キャストは完全初見の書き下ろしオリジナルシナリオによる謎解きに挑みながら、ゲームの途中にはストーリーに沿った朗読劇が繰り広げられる。さらに観客は、LINEチャットで舞台上のキャスト陣にヒントを与えて一緒に謎解きが楽しめる。謎解きの進行によってはエンディングが変わっていくという、新感覚の劇場型ゲームイベントだ。
超!アニメディアでは、7月10日公演に出演する岩崎諒太さん、田丸篤志さん、葉山翔太さんへインタビューを実施。テストプレイ直後の興奮冷めやらぬ中、謎解きや推理ゲーム好きと公言する3人から好きなミステリーコンテンツをうかがいつつ、本イベントのストーリーやキャラクターを考察してもらった。
[取材・文:阿部裕華]
小説、ドラマ、映画……ミステリー愛を語り合う
――『ボイミス』のお話をおうかがいする前に……出演者コメントに「謎解きが好き」「推理ゲームが好き」と書かれていましたので、まずはみなさんがお好きなまたはハマったミステリー系コンテンツについて教えていただきたいなと。いかがでしょう?
岩崎:僕が所属する劇団ヘロヘロQカムパニーでは 『金田一耕助シリーズ』の舞台や、先日も『江戸川乱歩パノラマ朗読劇』をやっていまして。トリックの仕掛けや推理の仕方が面白くて、すごく楽しかったです。なかでも江戸川乱歩の『心理試験』は犯人の追い詰め方がすごかったんですよ。
葉山:へぇ、どんな追い詰め方を?
岩崎:事件に関連した言葉を容疑者に投げかけて、その言葉に対する反応速度を記録するというものです。真犯人の心理としては反応速度が遅い方が疑わしいのではないかと事前に何度も練習するんですが、でもそれが逆に慣れを生んで反応が早すぎてしまい、結果的に疑われちゃう、という。
田丸:なるほど。
岩崎:そんなもんで分かるんだ!と意表をつかれるトリックが面白かったですね。
田丸:僕は小さい頃から『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』が好きで見ていましたし、今でも『コナン』の劇場版を見に行きます。あと、実家にミステリーの本しか並んでいないほど両親がミステリー好きで、東野圭吾さんの小説とかは読んでいましたね。
ドラマでもミステリーをよく見ます。最近話題になった作品だと『あなたの番です』とか。かなり頑張って推理していました。
岩崎:あはは(笑)。あれは難しかったですね。
田丸:秋元(康)さん企画原案なら、この役者さんは重要なポジションを任されるのでは…?なんて推理もしていました。
葉山:探りが深い(笑)。僕もドラマ作品は『科捜研の女』『京都地検の女』とかよく見ますね。
田丸:あ~、見ると面白いんだよなぁ。
葉山:そうなんですよ! ミステリー + サスペンスの要素がすごく面白くて。おばあちゃんの家に遊びに行くとテレビで流れているので、小さい頃からよく見ていました。最近はミステリーサスペンスの映画『死刑にいたる病』を4回くらい見に行きました。
岩崎:そんなに!?
葉山:まず1回目は主人公視点で見て、2回目は犯人視点で見て、3回目は全体像で見て、4回目は何も考えずに見る(笑)。最初の方はメモ帳に「なぜ殺したのか?」「あの笑顔はどういう意味があるのか?」とメモ帳に書いて考察を楽しんでいます。そういう意味では考察する余白のある作品が好きですね。
田丸:すこいな…… !僕は脱出ゲームもいろいろやりましたね。近年流行っているマーダーミステリー(パーティーゲームの一種)も流行る前からプレイしていました。海外の翻訳版を翻訳があやふやなままプレイしていたのを覚えています(笑)。
『ボイスミステリー』は“発想”と“ひらめき”が鍵
――そんなミステリー好きなみなさんが『ボイスミステリー』というプロジェクトに対して、率直にどう思われたのかが気になります。
岩崎:お話をいただいた時は正直全く分からない状態で、何をするんだろう?と思っていました。それで今日やっとテストプレイをやってみて、初めてこういう感じなんだ! これは楽しい! と分かった感じです(笑)。最初はタイトルに“ミステリー”と入っているからには、かなり推理が必要になってくるのかなと思っていたのですが、難しく考えずとも3人それぞれの発想とひらめきでクリアまでいけるんじゃないかなと!
