アニメは愛人
編集家・竹熊健太郎氏のブログ“たけくまメモ”で伝説の漫画家手塚治虫の知らざるエピソードが大量に紹介されている。
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/手塚伝説(その1)禁断のプライヴェート篇
/手塚伝説(その2)お仕事篇
/手塚伝説(その3)迷走篇
/手塚伝説(その4)アニメ篇
ひとつひとつが興味深いエピソードだがやはり気になるのはアニメ篇である。特に24時間アニメ『マリンエクスプレス』の放映中に、その作品の絵コンテ切っていたというのが都市伝説でなくて実話だったのに正直びっくりした。
しかし、何より興味深かったのは、この記事である。
“虫プロ倒産後も、手塚はマンガで得た収入を惜しげもなくアニメに注ぎ込んだ。理由を聞かれると、「マンガは本妻、アニメは愛人。愛人にはいくら金がかかってもしかたがない」と答えた。”
手塚治虫のアニメに対する姿勢が伝わって来て面白い。つまり、手塚治虫にとってアニメは仕事ではなく趣味であったというわけだ。アニメをビジネスと考えてなかった。
不思議なことにこうした手塚の姿勢が現在のTVアニメビジネスの基礎を築いた。手塚はストーリー漫画の世界に革命を与えたことでよく知られているが、アニメの歴史の中でも非常に重要な革命を起こした。『鉄腕アトム』のテレビ放映開始である。しかし、テレビ放映をしたことより重要なのは、TV[放映のために行った技術の変革とビジネスの変革だ。つまり、技術的部分が「リミテッドアニメの導入」であり、ビジネス的な部分は「作品放映権の制作費割れでのテレビ局への売却」と「商標権ビジネス」の導入である。いずれも、なんとかテレビアニメを作りたかった手塚の苦肉の策だと言われている。この手塚がTVアニメにもたらした功罪は広く語られているのでここでは論議しない。
しかし、この手塚の苦肉の策が、その後広くTVアニメのビジネスに浸透し、いまだ引き継がれている。アニメをビジネスと思わなかった人の考えが、その後のビジネスのスタンダードを生み出したのはなんとも皮肉な話である。
ただ、確かに言えるのはリミテッドアニメが起こした低予算によるアニメの大量生産が、その後の日本アニメの作品の幅を広げ、その生産量を背景に名作と呼ばれる幾つかのアニメが誕生したことだ。
《animeanime》