「ダンジョン飯」「グリッドマン ユニバース」を制作「トリガー」:ワクワーク2025出展企業インタビュー #3 | アニメ!アニメ!

「ダンジョン飯」「グリッドマン ユニバース」を制作「トリガー」:ワクワーク2025出展企業インタビュー #3

アニメ業界就職フェア「ワクワーク2025」出展企業へのインタビュー企画。第三弾は「ダンジョン飯」や「グリッドマン ユニバース」などの人気作品を手掛ける「トリガー」の取締役 兼 プロデューサー 舛本和也氏に、今年の採用について話を聞いた。

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【求人】「ダンジョン飯」「グリッドマン ユニバース」を制作「トリガー」:ワクワーク2025出展企業インタビュー #3
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アニメ業界就職フェア「ワクワーク2025」が、2024年3月20日に開催された。

今回はワクワーク2025出展企業インタビュー企画第三弾として、「ダンジョン飯」や「グリッドマン ユニバース」などの人気作品を手掛ける「トリガー」の取締役 兼 プロデューサー 舛本和也氏に、今年の採用について話を聞いた。

トリガーとして、作品に全員で集中するために取り組んでいること、長年の経験を踏まえて考えられた育成カリキュラム、人材にかける想いなど、詳しく話を伺った。

記事提供:ドキドーキ


4名の監督が在籍、作品のクオリティを突き詰める

――毎年のご出展、ありがとうございます!

こちらこそ、開催ありがとうございます。トリガーは初回からずっと参加してますが、今回は新しく参加される会社が多いですね。

――そうですね! おかげさまでスタジオを中心に新規のご出展をいただくことになりました。アニメ業界には多数のスタジオがありますが、スタジオとしての御社ならではの特徴を教えていただけますか。

トリガーは2011年にできた会社です。日本のファンにもご評価いただいていますが、海外のファンにも評価されています。

現在放映中の「ダンジョン飯」は、トリガーにとって社員4人目の監督(宮島善博氏)が立っています。トリガーに在籍している4名の監督は、会社のスタイルというよりは、それぞれの持ち味を作品に落とし込んでいます。また、その監督のスタイルを映像に盛り込んで制作できるスタッフも抱えています。

海外の方たちにも評価いただいている持ち味は、絵コンテをはじめとした演出と、作画による絵の表現。同時に、作品を育てるためのマネジメント層。プロデューサーや制作進行もただスケジュールや予算を守るだけでなく、作品のクオリティを突き詰めるイズムがあります。それらが総合的な形となって評価いただき会社の持ち味になっていると考えています。

――ありがとうございます。1つの会社に監督が4名いるというのは珍しいのでしょうか。

長いアニメの歴史を紐解くと、昔から演出を育成している会社はおのずと監督が多くなっています。

「ダンジョン飯」は若手が自らチャレンジする作品に

――御社は監督とセットでオリジナルの企画をやることが多い印象です。一方で、現在、原作がある「ダンジョン飯」を制作されていますが、どういった狙い・理由があるのでしょうか。

13年目を迎えて若手のスタッフが育ってきました。トリガーはオリジナル作品を企画開発・制作できる一方で、オリジナル作品にはイメージの共有のハードルだったり、独自性が求められるなど、若い人が急に参加するには厳しい側面があります。そういった時にここ5年くらいで、会社全体で若手をちゃんと育てていこうという方針が高まってきました。「ダンジョン飯」を作っている1つの目的は、若い人たちに「自分たちで作るんだ」というイズムを持ってもらうためにやっています。

――アニメ「ダンジョン飯」は、しっかりとしたビジュアルが出来上がって、海外でも評価されていますが、それは若手が育ってきたという証拠でもある、ということなのですね。

そうですね。見ていただいたら分かるとおり、かなり丁寧に作っています。原作のエッセンスをちゃんと映像に抽出するという点においても、彼らはすごくしっかりやっています。若手が自分たちで作るという体験を自分たちの技術に落とし込んでくれているのではないでしょうか。

――育成という所も含めて、今後オリジナル作品も原作ものも両方ともやっていくのでしょうか。

もちろんその通りです。映像を作るとなればオリジナルも原作ものも関係なくて、ファンの方たちが楽しんでくれる事が重要です。トリガーとしてはオリジナルを作りたいというのはありますが、それと同時に原作ものも並行でやっていくというのは変わりません。

