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そうしたなか、11月20日に、アニメ音楽の有力レーベルであるフライングドックの佐々木史朗代表取締役社長がシンガポールで、アニメの音楽プロデュースの方法、さらにその経験をグローバルに広げる試みについて語った。
佐々木氏の講演は、アニメーション・アジアコンファレンス(Animation Asia Conference)2009で行った「New Dimensions in Storytelling-Producing successful anime soundtracks」である。
フライングドックは、音楽会社ビクターエンタテインメントのグループ会社だ。長年、アニメから広がる音楽のプロデュースを手掛けている。その中には『カウボーイビバップ』や『AKIRA』、『機動戦士ガンダムSEED』など、音楽面でも注目を浴びた数多くの人気作品が含まれている。アニメ音楽では欠かすことが出来ない存在だ。
佐々木氏は最初に「音楽はアニメの重要なエレメント」と語ったが、特に音楽と作品が強く結びついたフライングドック作品群からは、そうした主張は大きな説得力を持つ。
講演は数ある作品音楽の中でも、特に音楽と作品との結ぶつきの大きい「マクロス」シリーズにフォーカスをあてた。
佐々木氏によれば、「マクロス」シリーズに共通する特徴は、主人公が歌手でその歌によって戦いが終わる。考えてみれば荒唐無稽な物語だが、だからこそ歌にリアリティを持たせる必要があるのだという。
そのために歌手は常にビッグネームでなく、フレッシュなアーティストとし、あたかも番組のキャラクターが歌っているかのように感じさせるという。さらに仮想ブログやCDジャケット、番組の進行とパラレルに展開される現実のライブ活動など様々な面まで考え抜かれていることを紹介する。
こうしたアニメと音楽の連動は、日本で独自に発達したビジネスとも言えるだろう。聴衆であった東南アジアのアニメ関係者にも大きな印象を残したのではないだろうか。
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今後は、アジア地域でもアニメ音楽ビジネスの展開は可能でないかという。特に佐々木氏は、ライブイベントに注目する。ライブはCDよりアピールが大きいからだ。
今回アニメーション・アジアコンファレンスと併せて開催されたアジア・アニメーションフェスティバルの最終日、「マクロス」シリーズを代表するふたりのアーティストによるライブコンサートが開かれた。『マクロスF』シェリル・ノームの楽曲を担当したMay'n、『マクロス7』の熱気バサラの楽曲を担当した福山芳樹である。ライブの会場は現地のファンで満員になっただけでなく、日本のファンと同様の大きな盛り上がりをみせた。音楽は国境を越えると感じさせた瞬間だ。
それと同時に、佐々木氏が語るアジア地域でのアニメ音楽のビジネスの可能性をあることを感じさせるのにも十分だった。佐々木氏の講演は、今後はアジアでもライブツアーが出来ることを望んでいると結ばれた。
アニメーション・アジアニメ・フェスティバル・アジア(Anime Festival Asia:AFA)2009
アジアコンファレンス2009(Animation Asia Conference)2009
/http://www.afa09.com/aac.html
フライングドック /http://www.dogisflying.com/pc/