石橋陽彩&永瀬アンナの声に「もう大丈夫と思えた」 映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』和田純一監督×へちまが語る制作秘話 2ページ目 | アニメ!アニメ!

石橋陽彩&永瀬アンナの声に「もう大丈夫と思えた」 映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』和田純一監督×へちまが語る制作秘話

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』が、2026年10月9日より全国公開される。今回、和田純一監督と、キャラクターデザイン・総作画監督を務めたへちまにインタビュー。映画制作の舞台裏を聞いた。

インタビュー スタッフ
注目記事
映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』場面カット
映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』場面カット 全 35 枚 拡大写真

■“何も語らない時間”も大切に― 風景と音に託したキャラクターの感情

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』場面カット

――本作は大きなアクションで見せる作品とは異なり、視線や表情、仕草、そして何も語らない時間にもキャラクターの感情が表れているように感じました。そうした“静かな芝居”を作るうえで、演出的にこだわったことを教えてください。

和田:テレビアニメと比べると、今回はフレームを少し引いて、キャラクターが全身でそこに立っている姿や、レイアウト、背景まで含めて雰囲気を出したいと思っていました。例えば、顔をアップで映して「怒っている」「笑っている」と表現するのは、本当にそれが必要なシーンやカットまで取っておく。それ以外では、暗い場所に立っているとか、光を受けているとか、そういった周辺の情報からキャラクターの感情や雰囲気を伝えられないかと考えていました。

もうひとつ意識したのが“静かな時間”です。本当はもっと尺が欲しかったんですよ(笑)。編集の段階でも、できるだけセリフのない静かな時間を作れないかと編集さんと試していて、編集さんが作ってくれた間を見て「さらに倍に伸ばしてください」とお願いしたこともありました。そうすると「それをやったら120分を超えますよ」といろいろな方から怒られるんですけど(笑)、できる範囲ギリギリまで、あえて何も語らない“空白の間”を作ろうとしていました。

へちま:私は、和希の表情はかなり気をつけていました。監督のコンテでは、主人公として魅力的に見せるために、あえて表情豊かに描かれていたと思うんです。それは守りつつも、私としては和希にもう少し“抑圧された感情”を足したいとずっと思っていて。そこには、見えない綱引きのようなものを個人的には感じていました。

例えば、コンテに「ニコッ」と書いてあると、そのまま描けばすごく明るい笑顔になる。でも「和希はもう少し複雑な人物なんじゃないか」と思っていたんです。とくに物語の前半はあまりニコニコさせないほうがいいんじゃないかな、と。

和田:微妙に(コンテに描かれたものから)顔の角度なんかも変えていましたよね。

へちま:そうですね。一方で七緒は、和希とは違って目に明るさのある子なので、それが物語の中で徐々に前面に出てくるようなイメージでした。七緒についてはあまり“影”を意識するのではなく、ヒロインとしていかにかわいく見えるか、見ていて素直に「かわいい」と思えるかを重視しています。2人とも同じように影を背負っているように見せてしまうと、全体がすごく重くなってしまうと思ったので。そこは和希と七緒で、意識的に違いをつけていました。

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』場面カット

――キャラクターの感情を直接表情で見せるのではなく、風景や天候、音といった周辺の情報に託して表現した部分もあったのでしょうか?

和田:それは他の作品より多かった気がします。ただ、その分、背景スタッフの負担は半端なかったんじゃないかなと申し訳なく思っています(笑)。先ほどへちまさんがおっしゃったように、物語上どうしても重いシーンが続くところがあります。悩んでいる顔や辛そうな表情をずっと見せ続けることが、心地よい視聴体験につながらないときもある。これは本作に限ったことではないのですが、背景や小物といった周辺の情報に意図を込める演出は、かなり意識していたと思います。

それから、風景だけでなく“音”も積極的に感情表現として取り入れました。実際に島へ取材に行ったときには、波の音や風の音も録っているんです。それが素材として実際にどこまで使われているかまでは確認していないのですが、音響スタッフが効果的にキャラクターの感情を演出してくれたと感じています。

僕自身、演出や絵コンテとして劇場作品に携わった経験はあるのですが、劇場作品を監督するのは今回が初めてです。テレビアニメとはまた違って、映画だからこそ“音の演出”の力も借りたいと思っていたので、そこは意識していましたね。

――風景については、実際に取材で訪れた隠岐の島の景色が、そのまま作品に生かされているところも多いのでしょうか?

和田:すべての場面について美術設定を作るわけにもいかなかったので、取材に行ったときに撮影した写真を参考に、背景美術を描いているカットもあります。なので、非常に遠いですけど(笑)、実際に隠岐の島へ行っていただくと「ここ、映画に出てきた場所だな」とわかるところも多いと思います。

へちま:音響監督も一緒にロケへ行って、現地でいろいろな音をサンプリングしていたんです。そういうことが劇場作品ではよくあるのかわからないのですが、そこで録った音からインスピレーションを受けているところや、実際にそのまま使われているものもあるかもしれないですね。

――2026年という現代が舞台でありながら、どこか懐かしさを感じる風景も印象的でした。そうした“本土とは少し違う空気感”についても、実際に島を訪れた際に感じたものを映像に取り入れているのでしょうか?

和田:そうですね、デザインや色彩を始め多岐にわたりインスピレーションを受けています。例えば本編に、パックのカフェオレ飲料が出てくるんですけど、あれは常温で長期保存できる商品で、隠岐の島の取材時に、個人商店や港の売店など、どこへ行っても置いてあったんですよ。取材中に地面を見ても、空き缶ではなく、その商品のパックが落ちていたりして。

しかも、もともと僕自身が好きな商品だったんです。関東ではあまり見かけない商品なのですが、妻が九州出身なのでよく飲んでいて、通販で買ったり、東京でも見つけたら買ったりして、自宅にも常備していたくらいで。それが島でも皆に飲まれているのを見て、「じゃあ、これをこの物語の高校生たちのアイコンにしてしまおう」と、誰にも相談せず絵コンテに描きました。これもインスピレーションです(笑)。

へちま:あのカフェオレにはそんな裏話があったんですね(笑)!?

和田:この間、イベントで島へ行ったときにも確認したんですけど、やっぱり置いてありました(笑)。


  1. «
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 続きを読む

《米田果織》

特集

この記事の写真

/