「アニメディア」は最新のアニメ作品を中心にゲーム、2.5次元演劇などの情報を掲載する月刊アニメ情報雑誌。イラスト投稿コーナーなどの読者投稿ページや毎号豪華と話題の付録も魅力で、毎月テーマ別の特集が組まれている。そんな「アニメディア」の編集長・バカタール加藤さんに、「アニメ!アニメ!」編集部員が突撃!
2025年も年末が迫る中、「アニメディア」はどんな1年だったのか、どんな作品が印象に残っているのか……今年を振り返ってその実情を聞いた。
インタビューイープロフィール
アニメディア編集長・バカタール加藤 PROFILE

アスキー、エンターブレイン、KADOKAWAでファミ通64+編集長、週刊ファミ通編集長、Walker47編集長等を務め、2018年に独立し、ハナペン合同会社を設立。2023年7月アニメディアの編集長に。ゲーム好きで、音楽好き。
印象的な作品は『BanG Dream! Ave Mujica』!1月号の『原神』はどんな評価がされるか注目したい
――2025年で印象的な作品はありましたか?
バカタール加藤(以下、加藤):編集部のスタッフたちに聞いたところ、劇場版『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』、『プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』、『アルドノア・ゼロ』、舞台『日本三國』、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』などが挙がりました。

盛り上がりを感じたのは、劇場版『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』ですね。とくに『ミルキー☆サブウェイ』は一人の監督さんがCGで作り上げた作品で、じわじわとバズってますよね。大手が関わる大作とは対照的に、個人性の強い作品が注目されるという流れがゲームと同様にアニメでも見られました。ほかにも、『僕のヒーローアカデミア』のファイナルシーズン、『忍者と極道』なども挙がっていました。世の中的には『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 』や『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』第一章 猗窩座再来』話題になりましたね。
――加藤さん的にはどの作品が印象的でしたか?
加藤:すでに上がった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 』、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』以外の作品では、個人的には『BanG Dream! Ave Mujica』が印象的でした。従来の女子高生の青春ものとは異なり、ホラー的な展開やバンドを続けることの難しさなども描かかれ、非常に興味深かったです。
というのも、自分もバンドをやっているのですが、アニメのバンドものには元々あまり興味がなかったんです。学生バンドの話が多いので…。しかしアベムジカは、学生バンドをやめざるを得なかったあと、自らプロのバンドをプロデュースしてのし上がる、という展開が描かれていて、おじさんバンドマンとして興味深かったです。ボーカルが変わるとバンドの色も変わりますし、そういった現実的な描写がすごいリアルで良かったです。

また、バンドものというか、音楽もののアニメが盛り上がった印象がある1年でした。個人的には『ロックは淑女の嗜みでして』も印象的でした。インストでいかに盛り上がるかということを延々と描いていて、バンドマンとして面白かったですね。
それとは別のベクトルで面白いと感じたのが『前橋ウィッチーズ』です。高校生の女子が魔女になる修行のためにアイドルをやるという設定で、キャラクターが自分をさらけ出していく話です。エンディングも含めて、最後は少し泣けるような作品でした。音楽ものは全般的に強く、面白かったと思います。
それとは別のベクトルで面白いと感じたのが『前橋ウィッチーズ』です。高校生の女子が魔女になる修行のためにアイドルをやるという設定で、キャラクターが自分をさらけ出していく話です。エンディングも含めて、最後は泣けるような作品でした。音楽ものは全般的に、個性的な作品が増え、面白かったと思います。
音楽物以外では、おじさん系の『片田舎のおっさん、剣聖になる』、あと野球物の変化球というか、自分がビール大好きなせいか『ボールパークでつかまえて!』にもハマりました。ほんとに個人的な趣味ですけど……。
――「アニメディア」で印象に残っている号はありますか?
加藤:まず1つ目は、『KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ』を特集した号(10月号)ですね。付録としてクリアファイルを付けたのですが、これがSNSで話題になりました。切り取るとペンライトに装着できて、オリジナルのペンライトが作れる仕様になっていたんです。応援上映が盛り上がるコンテンツということもあり、作品との親和性も高く、非常に面白い取り組みになりました。
この号の表紙は『キミとアイドルプリキュア』(10月号)で、インタビューのボリュームが非常に多く、記事にも力が入っていましたし、表紙のビジュアルにもこだわっていたので、個人的にも思い入れのある号です。

