HJ文庫より刊行中の、ハヤケン先生による大人気シリーズ『英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最 強の見習い騎士♀~』が、2023年1月よりテレビ東京、BSテレ東にて放送スタートする。
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本作の主人公である、かつて英雄王として名を馳せた男性が転生した麗しき見習い騎士・イングリスを演じるのは鬼頭明里さん。男性が転生したキャラクターをどのように演じたのか、本作の見どころやアフレコでのことなどいろいろお話をうかがった。
イングリスを演じるのは、すごく忙しいけど楽しいです
――まずは、原作を読んだ第一印象を教えてください。
鬼頭:この作品は転生モノですが、おじいさんから美少女に転生するのが面白いと思いました。しかも、高い能力を持ったまま転生して、転生後にすることが「武を極める」ですし、すべてが斜め上だなって。
――これまでも転生モノの作品に出演されたことはあると思いますが、主人公を演じるのは珍しいですよね。
鬼頭:そうですね。転生して最強になる役はだいたい男性が演じているイメージがありますので、女性の私がやるのはすごく貴重な機会だなと思います。
――性別が変わることで、特に序盤の話数を演じる際に意識したことはありますか?
鬼頭:転生したばかりの頃のモノローグは転生前のイングリスの人格がそのまま残っているので、死ぬ前の威厳を出せたらいいなと思って演じました。でも、転生して女の子としての人生を歩んでいくうちに、モノローグも肉体に寄っていくというか、普通の女の子のようになっているなと原作を読んで感じたんです。だから、モノローグもどんどん女の子らしくしていきましたね。
――演じていく中で、ほかに苦労した部分があれば教えて下さい。
鬼頭:忙しかったことですね。第1話は赤ちゃんから始まるので、赤ちゃんの声をやりながらおじいちゃん(転生前のイングリス)の意識でモノローグを言い、そこからちょっとずつ成長していくんです。それがすごく忙しかったですけど、楽しかったです。
――転生前のイングリスは別の方が演じられていますけど、その声は意識しましたか?
鬼頭:いえ、あまりに違いすぎますから(笑)。似せようとは考えず、ただ“威厳”は出せるように、とは思いましたね。最初は割と声を低めにして、男性として生きてきた意識もちょっと持ちながらやっていました。
――男性、しかもおじいちゃんの意識を持つのは、なかなかないですよね。
鬼頭:そうですね。難しかったですけど、第2話以降はどんどん成長して女の子としての人生を歩んでいくので、イングリスも女の子として意識にも慣れてきたんじゃないかなと思って。セリフも最初の方は無骨な文章だったのが、どんどん柔らかくなっていくんです。だから、モノローグだけでなくセリフもどんどん女の子っぽい感じにしていきました。
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――では、難しさとは逆に、演じていて楽しかったところはどこでしょうか?
鬼頭:私はもともと色んな役をやりたくて声優になったので、ひとつの作品で色んな役をできるのがすごく楽しいです。赤ちゃんの声をこんなにガッツリ喋ることもなかったですし。しかも、赤ちゃんとして感情を表現しなくてはいけないところも結構あるんですよ。
――ちなみに、収録ではモノローグ部分も止めないで録っているのですか?
鬼頭:はい。止めないで録っていることが多いです。だから、毎回パッと切り替えていかないとダメなんですよ。テンポのいい作品なので、そうしないとどんどん進んでいっちゃいます。
――戦闘シーンも見どころですが、そういうシーンはどのようなことを意識して演じたのかお聞かせ下さい。
鬼頭:イングリスはいつも余裕で相手を倒しちゃうので、そんなに泥臭い芝居にはならないんですよ。焦ったりせずに、「なかなかやるねぇ」というぐらいの気持ちでやるようにしました。
――思いっきり泥臭い役もやってみたいですか?
鬼頭:やってみたいですね。でも、イングリスは逆に泥臭さがないから、ずっと爽やかでいられるんです。世界の危機にも一応関わってはいきますが、そんなに重い気持ちにならずに気軽な気持ちで見られるのもいいなって思います。
――休憩時間など、アフレコでの印象的なエピソードはありますか?
鬼頭:ブースにハエが入ってきたことがあったんですよ(笑)。しかも、めっちゃ大きいのが。私が最初に見つけたから、休憩中に「ハエがいたんですよ!」って言ったんですけど、「(ブースを確認して)あれ?いないね。もう出ていったのかな?」みたいになって。それで再開したらまたブーンって飛んできて、みんな気もそぞろになることがありました。私も急いじゃってセリフが早上がりしちゃうし。スタッフさんを呼んで殺虫剤を探して対処したりして、それで団結力が高まったと思います(笑)。違う日にも入ってきたことがありましたし、この作品はハエと戦いながら録っています。
私が思うよりも、イングリスは戦うのが好きなんだなって
――鬼頭さんが感じる、イングリスの魅力を教えて下さい。
鬼頭:イングリスは、転生前は国を守るためにその強さを使っていたんですが、転生後は武を極めるために、強い敵を求めて常にワクワクしているんです。シリアス展開になっても、そんなことよりも強い奴と戦いたいという明るい気持ちでいてくれるので、見ていて暗い気持ちにならないし、しかもめちゃくちゃ強くて頼もしいんですね。それでいて中身は男性だから、恋愛の変なドロドロした感じにもならない。そういう、ずっと爽やかなところがイングリスの魅力だと思います。
――見た目も自分で鏡を見てニヤニヤしてしまうぐらいの美少女ですし、スタイルもいいですからね。
鬼頭:転生してこんな美少女になったら、ナルシストにもなっちゃいますよね(笑)。
――性格はすごくポジティブですが、鬼頭さんご自身に通じるところもありますか?