田丸:僕も最初はイマイチ分からないながら、「ミステリー」「謎解き」のワードに惹かれて面白そうと思ったのですが、今日テストプレイをやってみてTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)の遊び方に非常に近いなと感じました。TRPGはプレイした経験がほとんどなかったので、新しいことにチャレンジできて楽しかったです。ゲームシステム的にはマップ移動のようなテレビゲーム的な要素もありますし、観客のみなさんも難しく考えることなく分かりやすく見れるのではないかと思います。
葉山:何か準備をするというよりは、ある言葉から連想してヒントを導き出す感じなので、想像力が重要なんですよね。推理とはまた少し違って、その場のパフォーマンスによって左右されるイベントだろうなと。だから、とりあえず当日はよく寝てから挑みたいですね(笑)。ちゃんと頭が回る環境づくりから頑張っていきたいなと思います。
岩崎:思考できないと発想もひらめきも難しくなるからね(笑)。
田丸:そうだね。我々ができるのは体調管理くらい。寝不足は絶対にダメですから。ブドウ糖を摂取して頭が回るようにしましょう(笑)。
――テストプレイをやってみて、どなたが一番得意そうなどありましたか?
岩崎:誰が一番とかはなかったかもしれません。お互いに意見を出してディスカッションしながら進めていく感じでしたね!
葉山:たぶん一番頭を使っていたのはMCの田中(正平)さんでしたね……。いい感じの加減に調整して僕らにヒントを出す。そして、横道に逸れそうになったら軌道修正してくれて。田中さんが一番の切れ者でした(笑)。
昼の部「いろんなエンディングパターンが思いつく」
――ここからは昼の部・夜の部、それぞれのストーリーについて現時点でどのように考えているか“考察”をおうかがいしていきます。まず昼の部『摘発:思惑めぐる南国と謎の人工知能』は、みなさんが“諜報員”として「謎の人工知能」の秘密を解き明かすストーリーです。
岩崎:AIの謎って近い未来にありそうな設定ですよね。僕、都市伝説とかも好きなのですが、それによく出てくる陰謀論も絡んできそうで……世界の真相に触れてしまうのではないかとゾクッとしています(笑)。
田丸:敵のような存在が仮にいるとするならば、僕らは一体何と戦うんでしょうね……。
岩崎:「無名の開発会社から格安で提供されたAI」と書いてあるので、この会社は怪しいですよね。
田丸:そのAIをつくった会社が敵なのか、それともAIが成長しすぎてしまった結果、AI自体が敵になっているのか。自分たちがつくり出したのはいいけど、制御できなくなっている可能性もありますからね。バッドエンドの場合は、調査していたことすべてを忘れた3人が南国リゾートで遊んでいるところで幕を閉じるかも……。
葉山:怖い! AIにすべてを掌握され、記憶を消すような電波を飛ばされるとか……。
田丸:メタバースの世界で永遠に生き続けるとかもあり得そう。いろんなパターンが思いつくような設定にしてあって、上手いなぁと思いました。
葉山:テストプレイでは登場するキャラクター数がそこまで多くなかったですけど、本番はこれよりさらにキャラクターが増えそうですよね。誰がどの発言をしたか、とかも覚えておかないといけないので大変……。
――みなさん演じるキャラクターたちについてはいかがですか?
田丸:話術に長けていたり、運動神経が良かったり、変装が得意だったり、それぞれに得意なことがあるんですよね。なので、その特技を活かしてプレイする可能性もありそうだなと。特定のキャラクターだけが得られる情報や潜入できる場所がある、とか。(田丸さん演じる)クリストファー・ロロネアは「言葉巧みに情報を引き出す才能を持つ」ということなので、僕だけが聞き出せる情報があるのかも。当日になってみないと何も分からないですけど、そういうのを想像するだけでも楽しいです。
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葉山:僕の演じるスペンサー(・ローレン)は「卓越した演技力を持ち潜入や変装に適性を持つ」という設定なので、『怪人二十面相』みたいですよね。
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田丸:いろんな声を出さないといけないかもしれないね。
葉山:なるほど……! もしかしたら女性や動物の役をやる可能性もあるのか。喉を整えておきます(笑)。
岩崎:自分の演じるウィンザー・マンセルは、チームのリーダーでありながら「社交性が低く天然な一面を持つ」そうなので、この天然さがどう作用するのかが気になるところですね。みんなに迷惑をかけちゃうかもしれない……。
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葉山:でも「自身の死も厭わず~」とも書いてあるから、そういう場面では率先して体を張ってもらえればなと(笑)。
夜の部「普遍的な設定だからこそ捻りがあるかも…」
――続いて、夜の部『追想:始まりの宝石と真夜中の包囲網』は“高校生”たちが見つけた「謎の宝石」を巡る物語です。昼の部とは打って変わり、少し日常感の溢れる題材になっていますね。
葉山:探偵学園的なお話のように感じますね。
田丸:小学生の時に学校の中庭に埋めたタイムカプセルから大きな宝石が出てくるということですが、この宝石は人間が埋めたのか。それとも未来人のような不思議な存在が埋めたのか。
岩崎:おっと、話しが変わってきたぞ……。普通の高校生の日常の中の不思議な出来事くらいに捉えていたから、今の田丸さんの話しを聞いて固定観念が覆されましたね。
田丸:本当に分からないんですよ! 大きくなった僕らのうちの誰かがタイムリープして宝石を埋めていたのかもしれない。一見普通の設定なだけに何か一つ捻りを加えているのではないかと、僕はスタッフのみなさんをめちゃくちゃ疑っています。
岩崎:ちょっとじゃなくて、めちゃくちゃ疑っている(笑)。でもたしかに「これは宝石を巡る、壮大な物語の幕開けに過ぎない」と書いてありますし、ただの高校生じゃないのかも。
――実は昼の部と世界が繋がっている可能性もあるとか……?
