1990年より「漫画アクション」で連載が開始され、 1992年にTVアニメの放送がスタートした人気アニメ『クレヨンしんちゃん』。映画は1993年より毎年公開されており、最新作となる『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』は、シリーズ初となる全編3DCGアニメーションとなります。
アニメーションは『シン・ゴジラ』や『STAND BY MEドラえもん』を手がけた映像プロダクションの白組。監督・脚本は大根仁さんが務める本作は、構想から含めて7年という制作期間を要したそう。すべてが“しん次元”となる『クレヨンしんちゃん』に注目です!
今回アニメ!アニメ!では、お馴染みの主人公・野原しんのすけ役の小林由美子さん、深谷ネギコ役でゲスト出演する鬼頭明里さんにインタビュー。3DCGで紡がれる『クレヨンしんちゃん』の印象のほか、「超能力」を題材にした本作にちなみ、2人が使ってみたいと思う超能力について質問。すると、“女性声優ならでは”のお答えが返ってきました。
[取材・文:米田果織 撮影:吉野庫之介]
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小林由美子、しんちゃん歴“5歳”の思い&鬼頭明里の『クレヨンしんちゃん』の思い出
――『クレヨンしんちゃん』が3DCGになると聞いて、いかがでしたか?
小林:『クレヨンしんちゃん』は“2Dの権化”のような作品なので、最初は「え!?」と驚きました。しんちゃんが笑った顔を正面から見たこともないですし(笑)。それが3DCGになった時に“違和感”になるのではないかと思いましたが、さすがの白組さん! 実際に出来上がった映像を見て「なんの心配もいらなかった」と思いました。2Dの良さも残しつつ、3DCGだからこそ表現できるお尻のツヤツヤ感もあって(笑)。さらにしんちゃんの魅力を引き立たせてくれる映像になっていましたね。
――大根監督が手掛けた脚本の印象も聞かせてください。
小林:アクロバティックなシーンが多いので、お子様たちには視覚的にも聴覚的にも楽しんでもらえる一方、大人に向けた深い内容も織り交ぜられています。いじめや親と子の関係にまつわる鬱々とした心理描写がとてもリアルで、そんなコンプレックスを抱く非理谷充(CV:松坂桃李さん)がしんちゃんと一緒に向き合っていく姿に感動。大根監督らしいテイストが含まれた、大人子供それぞれの見方がある作品になっていると感じました。
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――鬼頭さんはいかがでしょうか。今作で『クレヨンしんちゃん』に初参加となります。
鬼頭:子供の頃から見ている『クレヨンしんちゃん』に参加できるなんて! 声優というお仕事に就けて良かったと思いました(笑)。しかも、劇場版での“しんちゃんガール”役(※ヒロインポジション)を任せていただいて、本当に嬉しいです。内容は小林さんの言った通り、子供にとっては笑えて、大人にとってはジーンと胸に響くものがある、『劇場版クレヨンしんちゃん』らしい作品になっていると思いました。
――子供の頃から見ていたとのことで、やはり大人になると作品の見方は変わりましたか?
鬼頭:そうですね。子供の頃に見ていた時は、単純にしんちゃんのおバカな行動や下ネタに笑っていたのですが(笑)。大人になってから改めて作品に触れると、ひろしとみさえに感情移入して見てしまいました。
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――そんな『クレヨンしんちゃん』の中で好きなキャラクターはいますか?
鬼頭:しんちゃんが好きなのは大前提として、ひまわりも好きです。赤ちゃんだからこその無邪気さがあって、「おいおい!」ってこともやらかしますが、かわいいし赤ちゃんだからしょうがないなぁ~って許しちゃう(笑)。あとは、風間くんとしんちゃんのコンビも大好き! 当たりが強いのに、結局しんちゃんに勝てない風間くんが愛しい(笑)。
小林:しんちゃんが何かやらかしても、無視せずにずっとツッコミ続けてくれるしね(笑)。
鬼頭:良いコンビですよね!
――名作だらけの『劇場版クレヨンしんちゃん』の中で好きな作品も教えてください。
鬼頭:やはり「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001年公開)ですね。子供の頃に見ても良い作品だと思っていましたが、大人になってから見ると、深い内容をより理解できました。あれこそ“大人に向けたクレヨンしんちゃん”だと思います。
――小林さんがしんちゃん役を担当するようになり、今年で5年目となります。しんちゃんと同じく“5歳”として、演じる上で心境の変化などはありましたか?
小林:長く続いている作品なので、視聴者の思い出とがっつりリンクしていて、それを壊したくないがゆえに、最初は「受け継がなければ」「イメージ通りのしんちゃんでなければ」という思いが強かったです。ですが、そこに引きずられ過ぎてふと思うように芝居が出来なくなっていたことに気付き、そこからは破天荒な5歳児であるというところに意識をなるべく持って行って楽しんでやろうと。最近は5歳の息子をよく観察しているのですが、その姿を見てみると、しんちゃんってあながちアニメだからの世界の話ではないなと・・(笑)
――リアルの5歳もこんな感じなのですか!?