2つ目は『忍たま乱太郎』の号(2月号)です。こちらはAmazonのベストセラーにもなり、ほぼ完売に近い売れ行きでした。16ページの巻頭大特集で読み応えがあったことに加え、表紙を飾った土井先生のビジュアルも印象的でした。

3つ目が『BanG Dream! Ave Mujica』が表紙の号(4月号)です。3号連続でプレゼントキャンペーンを実施したタイミングで、編集部としてもかなり力を注いだ企画でした。その分、印象に強く残っています。


――アニメ雑誌はアニメだけでなく、ゲームや舞台、声優さんのインタビューなども扱っているんですね?
加藤:そうですね。基本的にはアニメ関連のコンテンツを中心に扱っています。ゲーム、特にアプリに関しては、無料でキャラクターやストーリーを堪能できる点が大きいです。キャストさんがさまざまな演技をしてくださることで、キャラクターを好きになるきっかけも多くありますし、アニメに比べて作品に触れる時間が長い分、思い入れもより強くなります。
また、現在のゲームはアニメナイズされたキャラクターデザインが主流で、ストーリー表現の幅も非常に広いです。そのため、エンターテインメントとしては、アニメとゲームはほぼ融合していると感じています。

その中で、キャラクターをどのように演じているのか、物語の中で何を思っているのかといった部分は、やはりキャストさんの声を通して知りたくなりますよね。さらに、監督や脚本家がどんな思いでシナリオを作っているのかという点も、ゲームでもアニメでも共通して関心を持たれる部分だと思います。そうした“作り手の考え”まで伝えられるような取材や企画を意識して取り組んでいます。
――アニメとゲームの関係についてどう思われますか?
加藤:アニメとゲームは親和性が高いので、本当は同時に作った方が良いのでは?と思っています。ゲームは開発期間が長く、100億単位でお金がかかることもあります。キャラクターとシナリオを作っているのだから、まずは最初にアニメで出せば良いと思います。
ただ、キャラクターデザインやシナリオ、キャストさんは共通なのに、業界別で縦割りに色々やっていることが多いので、一緒にやってほしいと思っています。

――なるほど。アニメとゲームを同時に展開する利点は何ですか?
加藤:キャラクターを作ってシナリオも作って声も当てて、そこから何年もゲーム発売までかかると何年も投資を回収できません。その間にアニメを放送してアニメとしても売ることで、キャストの反応やユーザーの反応を活かし、ゲームの精度を上げられます。
組織がそうなっていないので難しいですが、それをやったところが勝つと思います。『刀剣乱舞』もアニメになりましたし、『原神』も元々アニメ化すると宣言していました。ファンはゲームもアニメも両方見たいんじゃないかなと思います。特にアプリはスピーディーなので、アニメとゲームが同時に展開されていく作品が増えると良いなと思っています。

――そういえば、以前、アニメ!アニメ!のインタビューで『アイドリッシュセブン』について語られていたと思いますが、今年は「アニメディア」で取り上げられたのでしょうか?
加藤:今年は『アイドリッシュセブン』の劇場版が公開され、その作品を取り上げました。僕自身、『アイドリッシュセブン』が大好きで、アプリにもかなりハマっていましたし、アニメ化されたら必ずチェックしますし、CDも買っていました。
自分が大好きな『アイドリッシュセブン』を例として考えると、いわゆる“推し”ができたら、アニメかゲームかに関係なく、その作品の情報をもっと知りたいと思うはずです。だからこそ、媒体の垣根はあまり重要ではないと感じています。
たとえば、このキャラクターのカードやポスターが付いていたら欲しいですし、これまで見たことのないポーズや衣装のビジュアルがあれば、ファンとして心をつかまれますよね。

そうしたファンの気持ちに応えるものを形にしていくことが、僕たちの仕事だと考えていますし、この方針は今後も大切にしていきたいと思っています。実は、「アニメディア」の編集長になったときに「『アイドリッシュセブン』を掲載したい」と真っ先に希望していたのですが、なかなかタイミングが合わず、今回ようやく7人全員が揃った表紙で、巻頭特集ができました(11月号)。それだけに、個人的にとても嬉しかったです。
――2025年の「アニメディア」の売れ行きはどうでしたか?
加藤:『忍たま乱太郎』が表紙の2月号(1月発売)は非常に好調で、その次の3月号(2月発売)(『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク 』、『刀剣乱舞ONLINE』が表紙&Wカバー)もほぼ同じ水準で売れました。表紙の初音ミクの描きおろしイラストと『忍たま乱太郎』のクリアファイルが好評だったようです。