――若手が育ってきているというお話ですが、現在トリガーにはどれくらいの社員がいるのでしょうか。男女比や平均年齢なども含めてお伺いしたいです。

社員は52名です。加えて現在、社内アニメーターに対して社員にならないかという声掛けをしています。アニメーターの採用も社員という形で雇用していきます。今は52人ですが将来は100人くらいを目指しています。男女比は、女性が4割、男性が6割で、ちょっと男性が多いです。年齢は、20代から30代で全体の7割を占めています

――採用に対して積極的かつ、社員雇用もしているという意図をお伺いできますでしょうか。

アニメーターの育成は会社設立初年度からおこなっています。ただし最初の方は経済的な事情から、業務委託としてお仕事を依頼する形が多かったです。設立当初からアニメーターの社員雇用を目指していましたが、今、作品も評価いただいて、会社も大きくなっていくなかで社員としての雇用を進める舵を切りました。

5年後、10年後の未来の話として、どれだけデジタル化など生産効率性が上がっていても、アニメを作るのは結局“人”です。アニメーター、制作進行、演出など、一人ひとりの技術で成り立っているシステム自体は変わりません。

これからも良い作品を作っていくためには、その人たちにいて貰わないといけないし、その人たちの技術が上がっていかないといけない。安定した状態で生活を送りながら、アニメを仕事にしていくというところが、会社が目指す方向だと思っています。

中期目標は「完全内製化」

――ありがとうございます。長期的な目線でスタジオ自体をどんどん大きくしていく、と理解しました。

大きくすることについて、もう少し説明します。アニメ業界には、ラインという考え方があります。同じ時期に何作品を同時に作るか。1つの作品で1ライン。それが2ライン3ラインと増えていくということですね。

同時期に立ち上がった会社さんはライン数が多い会社が多いです。会社の収支のことを考えて組織を維持するという観点からは至極当然のことです。ラインを増やしていくために、人も増やしていかなくてはいけない。

しかし、トリガーは現在1ラインです。全員で一つの作品を作るというスタイルにこだわっています。なぜかというと、ゴールを一つに設定することでみんなが集中できる。これは作品にとっても会社にとってもすごく良いことだと思っています。

作品制作においてトリガー社内のスタッフで生産している量は全体のだいたい60%。あとの40%はフリーの方、社外の方にお願いしています。まずはここを100%にすること、つまり完全内製化が一つの大きな中期目標になります。その次のステップとしては、1.5ラインを目指します。

――0.5ラインというのは、具体的にどのような状態なのでしょうか。

分かりやすく言うとショート作品を作るような形です。シリーズを2作品回すのではなくてシリーズ1本ともう1つ別班、みたいな考え方。これがもう一つの中期目標です。

次は、やはり2ラインですね。その2ラインの考え方もテレビシリーズ2本になるのか、劇場版とテレビシリーズなのか。色々考え方はありますがおそらく7年とか10年ぐらい先の長期計画で考えています。

――今年の採用職種についてお伺いします。アニメーター、制作進行、演習助手、イメージボードアーティスト、宣伝と多数の職種で募集をされますね。そのうち、制作進行と演出助手、それぞれに望む人物像・スキルとして「責任を持って業務遂行を行える人」と「コミュニケーション能力」のふたつを共通で掲げていらっしゃいますが、より具体的にどういう素養を想定していますか。

作品を作るというと長期の仕事になっていきます。下手すると1年同じ作品をコツコツ作っていく。そういった時に一人ひとりが作品に何かしらの責任を持って仕事しなきゃいけない。それは動画でも同じだし、制作進行も同じ。自分たちの仕事には必ず業務の責任が伴い、それをこなしていくことで作品が出来上がります。

アニメ制作はベルトコンベア方式で、仕事がつながっていくものなんです。前の人が終わったものを次の人にバトンタッチして、そのまた次の人に渡していく。一人の仕事が色々な人に影響を与えます。「全体の中の一人ですよ。一人にもちゃんと責任があるんですよ」という意識を持って貰うことはすごく重要です。

また、技術習得というのはどの職種にも必要です。教えを貰って、それを身につけていくことが成長に繋がります。自分が成長していくために、成長することに対して真面目で前向きな人であってほしいなと思います。

