「同じ船に乗って世界に出航したい」―ディズニープラス成田岳・八幡拓人が日本のアニメに感じる可能性 | アニメ!アニメ!

「同じ船に乗って世界に出航したい」―ディズニープラス成田岳・八幡拓人が日本のアニメに感じる可能性

ディズニープラスは今後アニメ業界にどのような影響を与えていくのだろう。また、世界的なエンターテインメント企業から見て、国内アニメにはどのような魅力があるのだろうか。成田氏と八幡氏の独占インタビューをお届けする。

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「同じ船に乗って世界に出航したい」―ディズニープラス成田岳・八幡拓人が日本のアニメに感じる可能性
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ディズニー公式動画配信サービス「Disney+」(以下、ディズニープラス)といえば、ディズニー作品をはじめとする海外発の映像を楽しむプラットホームだと思っている人は多いだろう。しかし2021年10月、ディズニープラスはディズニーが誇るトップスタジオが製作する映画やドラマをはじめ、世界中のクリエイターが生み出す作品が揃う新コンテンツブランド「スター」の提供を開始し、日本国内のアニメ作品配信を始めることが発表され、大きな話題を呼んだ。

国内アニメは「もうディズニーだけじゃない。ディズニープラスは進化する」の象徴だと語るのは、日本オリジナル コンテンツ制作部門を統括する成田岳氏と、アニメーション責任者の八幡拓人氏。日本のアニメ作品やクリエイターには、大きな可能性を感じているという。

ディズニープラスは今後アニメ業界にどのような影響を与えていくのだろう。また、世界的なエンターテインメント企業から見て、国内アニメにはどのような魅力があるのだろうか。成田氏と八幡氏の独占インタビューをお届けする。

プロフィール

成田岳

ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社エグゼクティブ ディレクター、オリジナル コンテンツ担当。株式会社フジテレビジョン、Netflixなどでの勤務経験を経て、2019年にウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社に入社。日本のオリジナル コンテンツ制作部門を指揮・統括している。舞台の演出家、映画監督としての経験やドラマの経験も豊富。

八幡拓人

ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社アニメーション責任者。エイベックス・ピクチャーズ株式会社、ワーナー ブラザース ジャパン合同会社でアニメ作品の宣伝、企画プロデューサーなどの経験を経て、2021年9月にウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社に入社。ディズニープラスではオリジナル コンテンツ部門内のアニメ作品制作を統括している。

ディズニーの原点に立ち返る


――ディズニープラスは世界中でサービスを展開しています。現在の会員数はどのくらいいるのでしょうか。

成田:現在は世界64ヶ国に展開しており、会員数はグローバルで1億2900万人以上です。日本国内でも2020年からサービスを開始し、期待以上の成長を見せています。

© 2022 Disney and its related entities

――ディズニープラスでの人気作品を教えてください。

成田:従来ですと、伝統的なディズニーコンテンツが人気です。家庭でも安心して視聴できるような作品が人気を集めています。映画なども比較的早くディズニープラスで提供しているので、新作も人気です。また、「スター」が始まり、海外ドラマ、韓国ドラマなども非常に好評いただいています。

――ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社では、ディズニープラスに対してどのような考えを持っているのでしょうか。

成田:ディズニー内でもかなり期待されており、会社全体で盛り上げていこうと考えています。ディズニーは数年前に大きく方針転換をして、動画配信という手段でコンテンツを世界中の人々に直接届けようと決めました。

最初はディズニー作品など自社制作のコンテンツが中心でしたが、だんだんとラインナップを広げています。とくにディズニープラス独自の総合エンターテインメントブランドとして立ち上げた「スター」では『ウォーキング・デッド』のような大人向けコンテンツやオリジナル作品、日本発のアニメなどさまざまなジャンルの作品を配信中です。

日本発のコンテンツは今後さらに力を入れていく方針で、その一環としてアニメ業界の第一線で活躍している八幡さんに入社してもらいました。目標は日本のアニメの中心的なプラットホームになることです。

――「日本のアニメの中心」になるために取り組みたいことはありますか。

成田:ディズニープラスではただ作品を調達して配信するのではなく、制作段階からクリエイターとともに作品を作っていきたいと考えています。

私は以前Netflixで働いていたので、他社も日本国内のアニメ配信に力を入れていることはよく存じ上げています。そんな中で日本アニメの中心になるのは、決して平坦な道ではないでしょう。そこでディズニーのルーツである「物語を伝える」に立ち返り、世界中のみなさまと向き合っていくつもりです。

大切なのは「最高のストーリーテリング」


――ディズニープラスでは、国内アニメをどのように位置づけているのでしょうか。

八幡:国内アニメは「もうディズニーだけじゃない。ディズニープラスは進化する」を体現する大きなジャンルです。ディズニーでは今後ディズニーIP(知的財産)以外を使った作品作りにも取り組んでいきたいと考えており、その意思表示をするうえで国内アニメは重要な位置づけになると期待されています。国内アニメの独特な文化や表現方法をダイレクトに反映させた作品が、今後のディズニープラスに追加されていく予定です。

