ブロードバンド流通ビジネス最新事情:TCM2006報告
10月27日、28日に開催された東京コンテンツマーケット2006(TCM2006)は、新しいクリエーターの発掘育成を目指したイベントである。
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その会期中28日に行われたシンポジウム『ブロードバンド流通ビジネス最新事情』は、現在、エンタテイメントコンテンツの現場で何が起こり、どこに進もうとしているのかがテーマとなった。
3つの異なるコンテンツ企業、フジテレビラボLLC、東映アニメーション、ジークレストから現在のインターネット上のビジネスモデルと将来の方向性が説明された。
フジテレビラボLLCの新しさ
3社のなかで個人クリエーターに最も近いところにあったのは、フジテレビラボLLCのワッチーミ!TVである。
これはYou Tube型の利用者による動画投稿サイトとコミニティサイトを結びつけたものである。クリエーターだけでなく、利用者が全てコンテンツ提供者となるコンセプトを持っている。
しかし、ワッチーミ!TVは、ビジネスの新しさは魅力的だが、現在は収益化の目処はたっていない。当面は広告収入を目指すが、現在、投稿動画の市場を圧倒しているYou Tubeや10数社あるとされるライバル企業との差別化は、まだ十分とはいえない点に不安が残った。
人気コンテンツを最大活用する東映アニメ
これと対照的なのは東映アニメーションである。同社の大山秀徳常務によれば、東映アニメーションは現在9000話を超えるアニメコンテンツを持っているのが強みだという。
さらにこれまでの海外展開で25ヶ国語、延べで40000話分の外国語化が済んでいるという。
東映アニメーションの資産は、プロによる既存の人気コンテンツにあるわけだ。既に人気があるコンテンツだけに収益化は比較的容易である。実際に、この夏から同社が強化しているインターネットのアニメ配信は既に大きな人気を呼んでいるという。
今後は観たい時に観たいところで利用するサービスと、将来的にはPCのほか携帯端末やゲーム機、iTunesなど全てのメディアに対応できることを目指す。
むしろ東映アニメーションの不安要因は、拡大するインターネットのコンテンツ流通のなかで自社の著作権をどれだけ守れるかにかかっていそうだ。
Gクレストの手堅いビジネスモデル
新興企業ではあるが、オンラインゲームのGクレストも手堅いビジネスモデルであった。オンラインゲームの参加料やネット上でゲームアイテムに課金するアバタービジネスは、消費者一人当たりの利用単価も高く優良ビジネスである。
今後の課題は、オンラインゲーム利用者の拡大にあるだろう。会場の聴衆にもオンラインゲームの利用者がほとんどいなかったように、一般層に浸透はまだ十分ではないからである。
各社のビジネスモデルはそれぞれ大きく異なっていた。しかし、共通しているはどのコンテンツ企業にとっても、インターネットがビジネスにおいて益々重要になっていることである。
そして、クリエーターにとっては、こうした現在の状況を理解することで作品制作の展開も変わってくるかもしれない。
ブロードバンド流通ビジネス最新事情
2006年10月28日
講師:時澤正 (フジテレビラボLLC 社長)
大山秀徳 (東映アニメーション 常務取締役)
長沢潔 (ジークレスト 代表取締役社長兼CEO)
モデレーター:
亀田卓(電通エンタテインメント事業局アニメ・キャラクター事業部スーパーバイザー)
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《animeanime》