サンフランシスコで日本の最新カルチャー発信 NEW PEOPLEとは?
「NEW PEOPLE」は、そうした状況を打ち破ろうとして生まれた建物だ。サンフランスコのジャパンタウンの真ん中に、3階建て地下1階2000㎡弱の現代スタイルのおしゃれな建物は、2009年夏にオープンした。全フロアーが日本のポップカルチャーをテーマにした
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しかし、実際にそうしたカルチャーは、これまではインターネットや雑誌、あるいはイベント、展覧会などの草の根レベルで広がって来た。また、こうした情報は断片的、多くはテンポラリーなもので、日本のポップカルチャーを常設施設でまとめて紹介することはなかった。
この夏、サンフランシスコに訪れた際に私が立ち寄った「NEW PEOPLE」は、そうした状況を打ち破ろうとして生まれた建物だ。NEW PEOPLEのアイディアは、日本マンガ・アニメの北米出版を手掛けるVIZメディアの初代社長、そして現在はVIZピクチャーズCEOとして日本映画事業を手掛ける堀淵清治氏のアイディアから生まれた。
サンフランスコのジャパンタウンの真ん中に、3階建て地下1階2000㎡弱の現代スタイルのおしゃれな建物は、2009年夏にオープンした。全フロアーが日本のポップカルチャーをテーマにした商業施設というユニークなものだ。
北米で「VIZ」の名前は、マンガ出版やアニメ事業と結びつくことが多い。しかし、NEW PEOPLEでは「VIZ」の名前は表に出ることがなく、施設内でのマンガ、アニメの扱いもさほど大きいものでもない。むしろNEW PEOPLEのコンセプトは、アニメやマンガに偏りがちになる日本のポップカルチャーをもっと広い視点から紹介しようというものに違いない。野心的なプロジェクトである。
建物は地下1階が映画館、1階が飲食スペース、2階が雑貨ショップ、3階がファッションショップ、4階がギャラリーとなっている。それぞれのフロアーに異なるテーマが持たされている。訪れた時間が遅かったため3階、4階は閉まっており見ることは出来なかったが、それでもNEW PEPOLEのコンセプトはその空間から窺えた。
NEW PEPOLEは日本のポップカルチャーの紹介ではあるが、一般的なポップカルチャーというよりもどちらかというとハイファッションなものを目指しているようだ。例えば2階の雑貨ショップでは、村上隆や奈良美智ら、そして草間彌生や荒川修作など現代美術の作家の書籍や関連商品が目立つ。店内のグッズはデザイン性の高いもの、オーガニックの雑貨、カウンターカルチャー的なものが多い。まるで日本の青山や代官山にあるデザイン雑貨のお店が抜けて出してきたかのようだ。ギャラリーの常設や映画館のマニアックな作品ラインナップからもハイファッションという言葉が浮かんだ。
そのようなわけでNEW PEPOLEは、僕が当初予想していたポップカルチャーのセンター:マンガ、アニメ、J-POP音楽の殿堂というイメージとはやや異なった。それでも日本のオシャレなカルチャーをそのまま届ける空間としては完璧だ。それは文字どおり「クール」の言葉に相応しいだろう。
一方で、その今後の展開にはやや懸念も感じた。ジャパンタウンという場所とはいえ、観光地でもなく、ファッションや流行の最先端でもない場所に位置するNEW PEOPLEが、周辺地域からやや浮いた存在に見えるのも事実だからだ。
高い理念と日本の文化に対する情報発信という重要な役割を果たしているとはいえ、どれだけの人が興味を持ち、実際にNEW PEOPLEまで足を運んでくれるのか気になった。アニメやマンガ以外の日本のポップカルチャーの誘引力がどれだけ発揮されるかが、今後の鍵になるのかもしれない。
[数土直志]
NEW PEOPLE /http://www.newpeopleworld.com/
《animeanime》