ディズニーは前回も『グラゴーズ・ゲスト』の上映とセミナーを広島で行っている。今作『Tick Tock Tale』も前作同様に3DCG作品だ。また、アジアプレミア(初上映)も兼ねていた。
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ディーン・ウェリンズ監督は本作『Tick Tock Tale』について、時計を題材にして制作するアイデアは4年ほど前からあったという。しかし、それまで時計に関する知識が全くなかったため、専門家から時計の中の仕組みなど色々な話を聞いて勉強する必要があったそうだ。
舞台がロンドンであるのは、街がビンテージ感に溢れで非常に古い上に、時計屋が100年以上の老舗であるという雰囲気も出したかったからだと述べた。またロンドンの象徴であるビッグベンで始めたかったというのも理由としてあった。
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メイキングについては、時計の木やガラスの部分は素材のまま硬いものとして残し、金属の部分を柔らかく曲げるようにして動きをつけていることなどを語った。顔の表情や声で感情を表すことが出来ないため、全て時計本体の動きで代替させねばならないのが大変だったそうだ。
その上、時計のキャラクターは話さないので、音楽によって観客に今どういう状況なのかを理解してもらうようにしないとならない点もつけ加えた。
続いて「ピクサー最新短編作品『Day & Night』上映とセミナー」が開催された。ピクサーは前回も『プレスト』の上映とセミナーを広島で行っている。『プレスト』は『ウォーリー』と同時上映されていたが、今作の『Day & Night』も、現在公開中の『トイ・ストーリー3』と同時上映されている。
『Day & Night』は3DCGで制作した背景を、マスク抜きした2Dのキャラクターと共に表現しているユニークな作品だ。監督のテディ・ニュートン氏は、ローマを訪れた際に鍵穴からバチカン宮殿を見たことに制作のヒントを得たそうだ。
監督のテディ・ニュートン氏は3D(立体視)上映を前提に、偏光グラスで見てもらおうと思ったという。そのために体の中も映像、体の外も映像だからその2つを合わせる効果を出さねばならないところに気
を遣っている。また、沢山アイデアが浮かんでくる時は、全てを詰め込みたいと思ってしまいがちだが、映画の本質以外を排除することを留意点として挙げた。
実際に制作してみて、演出上、体の中と外の両方が動いているため、どちらに焦点を当てたらいいのかが非常に難しかったと述べた。
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広島国際アニメーションフェスティバルにおける3DCG作品の上映を意外に思う人もまだまだ多いようだが、同時系列的に時代を重ねてきている。1987年の第2回では既に「コンピュータ・グラフィックス
による光や影のシミュレーション」、「アニメーションの制作『アイデアから実現まで』」、「プロダクションでの制作現場から」と題されたCGアニメーションに関する特別プログラムも組まれていた。
またコンペティションにもピクサーの短編第1作『ルクソーJr.』がノミネートされ、上映時間が5分以内の作品を対象としたカテゴリーEで受賞している。
【真狩祐志】
広島国際アニメーションフェスティバル /http://hiroanim.org/