岩崎:おお!? 新しい発想が来たぞ。
田丸:なるほど! 例えば、現実と仮想現実みたいな話しもあり得そうですね。
葉山:実はこの高校生たちはAIに支配された世界で、どこかに繋がれて夢を見ている物語という可能性もありますね。
田丸:絶対にないとは言い切れないですね……。
岩崎:個人的に一つ気になっているのが、自分が演じる万里 集くんだけ2人とは別の進学校に通っているんですよね。それが謎解きにどう作用してくるのだろうかと。
葉山:違う校区(学区)で調べ物ができるとか!
田丸:そっかそっか、僕らが直接行けないところへ集に代わりに行ってもらうとかもできるのか。
岩崎:または2人とは関わりのない、自分の学校の同級生に何かしらの謎があるのかもしれない。自分の特性をちゃんと理解しておかないと!
葉山:そういうスキルを活かして謎解きパートでワイワイしながら、朗読パートで3人の関係性も見えてくると思うと、いろんな楽しみ方がありますよね。すごく満足感が得られそう。
――謎解き次第では物語の進行やエンディングも変わってくると聞きました。
岩崎:そうなんです。謎解きの結果に合わせた台本が、その場で渡されていくという。
田丸:複数のエンディングがあるということですが、僕らもどういうエンディングになるかその場で知るんですよ。もはや何がトゥルーエンドでバッドエンドなのかも分からない。観客のみなさんと知っている情報が同じなので、一緒に楽しめそうだなと思います。
当日まで何も分からないからこそ、一緒になって楽しめる
――ちなみに、3人での共演は『ボイミス』が初めてですか?
田丸:僕と岩崎さんは今日が初対面でした。
岩崎:そうなんです!
――初対面なんですね! 3人での共演に向けて楽しみにしていることはありますか?
葉山:この3人で掛け合いをすること自体が初めてな上に、当日までシナリオが分からないので、その場でどういう化学反応が起こるかが楽しみです。
岩崎:どうお芝居が転がっていくのか予想がつかない分、楽しみですよね。
田丸:謎解きパートにおいては、テストプレイをした感じ全く不安はないなと思います。いい感じに意見を出し合えていました。
岩崎:演じるキャラクターもそうですが、キャスト3人のパーソナルな部分も違うので、ある意味バランスが取れるのではないかと思っています。
葉山:いろんな角度から解き明かしていけそうだなって思いますね。テストプレイの時は同じ場所で一緒に謎解きをしていましたけど、さっき話している中で本番は別行動して謎解きをする可能性もあるなと思って。散りばめられた謎を制限時間の中で解くという意味でも、すごく心強いメンバーだと感じます。
――ありがとうございます! それでは最後に、『ボイミス』でみなさんと一緒に謎解きに参加する観客の方たちに向けてメッセージをお願いします。
岩崎:謎解きも朗読も当日まで本当にどうなるか分からないし、お客さんたちとどう関わっていくか未知数でもあります。ただ僕らも本当に内容を知らないからこそ、お客さんと同じ目線で楽しめるのではないかなと! なので、みなさんも僕らと同じように頭を一旦空っぽにしてもらって、楽しんでいただけたらと思います。本当に楽しみにしています!
田丸:僕らとみなさんが知っている情報はすべて同じです。同じ情報を同じタイミングで見て一緒に謎解きを楽しんでいただけたらと思います。あと、今回はチャットツールを使用して、みなさんからヒントをいただけるとのことなので、とにかく助けてほしい……。
一同:あははは(笑)。
田丸:僕ら3人にはない発想をお持ちの方が必ずいらっしゃるはずなので、昼は諜報員の一員、夜は同じ学生として参加いただけたら嬉しいです。
葉山:みなさんと一緒に謎解きを味わえるのは『ボイミス』ならではだと思うので、まずは一緒に楽しめたらいいなと思います。また、参加者の方々からヒントを送っていただくという新しい関わり方ができるのは、みなさんの刺激にも繋がるかなと思いますし、僕もすごく楽しみです。とにかくまず前日は僕たちもしっかり寝るので、みなさんもしっかり寝てもらって、健康な状態で来てもらえたら嬉しいなと思います(笑)。
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