――舛本さんが面接で相対する時に、この人そういう素養があるな、というのはどう判断されるのでしょうか。

正直なことを言うと完全にはわからないです。言語化するには難しいんですが、まずは言葉でのコミュニケーションを見ています。

流暢であるかないかといった点は問題ではなく、相手が希望していることを聞こうとする雰囲気。それに対してちゃんと答えようとする雰囲気。これはさっきも言ったように、言葉が上手い下手ではなく姿勢なんですよね。そういったところが面接の時に見るところかなと思います。

――制作現場に合いそうかどうか、にもつながりそうですね。

そうですね。アニメ会社は会社ごとに個別の文化を持っているので、その文化に合うかどうかは重要なポイントだと思います。

――舛本様から見てトリガーはどういう文化を持った会社なのでしょうか。

アニメ業界も仕事は仕事です。作品を良くするという視点が独りよがりではなく、作品の内容やお客さんを意識しているかどうかが、1つの大きな文化かなと思います。社会人として、依頼していただいたものをちゃんと納品するということが大前提ですが、やはり見ていただく方を喜ばせることが仕事。これは会社の文化というよりは一人ひとりがその意識を持っているかということ。会社が強制するものではなく、自ずと出来上がっているんじゃないかなと思っています。

お客さんや作品内容を意識して「これは面白い」とか「こうやった方が良い」とか、トリガーの監督陣はそこを一番気にします。それが絵コンテになりスタッフに伝わり、技術が発揮される。この表現がいいんじゃないかっていうのをみんなが考えています。視点としてスタッフ全員が「お客さんを作品を通して楽しませる」という意識を持っているというところが一つの文化かなと思います。

――アニメーターに望む素養について、もう少し具体的なポイントを教えて下さい。

やはりポートフォリオが重要です。当たり前ですが、作品を支えるアニメーターに一番必要なのは画力です。イラストレーターとかではない、アニメーター的な画力があるかを一番最初に見ます。これが第一次審査です。

トリガーの場合、その後に実技試験と面接があります。面接では「真面目さ」「責任を持って仕事できそうか」「コミュニケーション能力」のような点を確認します。画力と面接の採用における重要度の比重で言うなら6対4。面接の比重が重いと思うかもしれませんが、やはりアニメはチームで作るものですし、特にトリガーは1ラインと全スタッフの総力戦で作品を作りあげるので、人柄の部分も重要視しています。

丁寧な育成カリキュラムを完備

――御社はアニメーターの育成に力を入れていると伺っています。どういった育成内容なのかお聞きしてもよろしいでしょうか。

弊社のケースですと、アニメーター、演出、制作進行など現場を最前線で支えるスタッフを5年前ぐらいから会社全体の年間カリキュラムを組んで育成しています。

毎年4月に入社&在席したスタッフに2週間の全体研修をおこないます。ここは職種関係なく全員を集めて行います。トリガーは福岡にもスタジオがあるので、福岡も繋ぎます。やることはアニメの基礎用語、アニメの作り方、コミュニケーション方法、SNSの使い方、あとは働き方など全般を学んでもらいます。

そのほかには、アニメの予算表や香盤表、シーン割表も作ってもらいます。アニメの場合、クリエイティブスタッフは現場配属以降、自分の職種に専念することになります。そうするとアニメ制作全体の視野が育たないケースが出てきます。ですので事前に、予算表や香盤表、シーン割表を理解してもらうことで、アニメーターや演出にも、アニメの全工程を見渡す視野を磨いてもらおうと考えています。特に予算表の内容はアニメ全体の構造を模している部分があるので、力を入れて研修で教えています。

2週間の全体研修が終わったら各部研修に入ります。役職により内容は違いますが、例えばアニメーターだとだいたい3ヶ月から5ヶ月をかけた基礎カリキュラムがあり、先生がマンツーマンで指導します。

制作進行だと、2~3週間の専門座学をやりながら制作模擬体験を行います。そこからOJTで先輩がついて助手のような形で学んでもらいます。

演出も同じです。専門的な研修があった後、先輩の助手という形で1話通して先輩がやっていることを学んでもらいます。

全体研修、各部研修、OJTを踏まえた基礎研修、その後の実務経験を経て、戦力となるには1年ぐらいかかります

――非常に丁寧な育成が行われているのですね。お話を聞いている感じだと、大学時代にアニメを作っていたとか、専門学校に通っていました、のような事前知識は必ずしも必要ではないのでしょうか。

