ブリッジでは常にハーロック風が吹いています 「キャプテンハーロック」荒牧伸志監督インタビュー 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ブリッジでは常にハーロック風が吹いています 「キャプテンハーロック」荒牧伸志監督インタビュー

映画『キャプテンハーロック』が人気だ。全編をフルCGで往年の人気キャラクターを映像とした大作が、その秘密だ。CGの世界の最先端で挑戦を続けている荒牧伸志監督にお話を伺った。 [インタビュー取材・構成:細川洋平]

インタビュー スタッフ
注目記事
荒牧伸志監督
荒牧伸志監督 全 2 枚 拡大写真

■ 最終的にコンテとは違ってしまう。でもそれがおもしろかった

―― 「不気味の谷」問題というのはずっと言われていますが、個人的には『スターシップトゥルーパーズ・インヴェンション(以下=STi)』の時点で過去のものになったのかな、という印象を抱いていました。

―― 荒牧伸志監督(以下、荒牧) 
ただ、そうは言いつつもやっぱり「CG」と聞いた時点で一生懸命間違い探しのようなことをしてしまったりするんですよ。ぼくも自分の作品でそう言いながらも、人の作品を観る時はイヤな目で観たりするときがどうしてもあるんで(笑)。覚悟しつつやっています。
それでもそこはすごく気をつけています。せっかくストーリー的に感情移入してても、すごいイヤなカットがひとつあるとせっかく築きあげた没入感が一気に消えてしまう。

そこのひとつの答えが、今回とったモーションキャプチャーやフェイスキャプチャーの方法ですね。
ただ今回の場合はものすごくスキルの高い役者、キャラクターにあった役者を探して、演技をまるごとデータに持って来る。最高の演技をそのまま取り込んでしまうというのが、ひとつの答えかなと。今回はそういう方針でやっていました。

―― キャプチャーアクターのクレジットを見てみると、舞台で活躍されている方も多くて。

―― 荒牧
オーディションで200人ぐらいの中から選んだ役者さんはみなさん、演技そのもので感動できるような芝居をされる方ばかりです。
今回キャプチャーの現場はすごい見応えがあった。ただ、そもそもそこで見応えがなければいくらデジタルで細々と修正しても伝わらないと思ったんで、まずそこでの完成度を目指しました。それは正解だったと思います。

―― セリフがない部分の演技もかなり見応えがありました。

―― 荒牧
表情の芝居ですね。後で強調したりといじる部分ももちろんありますけど、目線の微妙なところも含めて基本的には全て芝居そのままを再現しています。間の取り方含めベースになるキャプチャーの芝居は、絵コンテに添ってというのではなく現場でリハーサルを何度も重ねてブラッシュアップしていきました。
現場でやっていくうちコンテからずいぶん変わった部分もたくさんあります。やっていてもおもしろかったですし、ひとつの目標に到達した実感がありました。

―― 以前、実写の監督とお話させていただいた時に、「演技というのは役者本人の方がたくさん考えているものだから、監督が指示を出すなんてほんとはおこがましいって個人的には思ってるんです」というようなことを話されています。

―― 荒牧
そうなんですよね。僕、演出という肩書きもありますけど、どっちかって言うとメカのデザインだったりアクションシーンが得意な人間なので、芝居のシーンというのは特に自分が長けているとは思っていません。そこはもっと得意な人と一緒に考えた方がいいなと前々から思っていて。
それに期待をすると役者たちがもっとがんばってくれるんですよね。彼らの中で「もっとここはこうしたい」というのが出てきて。そういうやりとり含めておもしろいです。計算されているかのように見えても、その場のライブ感みたいなのがほしいなとか、せっかく生身の人間にやってもらってるんだから、ライブ感は入れていきたいなというのは毎回、キャプチャーをやる度に思っています。

■ ハーロックに込めた監督の思い

―― 今回の作品、もちろんテーマやメッセージというものは観客それぞれの中で見つけていくものかと思います。監督の中で芯となった部分というのはどういったところだったんでしょうか。

―― 荒牧
少しネタバレになるかも知れませんが、「ホログラム」って出てくるじゃないですか。奥になにかがあって、それを隠すためのもの、という役割で。
つまりそれは、目を背けてしまっている大切なものと対峙しないことには次のステップには行けないんだということなんです。表立って押し出してはいないんですけど、それが自分的なテーマというか裏テーマで。ハーロックもそうだしヤマもそうだしイソラもそう。それに向かい合わざるを得なくなる時というのは必ず来るんだけど、その時にじゃあどうするか。もちろん闇雲にイヤなことに向き合おうというのとも違うんですが、その辺を考えてもらえたらいいなと。

―― 最後にメッセージをお願いします。

―― 荒牧
自分としてもCGアニメーションと言う枠組みと言う物と戦い続けているような気がしています。その中でこの作品が今、すでにアニメと呼べるのかどうかも、じゃあ何と呼んだらいいのかもちょっと自分ではわからない状態です。それでもこの作り方、ルックにはわたしとしては無限の魅力があるんです。
そのことを伝え、CGという枠を乗り越えた作品にしたいと。逆にいえば、観ている人にはアニメだCGだ、という部分を気にしないで見れる作品にしたかった。
自分としてはその段階を超えられるところまで来た作品だと思います。ぜひ、劇場で確認していただけたらと思います。

fd


『キャプテンハーロック』
配給: 東映
/http://harlock-movie.com/
  1. «
  2. 1
  3. 2

《animeanime》

特集

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]