「ヤニねこ」のゆるくて妙な世界を作った音。劇伴から劇中歌「ニコチン受容体体操」「僕はダーリン」まで、日本ロック界を半世紀以上走り続ける音楽家・鈴木慶一の仕事 | アニメ!アニメ!

「ヤニねこ」のゆるくて妙な世界を作った音。劇伴から劇中歌「ニコチン受容体体操」「僕はダーリン」まで、日本ロック界を半世紀以上走り続ける音楽家・鈴木慶一の仕事

TVアニメ『ヤニねこ』の劇伴から「ニコチン受容体体操」「僕はダーリン」まで手掛けた鈴木慶一。日本ロック界を半世紀以上走り、映画やゲームでも活躍してきた音楽家の歩みと、本作の可笑しさを引き出す音作りに迫る。

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TVアニメ『ヤニねこ』が、全12話の放送を終えた。7月の放送開始以来、ヤニねこたちのあまりにも自由な日常に、「毎週すごいものを見せられている」と楽しんできた人も多いのではないだろうか。第10話には加護亜依が登場し、第11話ではOPとEDの歌い手が入れ替わった。さらに最終話では、ヤニねこオールスターズが歌うオープニングテーマ「なんもねえ ~住人大合唱 ver.~」が流れるなど、最後まで予想のつかない仕掛けで楽しませてくれた。

ここで、『ヤニねこ』を改めて振り返ってみたい。今回注目したいのは、キャラクターでもストーリーでもなく、作品を彩ってきた「音楽」だ。

『ヤニねこ』の音楽を手掛けているのは、鈴木慶一氏。今作では劇伴はもちろん、第2話で登場した劇中歌「ニコチン受容体体操」の作曲、第6話と第10話で使われた劇中歌「僕はダーリン」の作曲・歌唱など、本編のさまざまなところで音楽を手掛けた。さらに第8話では、なんとアイキャッチの声まで担当している。

◆そもそも鈴木慶一って、どんな音楽家?

では、『ヤニねこ』の音楽を手掛ける鈴木慶一とは、どんな音楽家なのだろうか。

その活動歴は、ここにまとめるのは難しい。本を何冊も出せそうなほどの経歴と実績を持つ、日本の音楽シーンに欠かせない人物だ。ここでは、そのプロフィールを簡単に紹介したい。

1951年、東京生まれ。1960年代から音楽活動を始め、あがた森魚、はっぴいえんどらのサポートや数多くの録音セッションを経験。1970年代には「はちみつぱい」を結成し、日本語によるロックの先駆的な活動を展開する。はちみつぱい解散後は、ムーンライダーズを結成。1976年にアルバム『火の玉ボーイ』でデビューし、現在まで活動を続けている。ムーンライダーズは、メジャーデビューから現在まで活動を続けるロックバンドとして、日本で最も長い歴史を持つバンドのひとつだ。

その後もムーンライダーズでの活動と並行して、ソロやユニットで作品を発表。 YMOのメンバーであった高橋幸宏との「THE BEATNIKS」やあがた森魚、PANTA(頭脳警察)、ケラリーノ・サンドロヴィッチら、さまざまな音楽家と作品を作り、楽曲提供やプロデュースも手掛けてきた。ロックやポップスだけでなく、歌謡曲や演歌、CM音楽などにも活動の場を広げ、その仕事はジャンルを越えて多岐にわたる。

その作品歴をたどっていくと、「あの曲も、この曲もか!」と驚くほど、さまざまな場所で音楽を手掛けていることに気が付くだろう。

鈴木慶一の長い音楽活動を語るうえで、ひとつのキーワードとなるのが「東京」だ。1951年に東京で生まれ、街と音楽シーンが大きく変化するなかで、はちみつぱい、ムーンライダーズをはじめとする活動を続けてきた。

ただ洗練されているだけではなく、雑多で、可笑しく、ときに寂しさも漂う。鈴木は長年、そんな日常の複雑な表情を音楽にしてきた。『ヤニねこ』でも、街で暮らす登場人物たちのだらしない毎日を大げさに盛り上げるのではなく、その可笑しさや妙な哀愁を音によって引き出している。

そんな『ヤニねこ』の世界に、東京で生まれ育った鈴木慶一の音が重なる。

◆ゲーム『MOTHER』、北野武映画、アニメ……こんなところでも

『化け猫あんずちゃん』©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

そして、自身のバンドなどでの活動と並行して、映像やゲームの音楽も数多く手掛けてきた。

その代表例のひとつが、任天堂のゲーム『MOTHER』『MOTHER2』。ゲーム音楽の分野でも大きな存在感を示し、現在も世界中にファンを持つ作品だ。『MOTHER』の音楽はゲームの枠を越えて聴き継がれている。

