話題の舞台「銀河英雄伝説」と「裏切りは僕の名前を知っている」 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第8回
[取材・構成: 高浩美] ■ オリジナルストーリーの作り方「銀英」と「裏僕」■ アニメのタッチは作品イメージの要■ 舞台に蘇るアニメで見た“あの世界”それがツボ
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高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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話題の舞台「銀河英雄伝説」と「裏切りは僕の名前を知っている」
オリジナルストーリーで見えてくる新しい世界
[取材・構成: 高浩美]
■ オリジナルストーリーの作り方「銀英」と「裏僕」
この11月中旬、相次いで人気アニメの舞台が上演。これで6作目の「銀河英雄伝説」、3作目の「裏切りは僕の名前を知っている」である。今回はどちらもオリジナルストーリー、舞台だけのオリジナルキャストも用意されている。
オリジナルのストーリーにする場合、原作を踏襲しつつ、新しい物語を構築するのがオーソドックスな手法。「銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて」は「銀河英雄伝説外伝」がベースになっている。逆亡命者である帝国軍のリューネブルグ、同盟軍から見ると“逆賊”に当たり、シェーンコップにとってはかつての上司であった。
外伝はこの2人の確執やラインハルト、キルヒアイス、彼らを取り巻く人々の野望や思惑が描かれている。舞台版ではリューネブルグの部下ダーフィット・フォン・ロイスというオリジナルキャラクターが登場する。リューネブルグは帝国軍准将という地位にあり、当然部下はいるはず。ロイスという部下がいても物語の構造上、違和感はない。たとえ、上司に反感を憶えたとしても専制君主国の帝国軍の軍人、上司には逆らえない、その葛藤を描いても物語の構造は基本的には変わらない。
一方、「裏切りは僕の名前を知っている」は原作者みずからが完全監修したオリジナルストーリー。オリジナルキャラクターはヴァンパイヤである緋室芳夜、新しい物語なので、すでに発表されている物語と異なることは容易に想像出来る。このヴァンパイヤが既存の登場人物、夕月やルカ達などお馴染みのキャラクターにどう絡んでいくのか、“新しい裏僕”と言ってもいいだろう。
■ アニメのタッチは作品イメージの要
「銀河英雄伝説」、アニメでの見せ所は宇宙戦争や斧を振り回す戦いの場面。特に1対1での決闘シーンや戦闘機での撃墜シーンはアニメでは“ハイライト”になっている。「銀河英雄伝説外伝」でのリューネブルグとシェーンコップの一騎打ちは迫力満点、ポプランらの戦闘機シーン(舞台版の「銀河英雄伝説 撃墜王」ではクレーンを使ってみせていた)ではクラシック音楽風の楽曲と効果音で独特の雰囲気を創りあげていた。
「裏切りは僕の名前を知っている」はやはり悪魔との対決シーンだろう。ヴィジュアル的に工夫を凝らしているだけではない。単純な「勧善懲悪」ではない、どこかもの悲しさもある設定が見る者の心をとらえる。物語の序盤では友人に悪魔が棲みつき、対峙するシーンで主人公・夕月は苦悩する。友情と絆、この作品の大きなテーマでもあるが、それを耽美的なシーンや楽曲で盛り上げる。
「銀河英雄伝説」と「裏切りは僕の名前を知っている」どちらも普遍的なテーマを扱っているが、アニメのタッチや見せ方、楽曲の使い方等で雰囲気は大きく異なってくる。それがアニメの魅力であるが、それをどう舞台に“再現”するかがクリエイターの手腕の見せ所である。
■ 舞台に蘇るアニメで見た“あの世界”それがツボ
「銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて」オープニングは映像を使った宇宙シーン。ラインハルトの忠実な部下キルヒアイス、リューネブルグを尊敬する部下ロイス、この2人の対比が物語のアクセントになっている。
ラインハルトには「銀河を手に入れる」という明快な目標がある。一方のリューネブルグの目標は見えにくい。それ故、ロイスは苦悩し、意を決してリューネブルグに問いかける・・・。もちろん、アニメの名場面をきっちり押さえているところは“萌えポイント”。シェーンコップとリューネブルグの一騎打ち、真っ向からぶつかっていく様はアニメ同様、迫力のあるシーンに仕上がっている。また、オリジナルシーン、キルヒアイスとロイスの対話は哲学的でもあり、普遍的でもあり、見せどころとなっている。
いつものことながら三枝成彰の楽曲が実に多彩で、交響曲風あり、ワルツあり、タンゴありと聞いていて飽きない。キルヒアイス役の横尾渉、ロイス役の二階堂高嗣はよく健闘しており、その他リューネブルグ(中原裕也)、シェーンコップ(岩永洋昭)始め、俳優陣の“成り切りぶり”は必見。
一方の「裏切りは僕の名前を知っている」はこれで3度目の舞台化、サブタイトルは[深紅にとけゆく想いの果てに]。物語は祇王一族が守っている神社がある町で「神隠し」事件が続いているという報告を受けて夕月達は調査に赴く・・・。
メインキャストは初演から演じているので、ほとんどの俳優が「もう○○にしか見えない」くらいはまっていて気持ちいい。その中で初参加、オリジナルキャラクター緋室芳夜を演じる法月庸平は上手く“裏僕ワールド”に溶けこんでいた。また、こういった世界観のアニメを生身の人間が表現する場合、ともすると“生々しい”感じになり、ファンから“イメージと違う”とブーイングが来ることがあるが、この作品は照明や音楽、俳優陣の“成り切り”でアニメのテイストを損なわず、納得のいく仕上がりになっていた。
また、舞台上で時折登場する“音楽陣”が雰囲気を盛り上げる。とりわけヴォーカルが登場し、歌う場面は「音楽劇」のようなニュアンスで、これが“裏僕ワールド”に輪郭と色彩を添えていた。
アニメの作画はどちらかというと“真逆”な2作品。生身の人間が演じているのは共通だが、全く異なる作品に仕上げているのは、俳優陣始めクリエイターのなせる技、さらなる進化に期待したい。
「銀河英雄伝説 輝く星 闇を裂いて」
2012年 11月15日〜11月18日(公演終了)
2013年春 「銀河英雄伝説 第3章 内乱」 青山劇場にて上演決定
/http://www.gineiden.jp/
「銀河英雄伝説 第1章 銀河帝国編」〜「銀河英雄伝説 撃墜王」
DVD発売中
/http://www.gineiden.jp/goods.html
「裏切りは僕の名前を知っている」Vol 3[深紅にとけゆく想いの果てに]
2012年11月18日〜11月25日
シアター1010
/http://www.uraboku-stage.jp/
「裏切りは僕の名前を知っている」Vol 1〜Vol 2 DVD発売中
/http://www.uraboku-stage.jp/goods.html
《animeanime》
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