なぜ「死亡遊戯で飯を食う。」にラノベ苦手女子が沼落ちしたのか? 単なる鬱アニメではない― 魅力を紐解く【冬アニメ解説】 | アニメ!アニメ!

なぜ「死亡遊戯で飯を食う。」にラノベ苦手女子が沼落ちしたのか? 単なる鬱アニメではない― 魅力を紐解く【冬アニメ解説】

2026年1月からスタートしたアニメ『死亡遊戯で飯を食う。』に、思いがけずどハマりしてしまった。

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『死亡遊戯で飯を食う。』「ゴーストハウス」ゲームビジュアル
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アニメ『死亡遊戯で飯を食う。』に、思いがけずどハマりしてしまった。

『死亡遊戯で飯を食う。』は、鵜飼有志(原作)とねこめたる(イラスト)によるライトノベル。主人公・幽鬼がデスゲームの賞金で生活しながら99連勝を目指す物語で、2026年1月よりTVアニメが放送されている。

普段の私であれば、この手のジャンルには惹かれない。「美少女」「デスゲーム」「ラノベ原作」といった要素を持つ作品は、非現実的な設定に入り込めず、序盤で置いてきぼりになることが多いからである。

そんな私が本作を視聴したのは、一部のアニメファンの間で「すごい」と話題になっていたからだった。そこで「とりあえず1話だけ……」と思って見た初回60分は、体感5分。見事に引きずり込まれてしまったのだ。

なぜ、苦手なはずのジャンルにここまで惹かれたのか。本記事ではその理由を掘り下げながら、アニメ『死亡遊戯で飯を食う。』の魅力を紐解いていく。

※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。



目を奪われる “鬱(うつ)くしい映像”

まず驚かされたのは、圧倒的な映像の美しさ。背景美術や水の表現に至るまで、すべてが繊細に作り込まれているが、なかでも強く印象に残ったのが「目」の表現だ。

日の光に当てたビー玉のように澄んだその瞳は、画面に映るたびに視聴者の視線を奪う。この目の存在感が、本作に一気に引き込まれた理由のひとつである。

『死亡遊戯で飯を食う。』幽鬼

この点について、KADOKAWAのプロデューサー・香山貴亮は「WebNewtype」のインタビューで次のように語っている。

特にアップになった際の目のキレイさは圧倒的ですね。ハイライトの映り込みも、カットごとにすべて違うものを描いていると聞いていますし。オッドアイという幽鬼のキャラクター性もあって、僕から見ても目に対する執念はすさまじいものを感じます。

とりわけ印象的なのが、「ハイライトの映り込みをカットごとに変えている」という点。幽鬼に限らず、本作のキャラクターたちの瞳には常に“その瞬間に見ている景色”のようなものが映り込んでいる。単に「綺麗な目」を描いているのではなく、キャラクターが生きている世界そのものを、目の中に閉じ込めているように感じられるのだ。

また、キャラクターや背景のタッチも印象的だ。線や色彩はやわらかく、まるで絵本のページをめくっているかのような感覚すら覚える。しかし、そのやさしいタッチとは裏腹に、画面の隅々からは常に「何かがおかしい」という違和感が立ち上ってくる。

引きの視点で展開される場面ではキャラクターの顔が描かれないこともあり、その距離感が不安をより一層大きくする。恐怖を煽る派手な演出や過剰なカメラワークは少ないが、不穏な空気が静かに居座り続けているのだ。

この“美しさと不穏さが同居する感覚”こそが、本作の映像表現を特別なものにしている。可愛らしい少女たちの物語でありながら、決して安心できない……その矛盾した感覚が、視聴者の心を掴んで離さないのだと感じる。

耳にやさしく、心がざわつく音

音の使い方もまた、本作を語るうえで欠かせない要素だ。静寂の中で響くハイヒールの音や、服が擦れる音、やけにクリアに届く声。BGMもいかにも恐怖を煽るような曲ではないのに、なぜか落ち着かない。心地よさと不穏さが同時に存在し、感情をじわじわと侵食してくる感覚がある。

声優陣の演技も、一般的なアニメとは少し異なる印象を受けた。囁くように、時には何を言っているのか聞き取れないほどか細い声で話す。その一方で、極限状態では断末魔のような叫びをぶつけてくる。

その落差があまりにも生々しく、フィクションだと分かっていても思わず息を呑んでしまう。「怖がらせよう」というよりも、“彼女たちと一緒にその場にいる感覚”を共有させることを重視した芝居に感じられた。

さらに印象深かったのがOP。LIN(MADKID)による「¬Ersterbend(ノット・エルシュテルベント)」には歌がなく、映像には道路を走る車が淡々と映し出されるだけ。最初はOPだと気づかなかったほどだ。

それでも、不穏さだけは確かに漂っている。やさしい旋律で、決して怖い曲ではないはずなのに「これは何だろう……」という得体の知れない違和感が残る。もしかすると、私はこの時点ですでに、デスゲームの世界へと引きずり込まれていたのかもしれない。

この映像と音の完成度があったからこそ、初回60分を「体感5分」で駆け抜けてしまったのだと思う。

現実と地続きの物語

本作はよく「グロい」「鬱アニメ」と評されているが、私は少し違う印象を持った。

もちろん刺激が強い描写はあるものの、「誰が死ぬか」「どれだけグロいか」を消費するデスゲーム作品ではない。死そのものよりも「どんな判断が生死を分けたのか」という過程を大事にしている気がする。