また映画音楽では、北野武監督の『座頭市』を担当。同作で第27回日本アカデミー賞最優秀音楽賞、第36回シッチェス・カタルニヤ映画祭オリジナル楽曲賞を受賞した。さらに『アウトレイジ 最終章』など、北野監督作品の音楽も手掛けている。

アニメーションとの関わりも長く、2003年には今敏監督の『東京ゴッドファーザーズ』の音楽を担当。そのほかアニメ映画『聖☆おにいさん』『若おかみは小学生!』などの音楽も手掛けている。近年では映画『化け猫あんずちゃん』で音楽を手掛けるとともに、おしょーさん役として出演するなど、映像作品との関わりを続けてきた。

そのほか、映画やドラマでは俳優としても活動。『Love Letter』『スワロウテイル』などへの出演歴もあり、音楽家という肩書きだけでは収まりきらない幅広い活動を続けている。

そして、そんな鈴木慶一が2026年に音楽を手掛けているのが、TVアニメ『ヤニねこ』なのである。

◆そんな鈴木慶一が『ヤニねこ』で作った音

TV アニメ『ヤニねこ』オープニング映像

そんな鈴木慶一は、今回の音楽について公式サイトにて以下のように語っている。

「なんとも言えぬ、だらしなくも凜としている日常って魅力的じゃあーりませんか。音楽製作に関しても、監督の指示抜群、楽しんで作ることが出来ました。オマケですが、細野晴臣さんが煙草を辞めるまで、私は喫煙を続けますよ。」

このコメントからも、『ヤニねこ』という作品への独特の距離感が伝わってくる。実際、アニメの中で流れる音楽も、物語を過剰に盛り上げるというより、登場人物たちのゆるやかで、どこかおかしな日常にすっと入り込んでいる。何気ないやり取りの背景に流れる音楽が、その場面の空気を少しだけ変えていることにも気づかされる。

また、『ヤニねこ』では劇伴だけでなく、印象的な楽曲も手掛けている。

第2話でタバコの妖精が歌った「ニコチン受容体体操」も、鈴木が作曲を手掛けた楽曲のひとつ。そして第6話、第10話で登場する「僕はダーリン」は、鈴木自身が作曲・歌唱を担当。劇中では「鈴木ニャンいち」名義で歌われている。

さらに第8話では、アイキャッチの声も担当。音楽を作るだけでなく、作品のさまざまなところに鈴木慶一自身が登場している。

こうして改めて振り返ると、『ヤニねこ』は、劇伴だけでなく、劇中歌やアイキャッチまで、音楽そのものが作品の世界を形作る重要な要素になっている。そして、鈴木自身も公式コメントで「『ヤニねこ』は私、いまだ喫煙者なので大変に面白いアニメなんです」と語っている。そんな鈴木慶一だからこそ、『ヤニねこ』という作品に寄り添って生まれた音楽なのかもしれない。

◆もう一度、『ヤニねこ』の音楽を聴いてみよう

夏アニメ『ヤニねこ』第12話「ニャーは最終回でもヤニを吸うにゃ」場面カット

ヤニねこたちのだらしない毎日は、鈴木慶一の音が加わることで、さらに可笑しく、ときに妙にもの悲しく聞こえてくる。騒がしすぎず、感動させすぎず、それでも耳には残る。そんな絶妙な距離感は、ロックからゲーム、映画、アニメまで、数々の作品に音を付けてきた鈴木ならではのものだ。

「ニコチン受容体体操」や「僕はダーリン」のような、一度聴いたら忘れられない楽曲はもちろん、何気なく流れていた劇伴にも改めて注目してみると、『ヤニねこ』の世界がまた違って感じられるかもしれない。

これまでのエピソードを振り返りながら、今度はキャラクターや物語だけでなく、その背景で鳴っていた「音楽」にも耳を傾けてみてはいかがだろうか。サウンドトラックは、2026年9月30日(水)午前0時より各音楽配信サービスで配信される。鈴木慶一が手掛けた音楽に注目しながら、『ヤニねこ』をもう一度映像で楽しんでみたい。

夏アニメ『ヤニねこ』キービジュアル

©にゃんにゃんファクトリー・講談社/ヤニねこ製作委員会

《animeanime》

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