字幕対吹替え
アニメエキスポでは、100を大きく超えるパネルと呼ばれる講演会形式のイベントが開催される。そうしたパネルの多くが企業のスポンサーのついた新作紹介をメインにしたものである。しかし、フリースポンサーという企業主体でなく有志による企画も少なくなりつつあると
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3日目に開催された『字幕対吹替え(Sub対Dub)』というパネルもそうしたパネルのひとつである。パネラーにはADVフィルムやジェネオン、ファンニメーションといった企業の担当者も登場したが企業色はなく、専ら米国の日本アニメファンにとっての大問題とされる日本アニメを観る際には、字幕が良いのか吹替えが良いのかといった話題を取り扱っていた。
しかし、話の内容はなかなか興味深いことが多かったのだが、期待していた議論という方向からは大きく外れていた。その理由は二つある。1点は、討論というよりもファンが企業担当者に質問しそれに答えるという形になっておりQ&A大会のような感じになってしまっていることである。フリースポンサーということではあったが、年々産業色を強めるAXの傾向がここにも現れており、企業とファンが対等な立場でなくなって来ていることを感じさせた。
もう1点は、話の内容のほとんどが字幕ではなく吹替えについてで、しかも吹替えのありかたに対する不満に終始したためである。これまで米国のコアなアニメファンはアニメのオリジナルな形を尊重するため字幕を好むとされて来たが、日本アニメの視聴の大勢の希望は吹替えに落着きつつあるようだ。これはアニメの視聴者が大衆化してきており、一般の人は映像作品を観る際に字幕を観るという習慣がないことが大きな理由だと考えられる。
しかし、日本アニメのファン達が現在の吹替えに満足かというと、むしろ方向性は全く逆で、かなり不満を持っていることがパネルからは理解出来た。現在の風潮は、吹替えを聞くしかないが、そのあり方に不満のため何とか改善出来ないかといったものである。
こうした不満の中心は、現在の吹替えが効率性やマーケットを意識するあまり、日本のオリジナルの作品から大きく異なっているのでないかという危惧に根ざしている。会場から挙がった意見には「日本オリジナルの名前をしばしば変えるのはなぜか?」「日本に較べて、米国の声優はアニメも知らないし、声優としての訓練も十分でないプロフェッショナルでない人が多い」、「吹替えの際にピッチやイメージが変わっていると」いったものがある。さらに「日本側にスーパーバイズさせてはどうか」、「個別の録音でなく、日本のように声優が一緒に吹替えを行ってはどうか」といった提案などがされた。
こうした意見について、企業側の態度はあまり積極的に変えるというより、様々な問題や理由もあり劇的に変えるのは難しいというものであった。むしろ、現状の中でより良い方向性を目指したいという感じである。いずれにしても、吹替えに不満があるから字幕が良いといった意見はほとんどなく、より良い吹替えをどう目指すかが今後の課題となりそうである。
/アニメエキスポ2005
《animeanime》