小林:もちろん脚色は加わっていますが、息子にも「母ちゃんのブラジャーに名前を書いてあげるね」と言われて実際に書かれたり……(笑)。アニメの世界の中だけで生きている5歳像ではないとわかったんです。そこから、これまでのイメージを大事にするというよりかは、リアルな5歳児・しんちゃんを演じることの楽しさを覚えるようになりました。
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小林由美子&鬼頭明里が欲しい「超能力」は?
――鬼頭さんが演じたネギコは、しんちゃんに超能力の使い方を指南する国際エスパー調整委員会埼玉支部の美人職員。演じてみていかがでしたか?
鬼頭:先ほども言ったのですが、まさか私(の演じる役)がしんちゃんにとっての“キレイなお姉さん”ポジションを演じられるとは! と光栄に思いながら演じました。しんちゃん目線で見てきた物語を、大人になってまた違う目線で見ることができるというのは、とても感慨深いです。
――小林さんは、鬼頭さんが演じたネギコはいかがでしたか?
小林:歴代のしんちゃんガールはキレイだったり色っぽかったりするだけじゃなく、強い意思を持っています。今回のネギコも芯のしっかりした強い女性で、かわいくて強い部分も持ち合わせた鬼頭ちゃんにピッタリだと思いました。
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――一緒にアフレコできたのですか?
小林:いえ。今回は3DCGということで収録の仕方がいつもと違い、私はひとりでの収録でした。ですが、鬼頭ちゃんが見学に来てくれて、そのおかげでテンションを上げてアフレコに挑めました。
――鬼頭さんは、小林さんの演じるしんちゃんをどのように見ていたのでしょうか。
鬼頭:私が子供の頃見ていたしんちゃんから代替わりはされてはいますが、小林さんがブラッシュアップしたしんちゃんになっていると思いました。長年築き上げられてきた歴史を受け継ぐというのは相当プレッシャーだったと思うのですが、こうして自分なりに新しく作り上げたしんちゃんを演じている小林さんは本当にすごいです。
小林:ありがとう……!
――鬼頭さんのほか、松坂桃李さん、空気階段さんがゲスト声優を務めます。
小林:毎回ゲスト声優を務める方々は素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのですが、今回もすごかった! 空気階段の2人はアフレコが初めてだと言っていましたが、嘘だと思いました。むしろ「嘘だと言ってくれ!」という感じ(笑)。本職の声優さんがやっていると思うくらいお上手で。
鬼頭:私もそう思いました!
小林:だよね! 松坂さんも、“どこにでもいる青年が突然、超能力を手に入れる”という難しい役どころにもかかわらず、すごくリアルなお芝居をしていて素晴らしいと思いました。特徴があるわけでもない、どこにでもいる役が一番難しいんですよ。でも、そんな非理谷をリアルに演じ、さらにしんちゃんと関わっていくことで生まれる細かな心の変化を見事に表現されていました。
鬼頭:ゲスト声優と紹介されずに見たら、たぶん誰もわからないでしょうね。「どのキャラがゲスト声優?」って。それくらい馴染んでいました。
全然違う話になるのですが、香盤表をもらった時に私の名前が空気階段のお2人に挟まる形になっていて、私も空気階段のメンバーになったみたいで面白かったです(笑)。
――今作でしんちゃんが超能力を手に入れることにちなみ、お2人が子供の頃に使いたかった超能力を教えてください。
小林:超能力というか、『ドラゴンボール』のかめはめ波が打ちたくて、本気で練習していました。
鬼頭:わかります! 私も!
小林:まずは電気のヒモを揺らすことを目標に(笑)。
鬼頭:私もかめはめ波は練習しましたし、あと舞空術もできるようになりたいと思っていました。
小林:わかる~! 漫画を読んでいて、念じたらできるようになる気がしたんですよね(笑)。
――私もすごくわかります(笑)。では、大人になった今、使いたい超能力はありますか?
鬼頭:男性になる能力がほしいです。女性声優って男の子役はできるんですけど、男性役はなかなかできないんですよ。男性になって、男性役を演じてみたい。
小林:それもすごくわかる……! 私は男の子役をやることが多いのですが、だいたい3シーズン目で大人になって、キャストが変わっちゃうんですよね。でも、私としてはその役が大人になった姿も演じたい。そういう時はいつも「男性の声帯が欲しい」と思ってしまいます。
――最後に、映画を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
鬼頭:初の3DCG映画ということで、今までとは違った楽しみ方ができると思います。3DCGならではのド迫力超能力バトルを、劇場の大スクリーンで楽しんでください。
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小林:子供のみんなには楽しく笑ってもらえる、大人の皆さんには泣いてもらえる作品になっています。“しん次元”なしんちゃんをスクリーンでぜひご覧ください。
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映画『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』
2023年8月4日(金) 全国東宝系公開
監督・脚本:大根仁
原作:臼井儀人
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利
声の特別出演:松坂桃李、空気階段、鬼頭明里
2023年8月4日(金) 全国東宝系公開
監督・脚本:大根仁
原作:臼井儀人
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利
声の特別出演:松坂桃李、空気階段、鬼頭明里
(C)臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会