鬼頭:イングリスのポジティブさは自身の強さから来ているものだけど……私は別に強くないので(笑)。シリアスなところでも常にワクワクしているのは、結構意外に感じるというか、逆に私とは全然違うのかなって思います。
――その違いは、どのように考えて演じたのでしょうか?
鬼頭:私が思うよりも、この人は戦うのが好きなんだと考えるようにしています。自分にはない感覚だからこそ忘れがちになるので、難しいところですね。
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――監督や音響監督からのディレクションで印象的だったことはありますか?
鬼頭:年齢のことですね。先ほど話したように序盤の話数では年齢がちょっとずつ上がっていくので、「ここは何歳です」「ここはあと2歳年が上がります」「微妙に年取っています」といった感じに言われて、ムズっ!と思いながらやっていました。
――では、イングリス以外のキャラクターのこともお聞きします。イングリスの従姉妹で幼馴染の侯爵家令嬢・ラフィニア(CV.加隈亜衣)の印象を教えて下さい。
鬼頭:ラフィニアは本当に可愛らしくて純粋な女の子なんですけど、イングリスが作中で言っているように孫みたいな存在ですね(笑)。イングリスは前世の記憶があって、ちょっと子供らしくないところからスタートしているのとは違い、ラフィニアは本当に純粋で可愛らしい子供でいてくれるから、その対比が面白いなって思います。
――加隈さんの演技は聞いてみてどうでしたか?
鬼頭:めちゃくちゃピッタリでした。ラフィニアの純粋さや可愛らしさがすごく出ていると思います。
――鬼頭さんと加隈さんがメインで共演するのは初めてとのことですが、2人で今後やってみたいことはありますか?
鬼頭:一緒に番組やラジオをやることでさらに仲良くなることが多いので、この作品でもそういう機会が増えたらいいですね。加隈さんがどういう人なのか、もっと知りたいです。
――ほかに鬼頭さんの琴線に触れたキャラクターを挙げるなら誰でしょうか?
鬼頭:ラフィニアのお兄ちゃんのラファエルが好きですね。見た目も性格も正統派王子様みたいな感じで、すごく好青年なんです。
――もし、ラファエルのようなお兄ちゃんがいたら甘えちゃいそうですか?
鬼頭:めちゃめちゃ甘えますし、めちゃめちゃ周りに自慢すると思います(笑)。
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この役を通して、新しい扉を開けた感じがしました
――イングリスの中身は男性なわけですけど、鬼頭さんは自分自身を男っぽいなと思うことってありますか?
鬼頭:同性といる時はそうなっちゃう気がします。ちょっとスカしちゃう、じゃないですけど(笑)。
――例えば、どういう感じですか?
鬼頭:基本的に私はテンションが低いところにあって、声のトーンも低いから、クールに見られがちなんです。それもあってだと思うんですけど、男前なところを見せたいというか、そういう感じになっちゃうんですよ(笑)。それに、無意識に同性に嫌われないように、サバサバした立ち回りをしちゃいますね。
――でも、実際には乙女なわけですよね?
鬼頭:そうですね。全然乙女です(笑)。
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――鬼頭さんはファッションセンスもいいですし、普段からその場に合わせたコーディネートをするそうですが、鬼頭さんがイングリスをコーディネートするとしたらどんな格好をさせたいですか?
鬼頭:イングリスはめちゃめちゃ美少女だしスタイルもいいから、何でも似合うと思うんですけど……私はドレスを見るのが好きなので、可愛らしいドレスを着せたいですね。
――特にどんな色のドレスが似合うと思いますか?
鬼頭:髪は銀色のような感じで綺麗だから、真っ白なワンピースとか真っ赤なドレスとか似合うでしょうし、冬の感じもあるからブルベ(ブルーベース)も似合いそうかなって思います。
――では、作品タイトルにちなんだこともお聞きします。声優として今後もっと“極めて”いきたいのはどんなことでしょうか?
鬼頭:やっぱり演技ですね。この役はあの役とあの役とあの役を経てきたからこそ今できているんだろうな、って思うことがすごくあるので、これからも積み重ねていって、色んな役をできるようになっていきたいです。
――そういう意味では、この作品はさまざまな年齢・性別を演じていますから、今後に繋がるといいますか、引き出しが増えた感覚があるのでは?
鬼頭:すごくありますね。
――赤ちゃんを演じるところも、ただ泣くだけではなく、その中にセリフがある感じですからね。
鬼頭:そうなんです。明確に感情があるというか、「戦わせてくれ」などと言っていますし。
――ただの赤ちゃんではないのも面白いですよね。
鬼頭:はい。新しい扉を開けた感じがしました。
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