9月30日、TOHOシネマズ日比谷にて、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』の大ヒットを記念して「ティーチイン付き・ブラックボックス舞台挨拶」が開催。江戸川コナン役の高山みなみ、立川譲監督、そして原作者の青山剛昌が登壇した。
興行収入137億円を超える大ヒットを記録している本作。その終映企画の一つとして企画されたこの舞台挨拶は、これまで明かされてこなかった制作秘話(ブラックボックス)を丸裸にするというもの。原作者である青山氏自らが手掛けた原画パートや絵コンテなども公開され、ここでしか聞けない制作のこだわりが披露された。
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舞台挨拶にはコナン君の着ぐるみも駆け付け、高山氏と一緒に登壇、続いて立川監督と青山氏が続いた。青山氏が舞台挨拶に立つのは、『名探偵コナン ゼロの執行人』の時以来で、会場からは黄色い歓声が上がった。
ティーチ・インはまず本作の製作経緯から語られた。アニメ制作は脚本作りに始まり、絵コンテを作り作画作業に入るが、青山氏は脚本にも意見し、絵コンテも全て目を通して監修するという。また、企画会議は青山氏の自宅で行っていたそうだ。立川監督いわく、青山氏のチェックはいつも早いそうで、制作スタッフはいつも助かっているらしい。
話はアフレコに移ると、高山氏のアドリブの話になる。よく台詞のニュアンスや言い回しを現場で変えることがあるという高山氏は、頭の中の推理の流れなど、よりわかりやすく伝わる言い方を考えたり、コナンの気持ちの流れを考えて変えていくと言う。立川監督は、「コナン君の気持ちこれで合ってるよね」という提案の仕方をしてくるとのことで、それは長く演じ続けているからこその部分があって、新規の作品ではあまりないことだと語った。
また、今回の作品で見せ場の一つである、水中でのコナンと灰原がやり取りするシーンでは、アフレコによって尺が変わったそうだ。高山氏と灰原役の林原めぐみの台詞のスピード感のコントロールで、1分近く尺が変わったという。
また、青山氏の提案によって変わったシーンを絵コンテともに解説してくれた。灰原がコナンを、「新一君」と呼ぶシーンは、ここは灰原が毛利蘭の気持ちになっているから、そのように呼んでいるとのこと。その時の心情によって呼び方が変わるのだと言う。
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また、立川監督から青山氏への質問で、映画のラストカットの構図を変更したことについて、そのほうが観客を見つめている構図になるので説得力が増すからと説明。
その絵コンテの比較がスクリーンに映し出された。変更前は、俯瞰気味に灰原を捉えている、青山氏の提案でほぼ真横から灰原がカメラを見つめるような構図に変更になっている。
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また、このカットの原画は青山氏自ら描いている。会場ではその原画も公開された。その他、青山氏の描いたコナンの原画も公開された。
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今作では、青山氏自身が原画を担当したカットが他にもあるそうだ。試写で初めて本作を観た時、高山氏は「こんなに描いていて大丈夫なのか」と思ったという。青山氏は、(初期劇場版の頃は)本職のアニメーターに対して遠慮があったが、最近は遠慮がなくなってきたのだそうだ。
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立川監督は、青山氏の絵は特徴的な立体感があり、簡単に真似できない、映画の中で(青山氏の原画を)増やしたいと想い、ジンやベルモットも描いてもらったとのこと。
続いて、事前にSNSで募集した質問に3人が答えることになった。ステージにはブラックボックス舞台挨拶にちなんで黒い質問箱が運ばれてくる。
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ひとつ目の質問は、本編中のホテルの部屋割りについて。立川監督は園子、阿笠博士と小五郎は1人部屋だという。部屋割りは高山氏も気になるようで、キャンペーン期間中も話題にしていたらしい。
続いて、赤井がロケットランチャーを撃った後、秒で退散しているが、コナンの無事を確認したのかという質問。それは赤井がコナンを信頼しているということのようだ。
続いて、直美アルジェントがいつ灰原を宮野志保と確信したのかについて、灰原が直美に手を差し伸べるあたりのくだりでなんとなく気づいたのだとのこと。
また、青山氏は毎年自分で手掛ける映画のティザービジュアルのインスピレーションはどこから得るのかと聞かれ、同氏は「適当」と答えて笑いを誘っていた。すでに来年のティザーも出来上がっているそうで、楽屋で高山氏は見せてもらったらしい。
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最後に会場からの質問コーナーに移る。今回の劇場版で初登場したピンガは、女性に変装している設定で、女性の声と男性の声をともに村瀬歩が演じていることについて聞かれ、中性的な感じにしたくて後から村瀬氏に決めたという。また、ピンガはメキシコの酒なので、戦い方や髪型にメキシコの要素を取り入れたとのこと。
また、ジンがヘリコプターから降りてくる場面で、ジンが神々しく描かれていたことについて聞かれた立川監督は、夕日で水や潜水艦が光っている感じにして、神が下りてきたような印象にしようと思ったとのこと。
30分の舞台挨拶はあっという間に終了の時間を迎えた。青山氏は最後の挨拶で次回作では、服部平次がとんでもないところで戦い、コナンがとんでもないところをスケボーで滑ると期待のコメントを寄せてくれた。
最後に、定番の「真実はいつもひとつ」のポーズを全員で決め、舞台挨拶は終了した。
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(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会