
トークショーは高倍率の事前抽選に当選した人々が集まった。前日に開催されたサイン会と同様にほぼ女性ではあるものの、改めて国民的人気を誇る漫画家であることが幅広い年齢層から見て取れた。
当日は萩尾氏のほか、RKB毎日放送の山田尚氏(メディア事業局次長兼事業部長)と女子美術大学の内山博子氏(芸術学部メディアアート学科客員教授)が登壇した。
萩尾氏は原画展の開催について「2、3年ぐらい前に話があった時に『まず最初に福岡で1回開きませんか?』とありました。だからその時に1回開いて終わる予定だったんですけど、諸事情で紆余曲折しまして福岡が最後になってしまいました。もともと福岡で開きたかったので、やっと開くことが出来て良かったと思います」と挨拶した。
萩尾氏は福岡県大牟田市の出身であるが、本名である「望都」の命名も、高杉晋作などの勤王の志士を匿った女流歌人の野村望東尼に由来している。なお、野村望東尼の山荘は福岡市中央区平尾の史跡となっている。
トークショーは、衣装のディテールやキャラクター設定についてなど、会場で販売されている図録を交えつつ進行した。性格の話へと移った際には、自身を「素直だけど頑固」と分析した。
一方、漫画家の熾烈な競争への僻みや妬みもよく見られることに対して「疲れますよねそういう感情」と返しながらも、「ライバル心に関心があって、知り合いの男性を観察して漫画を1本描いた。それが『ローマへの道』」と明かした。
漫画家を目指す若い人に対しては「若い頃は尖っていたが、モスクワで事故にあって頭蓋骨骨折で半年仕事を休んでいたら『死ぬのは一瞬なんだ』と思えて明るくなった」、「若いうちはがむしゃらでも尖ってても若さの特権だから構わないと思うけど、40歳、50歳過ぎても尖ってたらみんなが迷惑する」と性
格の話と絡めて語った。

漫画家生活については「唯一連載を伸ばせと言われたのは『トーマの心臓』」、「相性の合う編集さんがいたら絶対に離さない」といったその時々の話から、アシスタントが結婚退職してたのが共働きになるなどといった女性のジェンダー的変遷にまで及んだ。このほか中学1年の時の文集の紹介や飼っている猫の話など、始終和やかであった。
萩尾望都原画展は2009年末の池袋から巡回を開始し、この福岡で最後となる。会期は3月13日まで。
【真狩祐志】
萩尾望都原画展
/http://www.rkb.ne.jp/hagio/
/http://www.hagiomoto-gengaten.com/
当サイトの関連記事
/萩尾望都原画展開幕 出身の福岡でラストを飾る