舞台挨拶は前日に六本木ヒルズでも催されていた。しかし加藤氏はその疲れを見せず、終始なごやかに地元ならではのお国なまりを交えつつ、アカデミー賞受賞式の現地の様子などに触れた。
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初回の挨拶では、小学校時代からの付き合いで、高校時代にバンド仲間でもあった友人から花束が渡された。
そして森博幸鹿児島市長からは、芸術文化栄誉賞が授与された。この賞はアカデミー賞で受賞したことを機に、市が新設したものである。森市長は贈呈にあたり「アカデミー賞の日本人初の受賞は、加藤監督のみならず、鹿児島市民60万人の大変な栄誉と喜びで、感動と夢を与えて頂いた業績である」と祝辞を送った。
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舞台挨拶は各回上映を挟んで計5回行われ、2回目以降は観客からの質問も受けている。どれくらいの期間とスタッフで制作されたのかについて、加藤氏は「企画から1年、実作業が8ヶ月、スタッフは15人」だと答えた。
制作の苦労については、「今までは気の合う仲間2、3人だったので、最初は今回一緒になる人と自分の持つイメージを共有するためにコミュニケーションをとるのが難しかった」と語った。この辺りは、第12回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門受賞者シンポジウムでも述べられている。
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また、高校時代に組んでいたバンドでボーカリストだった友人から、帰国後の記者会見で次回はハードロックな作品にすると話していたように思うと訊かれた。
加藤氏はその際に「『つみきのいえ』と作風が噛み合わないと言われたけど、いつもハードロックばかり聴いてるわけじゃない」とコメントしていた。これを踏まえ、「次は自分のバンド仲間のこともネタにしながらユーモアを交えて笑えるような作品にしたい」と半ば冗談を込めて返した。
各回の終了時に「アニメーションに限らず、実写も含めて短編作品を大きなスクリーンで観る機会はなかなかないんですけど、劇場でこのように上映されることを嬉しく思っています」と加藤氏は締めくくっている。最後の回では幼稚園の先生たちが来場して横断幕を掲げており、そちらからも花束がプレゼントされた。
またロビーではこの日に限り、『つみきのいえ』の原画も展示され、来場者の関心を集めていた。文字通り故郷に錦を飾った加藤氏。今月11日には、文化庁の国際芸術部門における文化庁長官表彰が行われる。
【真狩祐志】
つみきのいえ / http://www.robot.co.jp/tsumiki/
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