一躍人気を博したキャラクター・ラブブ。
ラブブとは、香港出身の龍家昇(Kasing Lung)によって生み出され、2015年に絵本『神秘のブカ』で初めて登場した、『THE MONSTERS』シリーズのキャラクターである。北欧の童話や民話に影響を受けた龍家昇は、北欧の森の精霊伝説と東洋の妖怪文化を融合させ、猫ほどの大きさに直立した長い耳、9本のギザギザした牙、無邪気でありながらもどこか邪悪な笑みを浮かべるキャラクターを創り出した。
当初は絵本の背景に隠れた脇役に過ぎなかったが、その独特な「少し不気味だけどかわいい」魅力で絵本キャラクターとして根を下ろし、後の商業化の基盤を築いた。

2018年、ラブブは玩具会社How2Workと協力して初のフィギュアを発売したが、市場の反応は鈍かった。2019年、POP MARTが龍家昇と契約し、ブラインドボックス仕様のぬいぐるみが登場。キャラクター商品が定期的に出回ることとなった。
2022年、BLACKPINKのメンバーであるリサがラブブのキーホルダーをSNSに投稿したことがタイで爆発的な人気を呼び、現地ではプレミア価格が7倍に高騰。東南アジアが最初の大ヒット市場となった。2024年には、『THE MONSTERS』シリーズの売上高が30億元(約600億円)に達し、既存キャラクターのMOLLYを抜いてPOP MARTのトップIPに躍り出た。
現在、POP MARTの海外店舗数は500を超え、パリのルーヴル美術館やロンドンのオックスフォードストリートなど世界中のランドマークに進出。ラブブは中国発のIPが海外に打って出た代表例といえよう。

では、なぜラブブがこれほど世界中で高い人気を誇るのか。その人気の秘密は、Z世代のコアなニーズを的確に捉えている点にある。
1つめは、独自の美的感覚。従来の「かわいい」だけのフィギュアの枠を打ち破り、「少し不気味だけどかわいい」というギャップが、「定義されたくない」という若者の個性表現にマッチしている。

2つめは、感情的な価値。「凶暴だけど優しい」という特性が、ワーキング層や学生の「心の拠り所」となり、4割以上の若者が感情消費を重視する中、癒やしを求める存在として支持されている。
3つめは、ソーシャル性だ。ブラインドボックスのレアアイテムや限定品の希少性が、SNSでの「社会的通貨」としての役割を果たし、中国のSNS・小紅書(Rednote)では「ラブブ」関連のトピックの閲覧数が23億回を超え、ユーザー生成コンテンツが世界中に拡散されている。
4つめは、産業的な支え。中国のサプライチェーンを活用し、ラバー素材やぬいぐるみなどの革新的な製造技術によって高品質な量産を実現。データドリブンで迅速な製品開発が継続的な人気を支えている。

ラブブは、さまざまなリアルイベントやコラボレーションを通じて、その世界を広げている。また、北京にあるPOP MARTのテーマパーク内にラブブのエリアを設置し、キャラクターグリーティングやアトラクションを展開。さらにFIFAワールドカップやニューヨークのメイシーズ・サンクスギビング・パレードなどの国際的なイベントにも登場し、世界的な知名度を高めている。
コラボレーションでは、芸術・文化面ではフランスのルーヴル美術館と「モナリザ・ラブブ」を発表。限定品もあることから多くの人が訪れ、POP MARTもパリの観光名所といえる人気ぶりだ。
スポーツ界ではFIFAワールドカップやアパレル用品のVansとコラボ。ワールドカップシリーズはオンラインサイトで即完売、Vansコラボモデルは中古市場でプレミア価格が20倍以上に高騰している。

生活・消費面では、コカ・コーラ、アネッサなど、多くのブランドとコラボし、中国においては衣食住のあらゆる場面に浸透している。有名IPではサンリオとコラボし、「美夢奇遇記」シリーズのブラインドボックスはレアアイテムのプレミア価格が8倍以上に高騰している。昨年8月には、POP MARTが日本のユニクロがコラボし、ラブブTシャツを発売すると、中国や日本の多くのユニクロ店舗で発売当日に完売するほどの人気ぶりだった。

ラブブは今、「フィギュア」から「オールシーン型文化IP」へと進化を遂げようとしている。2026年3月、POP MARTはソニー・ピクチャーズと実写+CGIの長編映画の開発を正式に発表した。監督は『パディントン』や『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のポール・キングが務め、龍家昇が製作総指揮を担当する。
同時に中国では、アニメシリーズ『LABUBU与朋友們(ラブブと仲間たち)』の制作も準備中とのこと。POP MARTの製品展開では、小型家電や衣料品などの日常的に使えるアイテムを発売予定だ。
絵本の脇役から世界的なトップIPへ――。中国のIPが国内から世界へと飛躍した、ラブブの10年の過程はすさまじい。映画化やさらなるエコシステムの拡大により、この「少し不気味だけどかわいい」小さなモンスターは、中国文化IPのグローバル化における新たな一章を紡ぎ続けている。

