“口コミ”。つまり、“口コミ”で「気になる作品」として広まった訳である。
『寫眞館』は『AKIRA』の作画監督や『パルムの樹』、『ファンタスティックチルドレン』のなかむらたかしが監督、脚本、原画を手掛けている。また美術監督は木村真二、その他『スチームボーイ』のメインスタッフが参加している。
『陽なたのアオシグレ』は短編アニメーション『フミコの告白』がYouTubeで260万回以上再生された若手アニメーション作家の石田祐康。この『フミコの告白』は京都精華大学在学中に仲間5人で製作したそう。このクオリティの高さが話題を呼び、2010年のオタワ国際アニメーションフェスティバル特別賞やYouTube Video Awards Japan 2009 アニメ部門受賞等の賞を受け、その次に製作した『rain town』でも『フミコの告白』に続いて2年連続で文化庁メディア芸術祭で受賞、この作品が劇場公開デビュー作となる。今、最も注目すべき若手作家と言えよう。
また、ヒナタ役に今作で本格的な声優デビューの新人・伊波杏樹、シグレ役は『バクマン。』、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで人気の早見沙織が参加、劇中歌はスピッツの『不思議』、万を持しての布陣である。
■ スケッチのように静かに時が流れる 『寫眞館』と
ノスタルジックでファンタスティックな『陽なたのアオシグレ』
『寫眞館』の時代設定は明治~昭和であろうか、東京と思われる街が舞台である。一組の夫婦が写真館を訪れる。写真館の主人は女性の笑顔を撮りたいと思うが、彼女は恥ずかしそうにうつむいてしまう。
しかし、どうにか笑顔を写真に納めることが出来た。この夫婦に女の子が生まれ、家族で写真館を訪れるが女の子は決して笑おうとはしなかった・・・。
手描きタッチのアニメーションが物語に温もりを与える。台詞は全くない。音楽が情景と感情を描写する。やがて、地震が起こり、戦争が起こる。節目ごとに写真を撮りに来るシーンの連続が主になっているのだが、それだけで登場人物たちの気持ちや状況を雄弁に物語る。スケッチのように静かに時は流れていく。
ほろりとさせて気持ちが優しくなれるラストシーン、能などにも通じる、余分な演出や描写を削ぎ落したセンスのよい短編アニメーションである。
一転して 『陽なたのアオシグレ』の設定は現代。小学校が物語の舞台である。内気で空想癖(妄想癖?)のある少年・ヒナタは同級生の女の子・シグレに想いをよせていた。が、気の弱いヒナタは想いを伝えられない。
しかし、些細なきっかけで会話するようになるが、そんなささやかな幸せもつかの間、シグレは転校することになる。もう会えないかもしれない・・・悲しみに暮れるヒナタだが、意を決して大胆な行動に出る、想いを伝えるために・・・。
ちょっと切ないことやささやかな幸せな気分は誰しもが味わったことはあるはず。そんなちょっとした感情を上手くすくいとり、ノスタルジックにファンタスティックに表現。後半の疾走はヒナタの感情の高ぶりとシンクロし、観客の心も疾走する。そのスピード感を楽曲が“後押し”する。
ヒナタはどうにか想いを伝えることが出来、そこでジ・エンドと思いきや・・・ラストは誰しもがそんな想いのひとつやふたつある、ある、な情景。気持ちが優しくもなり、ちょっとほろ苦くもあり、甘辛いような甘酸っぱいような、いろんな感情が湧き出てくる。作家の次回作が楽しみである。
『寫眞館』 『陽なたのアオシグレ』
11月9日(土)よりシネ・リーブル池袋ほかにて上映
/http://www.shashinkan-aoshigure.com
《animeanime》
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