少女マンガといえば、主人公の女の子が意中の男の子に告白をしようと奮闘する話、というイメージが定番かもしれません。しかし少女マンガは裾野が広く、こうした王道のストーリーには当てはまらない作品も。今回紹介する『水玉ハニーボーイ』も、型にはまらないキャラクターや展開が魅力的です。
『水玉ハニーボーイ』は2014~2019年に『LaLa』で連載された、池ジュン子先生による少女マンガ。主人公の侍女子・仙石芽衣に、オネエ男子の藤司郎が猛アタックする日々が描かれます。新たな扉が開かれること間違いなしの『水玉ハニーボーイ』の世界を、少しだけのぞいてみましょう。

■濃いキャラには濃いキャラをぶつけろ! ドタバタを経て育まれる両片思い
真っ先に挙げたい魅力は、キャラクターの濃さ。そもそもオネエ男子がヒロインとして登場する、という時点でかなり興味をそそられるのではないでしょうか。
家庭科部に所属する藤くんは、料理も裁縫も得意でいわゆる“女子力”の高い男子高校生。姉と同様に育てられた影響で、オネエ口調や仕草が身につきました。フリフリのドレスやリボンも大好きで、作中では何度も女装姿を披露します。ちなみにPVやドラマCDでは櫻井孝宏さんが演じており、かわいさとかっこよさのギャップがあふれ出ていました。
そんな藤くんが想いを寄せるのが、女子剣道部主将の仙石さん。ストイックに強さを追い求める姿や古風な語り口から、“侍”と呼ばれることも多いです。ちなみに腹筋が割れており、素手でリンゴを粉砕できます。藤くんをお姫様抱っこするのも朝飯前です。
剣道では敵なしの仙石さんですが、何度か藤くんに危機を救われた経験が。守られるのではなく守る側にならねばと、より一層鍛錬に力を入れてしまいます。なかなか自分の好意に向き合ってもらえない藤くん。それでも諦めずに仙石さんを支えようとする姿を応援したくなるはずです!
さらに本作には、藤くんや仙石さんが普通に見えてしまうほど、濃いキャラクターが次々と登場します。
たとえば男子剣道部元主将の七緒学は、修行のために1年間山ごもりをし、なぜか倒したクマを背負って市街地に戻ってきた人物。仙石さんを好いているはずですが、なぜか藤くんの恋人を自称する、行動の読めないキャラクターです。
6巻から登場する西郷撫子さんも本作に欠かせないキャラクター。クマに見間違えられるほど立派な体格をしていますが、藤くんと趣味が合う乙女な一面も持ち合わせています。初登場時のインパクトは七緒にも負けません。
各々が我が道を進んでいるため、学校生活は「そうはならないだろ!」とツッコまずにはいられない珍事件の連続。このドタバタな状況で恋愛要素が入り込む余地があるのか、と心配になるかもしれませんが、そこは池先生の手腕が光ります。ゆっくりと、しかし着実に進展していく藤くんと仙石さんの両片思いを見守ってください。
■枠に押し込めなくていい― 自分らしい恋と生き方
オネエ男子や侍女子など、典型的な「男らしさ」や「女らしさ」とは異なる人々がメインになっている本作。だからこそ、自分らしい恋や生き方を追い求める姿も描かれています。
たとえば13話では、とあるきっかけで七緒が記憶喪失に。藤くんや仙石さんの性別と言動のギャップに、七緒が苦言を呈するシーンがあります。すると藤くんは「生き方に難癖つけられたら息詰まるっての」と一蹴。さらになぜ仙石さんが好きなのかと問われると、「自分の生き方を曲げないところ」と答えていました。生き方を枠にはめなくてもいい、今の自分を好きになってくれる人もいるのだと、読者も元気をもらえるでしょう。
その後も何度か性別によるステレオタイプと生き方のギャップに思い悩む場面があるものの、記憶が戻った七緒をはじめ周囲の人々は、そのままの藤くんや仙石さんを受け入れます。突き抜けた部分のあるキャラクターばかりだからこそ、譲れない部分が誰にでもあることを知っているはず。お互いを尊重しつつも関わることをやめない優しさや温かさが、本作にはあふれています。
大切な人を守る強さを身につけたい仙石さんと、大好きな人を支えたい藤くん。そんな2人だからこそ見つけられた、ありのままの自分を捨てない恋の形とは? その答えはぜひ、『水玉ハニーボーイ』を読んで確かめてみてください!