もちろんあればあった方が良いのは間違いないですが入社して全部教えるので、無くても問題ないです。

――御社は採用として、毎年、演出助手の枠を設けられていることも大きな特徴だと思っています。その理由を教えていただいてもよろしいですか。

トリガーの代表である大塚雅彦が生粋の演出であり監督です。「監督は作品を支える」というのをよく皆さん話しますが、重要なのは絵コンテ。作品のクオリティにダイレクトにつながります。

だからといって、絵コンテが良いものができたから良い映像が出来上がるかというとそうでもない。アニメの場合、その後に映像化していくために大変な作業が多数あります。そこを仕切っていくのも演出。アニメーターにお願いして絵を描いてもらう。仕上げさんに色を塗ってもらう。美術さんに背景を描いてもらう。撮影さんに映像効果をつけてもらう。役者の方々に声を吹き込んでもらう。全て演出が発注を行いジャッジをします。

結局は、演出の判断自体が作品のクオリティを左右します。演出は作品の柱ですね。家作りでもどんなにいい材質のドアや窓があっても、柱がちゃんとしてないと地震があった時、崩れてしまう。私も色々な会社で制作進行の仕事をしましたが、演出さんがしっかりしてる会社は作品が良いです。

今、アニメ業界的に危機的なアニメーター不足の状況もあって「アニメーターを多く採用しよう。育成しよう。」と言われていますが、トリガーはアニメーターだけではなく「演出をちゃんと育てる」ことも重要視しています。これは大塚の方針でもあり、だからこそ6年前から「いい演出を育てる」という目標のために演出助手を定期採用&育成しています。

――6年を経て、演出が育ってきたと感じることはありますか?

ありますね。数字的にも現れています。

映像制作には、最終的な映像をクオリティアップするために「リテイク」、つまり作り直しをすることがあります。弊社の場合、リテイクは大体コンテ時のカット数の3倍出ます。つまり300カットの話数だったら、900カット出るわけです。3回、同じカットを作り直すために色々なセクションの方に協力いただいています。そして、この処理も演出がジャッジをしていくことになります。

社内に社員の演出がいて、全シリーズを社内演出が回していくというのは、とても作業効率的に良い。演出が会社内にいれば、相談事があったときも制作進行を介さずに直接聞きに行くことができます。その逆に演出も、気になるスタッフにすぐに話に行けます。

結果としてリテイクの数が減りました。アニメの映像を作る作業の中で、現場監督が現場にいるって当然なことですが、とても重要なことだと実感しました。長期的に見て、社内演出を採用&育成する事で作品をクオリティアップできていると実感しています。

――採用したことによる芽がすでに出てきているのですね。

そうですね。弊社で最初に演出として採用したスタッフが監督になりました。その監督が育てた2年目、3年目、4年目のスタッフたちが各話演出としてチームに参加してます。

だからすでに出来ているチーム性があって作品にプラスになっている。それが「ダンジョン飯」という作品なんです。

――最後に、ワクワーク2025に来場する学生、および今後御社を志望する学生に向けてメッセージをお願いします。

昨今アニメ業界自体がすごく盛り上がっています。これからもっと発展していく業界だと確信を持っています。

でも発展を支えているのは現場で映像を作る一人ひとりの人間です。その人たちの技術力によって良いものが出来上がっていると思います。そういった意味では、皆さんにアニメ業界に入っていただくということ自体が5年後、10年後の業界を支えることでもあるし、もう少し大きく言うと、日本を支えることなのかもしれない。そしてそれは日本だけじゃなく、世界のファンの方に対して良いものを提供するということです。

私が入ってきた20年前の状況とは全く変わっています。これからアニメ業界に入るということは広い「世界」と戦っていくことだと感じています。

そういった意味では、大きい夢を持てる。やりたいことが目先のことだけではなくもう少し広い視野で叶えることができるかもしれないです。なので大きい視野でこの業界に来ていただきたいなと思いますね。

その中でトリガーを選んでいただければ! 面白い業界だと思って「やりたいことがある!」のであればぜひ前向きに一歩を踏み出してもらえると良いんじゃないかなと思います。

――お時間いただきありがとうございました!

会社情報:
 社名:株式会社トリガー(英字表記 TRIGGER Inc.)
 創業:2011年8月22日

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《提供:ドキドーキ!編集部》

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