大友克洋「火要鎮」 文化庁メディア芸術祭大賞に、CGで描く日本の美の世界 | アニメ!アニメ!

大友克洋「火要鎮」 文化庁メディア芸術祭大賞に、CGで描く日本の美の世界

第16回文化庁メディア芸術祭の受賞作品の記者発表会が行われた。このうちアニメーション部門の大賞を大友克洋監督の『火要鎮』が受賞した。

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大友克洋監督の『火要鎮』
大友克洋監督の『火要鎮』 全 7 枚 拡大写真
12月13日、東京・六本木の国立新美術館で第16回文化庁メディア芸術祭の受賞作品の記者発表会が行われた。このうちアニメーション部門の大賞を大友克洋監督の『火要鎮』が受賞した。短編アニメーションとしては、第12回『つみきのいえ』(加藤久仁生監督)以来4年ぶりの受賞となる。
また、優秀賞には劇場長編アニメーションから3作品、短編アニメーションから1作品が選ばれた。長編アニメーションは『アシュラ』(さとう けいいち監督)、『おおかみこどもの雨と雪』(細田守監督)、『グスコーブドリの伝記』(杉井ギサブロー監督)である。短編アニメーションから和田敦監督の『グレートラビット』となった。
新人賞は『布団』(水尻自子監督)、『LUPIN the Third~峰不二子という女~』(山本沙代監督)、『Oh Willy…』(Emma De SWAEF監督/Marc James REELS監督)が選ばれた。アニメーション作家の作品、商業テレビアニメーション、海外作品からそれぞれ1本とバランスが取られたかたちだ。

大友克洋監督の『火要鎮』は、江戸時代の大火事を背景に惹かれあうふたりの男女を軸に描く。作品で見せ場となるのはその圧倒的な映像表現の魅力である。日本画の伝統を思わせる画面に、日本の手描きアニメーションと近年勢いを増すCGアニメーションの技術がなだれ込んでいる。日本が現在、新たに構築し始めている日本ならではのCGアニメーションの方向性を示す最良の作品と言えるだろう。
今回の大賞について、審査委員主査のアニメ評論家・氷川竜介さんは、本作をデジタルで始めて可能となったデリケートな色合いを実現したことなどの映像技術に加えて、短い時間に悲恋ものと大火事というドラマチックなものを重ねたと、その演出も高く評価した。

今回、特徴的なのは、優秀賞に劇場長編映画3本が入っていることだ。2012年は劇場映画が豊作とされていたが、それは量だけでなく、その質でもハイレベルな実績を残したことを感じさせる。
『おおかみこどもの雨と雪』は、『時をかける少女』、『サマ-ウォーズ』で過去のメディア芸術祭でも高い評価を受けた細田守監督の最新作。今回も引き続き、その実力が認められた。同時に商業的にも大成功したことも、特筆すべき作品だろう。
『グスコーブドリの伝記』は、長年数多くの作品を演出してきた杉井ギサブロー監督が、宮沢賢治の児童小説を映像化した。妥協を許さない演出が印象的な作品である。
『アシュラ』のストーリーも妥協ないものである。秋山ジョージさんの原作が発表された当初、問題作とされた。それを現代ならではの技術でアニメーション映画とした。『火要鎮』と同様、日本独特の画風をCGアニメーションで実現した。

氷川竜介さんは、今回の選考にあたって、メディア芸術としてのアイデンティティ、アニメーションとしての独自の表現を重視したという。先端性を持ったもの、未来を開拓していくものを取り上げた。また、受賞作には先端性と根源性を持つ作品が並んだ。
また、功労賞にメカニックデザイナーの大河原邦男さんが選ばれた。ガンダムのメカニックデザイナーとしてだけでも表彰に値するが、受賞理由には、メカニックデザイナーの職業を成立させた功績や、そのデザインを通じて文化だけでなく、産業面でも大きな影響を与えたことなどが挙げられた。

文化庁メディア芸術祭
公式ウェブサイト /http://j-mediaarts.jp

アニメーション部門

大賞
『火要鎮』 大友克洋

優秀賞
『アシュラ』 ジョージ 秋山/さとう けいいち
『おおかみこどもの雨と雪』 細田守
『グレートラビット』 和田淳
『グスコーブドリの伝記』 杉井ギサブロー

新人賞
『布団』 水尻自子
『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』 モンキー・パンチ/山本沙代
『Oh Willy...』 Emma De SWAEF/Marc James ROELS

《animeanime》

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