その次の4月号(『BanG Dream! Ave Mujica』が表紙)は、前の2冊よりは数字が落ちましたが、ある程度は想定していました。
続く5月号(『WIND BREAKER』と『鳴潮』が表紙&Wカバー)は、初速こそ控えめだったものの、じわじわと伸びていき、結果として良い着地になった印象です。6月号(『ウィッチウォッチ』が表紙)については、手応えとしては可もなく不可もなく、いわば“まあまあ”といったところでした。
7月号(『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が表紙)は、発表時から非常に注目度が高く、各媒体がこぞって特集を組んでいました。ただ、雑誌としての売り上げは、正直なところ期待したほどではありませんでした。作品自体はとても面白く、過去作の再評価や掘り起こしにつながり、「ガンダムとは何か」「アニメとは何か」といった議論が生まれた点は非常に興味深かったです。作品の広がりや影響力という意味では、印象に強く残るタイトルでした。

また、『ガンダム』号の裏表紙(Wカバー)を飾った『ゲゲゲの鬼太郎』は、非常に人気が高かったですね。この『ゲゲゲの鬼太郎』描き下ろしイラストなのですが、個人的にはこの年で一番印象に残っているビジュアルです。新OPの作画を担当された谷田部透湖さんの描き下ろしなんですが、引き延ばして部屋に飾りたいと思うほど素晴らしい出来でした。
少し時期を飛ばすと、『キミとアイドルプリキュア』が表紙の号(Wカバーは『原神』)は安定した売れ行きを見せました。プリキュアシリーズは時代に合わせて常にアップデートされており、ジェンダーフリーの視点を取り入れたり、「戦わないプリキュア」という表現に挑戦したりと、表現の幅を広げています。16歳以下の人口がペットの数を下回ったという社会背景の中で、動物との家族的な関係性やファミリー意識といったテーマを自然に組み込んでいる点も印象的です。小さな女の子はもちろん、大人も楽しめて、家族で一緒に観られる作品として、プリキュア号は常に安定したニーズがあります。テーマの掘り下げ方やキャラクター造形も毎回工夫されていて、編集していても面白いシリーズです。
そして、『アイドリッシュセブン』、『ディズニー ツイステッドワンダーランド』と特集を重ねてきた流れの中で、12月発売の『原神』の号がどういう反響になるのか、今から非常に楽しみにしています。また、この号は、W表紙の『ワンパンマン』の絵の迫力がすごくて、裏表紙も7月号の『ゲゲゲ』と並ぶくらいお気に入りです。
――「アニメディア」の表紙はどのように決まるのですか?
加藤:作品によって違うので決まった時期というのは言えないのですが、タイトルが発表になって「これは!」というものはその段階で依頼します。描き下ろしイラストだけでなく、表紙にするかどうかも編集部全員で話し合って決めています。なるべく早く依頼しますが、早いものは半年以上前、遅くても2~3ヶ月前には依頼しないと間に合いません。そのタイミングではアニメがヒットするかどうかは分からないので、博打的な要素もあります。

――以前ほど雑誌はあまり買われないイメージがありますが、実際はどうですか?
加藤:確かに本屋も雑誌の売上も毎年減っていますが、アニメ誌はゲーム誌等に比べても生き残っている方かもしれません。ゲーム誌はファミ通がほぼ独占状態ですが、アニメ誌は老舗3誌を含め複数の雑誌が残っています。アニメ誌はジャンル的には売れている方だと思うのですが、それは付録が理由だと思います。濃いアニメファンはグッズが欲しいので、作品へのお布施として買ってくれています。

――やっぱり付録で売り上げは変わりますか?また、どういう付録が人気ですか?
加藤:もちろん変わります。キャラクターがこちらを見て微笑んでくれたり、レアな表情を見せてくれていたりするのが良いですね。また、アニメの展開に合わせたタイミングで、その展開を受けての絵や、盛り上がったクライマックスのキャラクター同士の組み合わせなども好まれる印象です。アニメディアは女性読者も多いので、女子向けに可愛い系になりがちですが、それぞれのキャラクターの魅力を引き出す工夫をしています。


――ありがとうございました!
ヒットもあれば、手応えに悩む号もある。それでも作品と真摯に向き合い、ファンの熱量を信じて誌面を作り続ける。その積み重ねが、2025年の「アニメディア」だった。加藤編集長の振り返りは、雑誌というメディアが今も“好き”の最前線に立っていることを静かに示していた。


