
しかし、この劇場再編集版は、それがまとめられた1989年には結局は正式な劇場公開に至らなかった。このためこれまで幻の名作ともされて来た。その映画が20年あまりの時を経て、「ジブリ美術館ライブラリー」の作品として蘇った。2010年の夏休みに是非楽しみたい映画の一本だ。
この映画の公開を記念した特別試写会が、7月12日に東京・港区のカナダ大使館で行われた。カナダは『赤毛のアン』の原作者モンゴメリの故郷で、作品の舞台である。また、それだけでなくアニメーションやゲームといったコンテンツ関連の産業育成にも熱心なことで知られる。特別試写会の場所としてこれほど相応しい場所はないだろう。
特別試写会では高畑監督が登壇し、アニメの制作秘話や自身のカナダとの関わりを語った。NFB(国立映画制作庁)と巨匠ノーマン・マクラレンの影響や、アカデミー賞作家フレデリック・バックとの交流などから、カナダ・アニメーションの豊かさを紹介した。
しかし、そんな高畑勲監督も実際に『赤毛のアン』の企画が挙がった時には、あんな作品をどうやってアニメにするのかと思ったという。それまで自身が作っていた『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』は子ども達の話であるのに対して、『赤毛のアン』は思春期の話、そしてセリフがとても多い作品だからだ。
高畑監督によれば、海外を舞台にしたアニメを日本語で演じるのはとても難しいのだという。物語としてはカナダ人の様に表情豊かで饒舌でなければいけないが、それを日本語でしゃべっておかしくない様に演出するのが大変なのだ。
話はさらに番組制作のために行ったロケハンの思い出や、原作についてなど様々なところに飛ぶ。高畑監督とって『赤毛のアン』が、語り尽くすことの出来ない大きな作品であることを感じさせるものだ。

会場には、テレビシリーズ制作当初の関係者も多数訪れ、感慨深いものだった。なかでもアンを演じた山田栄子さんが姿を見せていたのはうれしいサプライズだ。
主要スタッフのうち作画監督の近藤喜文さん、美術監督井岡雅宏さんは、残念ながら故人となっている。しかし、今回再び紹介される『赤毛のアン~グリーンゲーブルズへの道~』を観ると、『赤毛のアン』はやはり時代を経ても色あせない歴史に残る作品である、そんなことを感じさせる特別試写会だった。
映画「赤毛のアン~グリーンゲーブルズへの道~」公式サイト
/http://www.ghibli-museum.jp/anne/top.html