作品は1930年代から40年代に、ウォルト・ディズニーに匹敵する人気を得たフライシャー兄弟が創り出した最後の長編作品。70年近くも前に、全編78分が手描きのフルアニメーションで動き回る驚異の映像を実現した。世界のアニメーションを語るうえで外すことの出来ない作品である。
この『バッタ君 町へ行く』の魅力を、アニメ業界を目指す若者と学生を指導する先生たちに紹介するティーチインイベントが、12月10日東京アニメーションカレッジ専門学校で行われた。
まず映画を鑑賞し、その後に映画の魅力を専門家が語るものだ。映画の魅力伝えるために当日は、三鷹の森ジブリ美術館の中島清文館長、杉並アニメーションミュージアムの鈴木伸一館長、そしてスタジオ ジブリの百瀬ヨシユキ監督が教壇に立った。

ティーチインは、まず会場からの感想を聞くことからスタートした。学生たちからの感想は動きに関するものが目立った。虫たちの逃げ回るシーンの動き、モブ(群集)シーンの動きなどである。
百瀬さんはこれについて、主人公だけでなく、周りが常に動いていることの楽しさを指摘する。そのうえで、『崖上のポニョ』で目指したものもこれと同じものだったという。手描きで動いている、いつもどこか動いている、そういった映画なのだ。さらにモブシーンは大変だけれど、アニメーターが遊びを入れることが出来るシーンだと、アニメーター志望者に意外な楽しさを紹介する。
鈴木館長にとっては、フライシャーの魅力はギャグの良さだ。フライシャーはギャグで売っていたこともあり、ギャグがいい、やぼったさがあるところがいいと話す。ディズニーには上品さがあって、そのディズニーには出来ないことをフライシャーはやるのだ。
そして最後に中島館長が、今回のニュープリントを手に入れるための苦労話も披露した。既に著作権フリーになっている作品であることや、フライシャーの倒産後に権利が転々としていたことから交渉が難航した。しかし、三鷹の森美術館ライブラリーの意義を説明することで実現したという。
その甲斐もあり、今回の映画はテクニカラーの美しい映像を見事に再現した。宮崎駿監督は「アニメーターをやるやつは見ておくべき」とこの作品を評している。しかし、『バッタ君 町へ行く』はアニメーターの人達だけのものにしておくには、もったいない歴史に刻まれた作品だ。
『バッタ君 町へ行く』 公式サイト /http://www.ghibli-museum.jp/batta/
12月19日全国順次ロードショー