仲間を信じるのか、疑うのか、切り捨てるのか。その一つひとつの選択が、取り返しのつかない結果として可視化されていく。ただ視聴者を怖がらせたり、気持ち悪がらせたりするのではなく、「あなたならどうする?」と判断を迫ってくる残酷さが、この作品にはある。

作中では仲間意識や温情も描かれるが、それが本物なのかどうかは最後までわからない。「優しさ」や「善意」が、必ずしも正しい選択にならないという描写が、この物語の大事な部分だと感じた。

特に印象的だったのが、第1話ラストの幽鬼と金子のシーン。脚を失った金子を背負い、励まし続けていた幽鬼が、最後の最後で彼女を手にかける。

『死亡遊戯で飯を食う。』金子

視聴者にとってトラウマ級の衝撃を残す場面だが、その後に語られる幽鬼のモノローグが、単なる残酷描写としてこのシーンを終わらせなかった。

金子を手にかけたのはやむを得なかったから。
華奢で殺しやすかったからではない。
彼女を選んだのは、ただ、近くにいたから。
ルールは力を与えてくれる。
自分で助け、自分で励ました人間を、自分の手で殺害する勇気さえもたらしてくれるのだ。

一見すると冷酷で身勝手な理屈に聞こえる。しかし「誰かを犠牲にしなければ生きて帰れない」という状況に置かれたとき、果たしてどれほどの人が、自分自身を差し出せるのだろうか。

自分を正当化できるルールや法律があれば、それを盾に、思いもよらない行動に出てしまう。それこそが人間という生き物なのではないか、という問いを突きつけられているように感じた。

また、キャラクターたちが命懸けのゲームに参加する理由も興味深い。それぞれが複雑な事情を抱えているが、特に第2話・第3話の「スクラップビル」に登場するキャラクター・言葉のセリフは強く印象に残っている。

『死亡遊戯で飯を食う。』言葉

世捨て人になりたいんです。
なんだか最近みんな変になってるじゃないですか。
冷笑主義、マキャベリズム、公正世界仮説……まるで集団ヒステリーですよ。
ああいう人たちの中で生きていたくありません。
だからさっさとお金を貯めて、物価の安い国で隠居しようかなって。

このセリフを聞いたとき、決して作中だけの話ではないと感じた。SNSが普及し、何が嘘で何が本当かわからなくなった世界。扇動的な言葉が飛び交い、現実では戦争も起きている。そんな社会に疲れ果て、「もう競争から降りたい」「逃げたい」と感じる人は、少なくないはずだ。

複雑な現代社会をどう生き延びるかという現実的な問題を、本作は容赦なく映し出す。この作品が描いているのは、デスゲームという極端な舞台を借りた、現代を生きる私たち自身の姿なのかもしれない。

食わず嫌いはもったいない

美しい映像と音に包まれながら、常に恐怖がつきまとう独特の気持ち悪さ。そして、非現実的なデスゲームという設定でありながら、現代を生きる私たち自身の姿につながっていくテーマ性。こうした二面性こそが、私が本作に強く惹かれた理由だ。

物語はまだ序盤で、幽鬼を含むキャラクターたちの背景も多くは語られていない。今後の展開次第で作品の見え方が変わる可能性もあるため、引き続き注目していきたい。

可愛らしいキャラクタービジュアルやデスゲームというテーマから視聴予定に入れていなかった人、私のようにラノベ原作が苦手という人にこそ、一度触れてみてほしい。(※人体損壊など刺激の強い描写も含まれるため、グロテスクな表現が苦手な場合は注意が必要)

アニメ『死亡遊戯で飯を食う。』は、あなたの価値観を変える一作になるかもしれない。

■TVアニメ『死亡遊戯で飯を食う。』作品情報
TOKYO MX、BS日テレ、ABCテレビ、WOWOW他にて好評放送中。
Netflixほか各配信サイトにて地上波同時配信。

【放送情報】
TOKYO MX 毎週水曜日23:30~
BS日テレ 毎週水曜日25:00~
テレビ北海道 毎週水曜日25:30~
テレビ愛知 毎週水曜日25:30~
TVQ九州放送 毎週水曜日26:00~
ABCテレビ 毎週水曜日26:45~
AT-X 毎週木曜日22:30~
東北放送 毎週木曜日25:35~
WOWOW 毎週火曜日25:00~

【STAFF】
原作:鵜飼有志(MF文庫J『死亡遊戯で飯を食う。』/KADOKAWA刊)
キャラクター原案:ねこめたる
監督:上野壮大
シリーズ構成:池田臨太郎
コンセプトアート:hewa
キャラクターデザイン:長田絵里
サブキャラクターデザイン:大塚渓花/小松聡太
プロップデザイン:黒岩園加
色彩設計:桂木今里
美術監督:中村嘉博
撮影監督:近藤慎与
編集:菊池晴子/小野寺桂子
音響監督:小沼則義
音響効果:山田香織
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:松本淳一
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:スタジオディーン
オープニングテーマ:「¬Ersterbend」(作曲・編曲:LIN (MADKID))
エンディングテーマ:「祈り」藤川千愛(作詞:藤川千愛 作曲・編曲:近藤世真(ElementsGarden))

【CAST】(「 SCRAP BUILDING」編)
幽鬼:三浦千幸
言葉:若山詩音
毛糸:丸岡和佳奈
智恵:田辺留依
御城:土屋李央

(C)鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会

《堀めぐみ》

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