アニメ化されていない名作・良作マンガを「アニメ!アニメ!」ライターがオススメするコラム【おすすめマンガ手帖】。今回は異世界ファンタジーの『ゲーム世界で魔物に転生してしまった俺、前世で推しだったヒロインを拾ってしまう』(以下『推し拾』)を紹介したいと思います。
2024年3月より小説投稿サイト「カクヨム」にて連載がスタートした本作は「ねうしとら」氏によるライトノベル作品。2025年9月からは「カドコミ」と「ニコニコ静画」にて、「三部べべ」氏による作画でコミカライズがスタートしました。さらに2026年2月には待望のコミックス第1巻が発売されて注目を集めています。
そこで今回の「おすすめマンガ手帖」では、「ねうしとら」氏著、「三部べべ」氏作画の『推し拾』コミカライズ版を紹介! 記事の最後には試し読み(コンプティーク編集部提供)もあるので、ぜひハートフルな物語を体験してください。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。
◆その出逢いに誰もが涙する……
物語の主人公は、魔物に転生してしまったという名もない男。前世では『零落のユートピア』というゲームをプレイしており、その世界に転生し数十年を孤独に生きてきました。
それではなぜ孤独だったのか?
本作の世界において魔物は人類にとって脅威でしかなく、その姿を発見されれば有無を言わさず、即、切り伏せられてしまいます。街は高い城壁で囲まれていて、一歩でも外に出てしまうとそこは「魔界」と呼ばれる魔物のテリトリー。裕福な者が奴隷を城壁の外に連れ出して魔物に襲わせるという、とんでもない娯楽が成立するほどの危険地帯でした。
そのような世界で人類を護っていたのは「守護者」と呼ばれる人々です。彼らは「能力」と呼ばれるスキルを持っており、つねに能力者をスカウトし防衛に努めてきました。そのような環境に転生したら、当然ながら人間社会に居場所などありません。意思疎通もできないような魔物のテリトリー「魔界」で日々をのんびりと送っていたのでした。
そんな彼がある日、「癒しのスポット」であるお気に入りの花畑に立ち寄ってみると、なんとそこにはひとりの少女が。しかもその少女はゲーム『零落のユートピア』のヒロインのひとりである「ノア・グラン」! 男にとっては“推し”という存在です。
ノアとはやはり守護者のひとりで、原作ゲームではツンデレなところがお気に入りポイントでした。「何? ついてこないで」と突き放したと思ったら「あなたがいて……、良かった」と無防備な笑顔を浮かべる。ヒロインの個別エピソードに感銘を受け、それ以来、彼女が最大の“推し”でした。
確かに原作では魔界に迷い込むエピソードがありましたが、まさか実際にその場面に遭遇するとは! 原作では自力で帰還する展開なので心配いらないかなと一瞬考えますが、気を失っている“推し”を見てしまっては放っておくことはできません。たとえ彼女が目を覚まし、守護者として倒されることになったとしても、“推し”の手にかかるのなら本望だ! そう思い、彼女を自宅へと連れ帰ることにしました。
そして男が思った通り、“推し”は目覚めるなり敵とみなして攻撃魔法を繰り出すことに。しかしすっかり弱っていた“推し”では男を倒すことなどできません。男も男で暇な時間に魔法の腕を磨きすぎ、とっさの判断で“推し”の魔法攻撃をすべて撃ち落とす強さです。“推し”はその次元の違う強さに絶望したまま、空腹と疲労で再び気を失ってしまったのでした。
ノアはきっと、自分が魔物(男)に食われるような姿を想像したのかもしれません。しかしそれは当然のこと。彼女にとって魔物は敵でしかありません。死に物狂いで花畑まで逃げてきたのに、その抵抗も虚しく無念の最期を遂げてしまう……。脳裏をよぎるのは、これまで送ってきた地獄のような日々でした。
もともと孤児院で育ったノアは、子供ながら夜まで掃除をさせられるなどつらい日々を送ってきました。しかも奴隷として買われた先でも理不尽な暴力を受け、別の領主の手に渡った後も吊るされて鞭打たれる始末。おまけに「この世界には娯楽がない」と、他の奴隷とともに魔界へ放り出され、その生存ゲームに強制的に参加させられていたのです。
次々と魔物に食われていく奴隷たち。守護者としての才能があったノアは、いつの間にか習得した魔法で突破口を開こうとしますが、その程度では魔物を倒せません。死に物狂いで抵抗し、奴隷たちの無残な死を目の当たりにしながら歯を食いしばり、領主たちの嘲笑を浴びながらも、あがいて、あがいて、あがき続けます。そうして命からがらたどり着いたのが、あの凶暴な魔物のいない平和な花畑だったというわけでした。
生まれながらに不幸な境遇にあり、誰も助けてくれない状況は、まさに「敵だらけ」です。人間社会にいながらその庇護下から完全にはじき出された存在として、ずっと孤独に生きていたのでした。
そして今は別の魔物に囚われ、きっと無残な最期を迎えるはず……。そう思いながら目を覚ました彼女の目に飛び込んできたのは、信じられないような光景でした。
手際よく猪を料理し、温かな串料理を差し出す魔物(男)。襲ってこないことに違和感を覚えるよりも先に、その不可解な行動に目が釘付けです。そして作りたての串料理を口にしたノアは、自然と涙をこぼしました。
「ただ焼いたお肉なのに、でもすごくおいしくて……。やさしい味がする」
今まで必死にこらえていたこともあり、魔物(男)の胸の中で声を上げて泣きじゃくるノア。“推し”になら倒されてもいいと思っていた男も、この状況に彼女を助けることを決意します。
そしてグッとくるシーンへと続くのですが……。その部分は試し読みにてご確認ください。
その後、男は「レイ」と名付けられ、ノアとともに街へと戻ることになります。しかし人間社会において魔物は脅威そのもの。はたして彼はどのように自分の居場所を築いていくのか……!? レイには意外な能力もあり、それに驚く人々のリアクションも“魔物ヘイト”がうまく効いていておもしろいシーンとなっています。
コミカライズはまだ始まったばかりということで、コミックス1巻を手に入れればすぐに追いつける『推し拾』。これからどのような展開が繰り広げられていくのか楽しみな異世界ファンタジーです。
【書籍情報】
■タイトル:ゲーム世界で魔物に転生してしまった俺、前世で推しだったヒロインを拾ってしまう
■漫画:三部べべ
■原作:ねうしとら
■定価:836円(税込)
■発売日:2026年2月10日





