――国内アニメの配信を発表したときの反響はいかがでしたか。

八幡:パートナーのみなさまやお客様からは、驚きと期待を持って受け入れていただけたと感じています。ディズニーが日本国内でアニメーションを作ることや、国内クリエイターもディズニープラスで作品を発信できる点に可能性を感じていただけたようです。

――配信作品を決定するときは、どのような点を重視しているのでしょうか。

八幡:最高のストーリーテリング、つまり世界中の人々の心に届く物語であるかどうかです。ディズニープラスがすでに発表した見放題独占配信アニメはジャンルや原作の形態がバラバラですが、どれも最高のストーリーテリングを持っていると自信を持っています。

成田:ディズニーではコンテンツメーカーとして、ストーリーテリングを何よりも重視してきました。人々を感動させ、見た人の心をつなげていくようなストーリーは日本国内にもたくさんあります。

八幡:日本の原作市場はとても多様性があり、世界的に見ても映像化につながるようなコンテンツが成熟しています。ディズニープラスでもさまざまな原作を読ませていただき、誰もが心を動かされるような最高峰の物語を映像化して届けていく予定です。

©B★RS/ブラック★★ロックシューター DAWN FALL製作委員会 ディズニープラスで配信中
©田中靖規/集英社・サマータイムレンダ製作委員会 ディズニープラスで配信中

――アニメ化が発表された『ディズニー ツイステッドワンダーランド』のようにディズニープラスが企画・制作に携わるコンテンツも今後は増えていくのでしょうか。

八幡:さまざまなパートナーやクリエイターと仲間になって、ディズニープラスが企画から配信まで一貫してコーディネートする作品を増やしていきます。そこでも軸になるのは最高のストーリーテリングと、クリエイティブなアイデアです。

近年はアニメのメディアやビジネスが多様化しているために「どのようなジャンルの作品が売れるか」を出発点にアニメを制作する場合もあります。もちろん手法のひとつとしては正しいのですが、本当に表現したい内容を突き詰めていった結果、最高のストーリーテリングであれば、どんなジャンルでも世界中で支持されると思っています。たとえばクリエイターが「10年温めてきたこのアイデアを世に出したい」と思っていたら、そのアイデアを100%表現できるよう協力します。私たちと一緒に本気のストーリーテリングに取り組みましょう、と伝えたいです。

成田:もちろんこれまでディズニーが世に出してきたゲームなどのIPに関しても、今後アニメ化して展開する可能性はあります。従来と同じように、お客様に作品を楽しんでいただくためにはどうすればいいか考え、より楽しさを広げるために適切な表現方法を選ぶつもりです。

© Disney “スマートフォンゲームの画像”

同じ船に乗って世界に出航したい


――ディズニープラスと組むことで、クリエイター側にはどのような利点があるのでしょうか。

成田:ディズニーはただの配信業者ではなく、テーマパークやゲーム、出版など、およそすべてのエンターテインメントビジネスで世界に進出してきました。エンターテインメントを網羅した展開方法やサービス提供地域の多様さなど、作品に触れていただく機会の多さはディズニープラスの強みです。国内アニメも配信で盛り上がっていただくのと同時に、世界中でストーリーを一緒に楽しむための取り組みをしたいと考えています。

八幡:日本ではアニメの放送時間にSNSで実況して盛り上がるファンもいます。ディズニープラスではその規模をさらに大きくして、世界で作品を共有して盛り上げていきたいです。もしかすると日本以上に人気の出る作品もあるかもしれませんし、海外での評判を聞いて日本でも話題になる作品が増えるかもしれません。

成田:クリエイターのみなさまには、同じ船に乗って一緒に世界に出航するような気持ちでディズニープラスを選んでいただけると嬉しいです。

八幡:みなさまが心血を注いで作ってくださった大切なコンテンツを配信する場としてふさわしくなるよう、ディズニープラスとしても作品に真摯に向き合っていきます。そのためにも、私たちは日頃からパートナーのみなさまと作りたいコンテンツについてディスカッションをしているんです。制作チームの一員として企画段階からクリエイティブな会話を重ねたうえで、配信につなげたいと考えています。

――ディズニー作品といえば音楽も魅力のひとつです。国内アニメもディズニープラスと組むことで音楽がさらに発展すると考えていいのでしょうか。

成田:音楽はディズニーのDNAのひとつなので、今後も重視していきます。

八幡:音楽面でもディズニーの知見を活かして協力したいと思っています。ただ、日本のアニメ音楽はすでにすばらしい芸術作品なので、むやみに手を加えるようなことは考えていません。音楽も含め、総合芸術としての国内アニメを世界中に届けたいです。

――国内アニメに関して、ディズニープラスの助力によって克服できる課題はありますか。

八幡:クリエイターの認知度アップです。日本のクリエイターはすばらしい才能を持っており、世界でも通用するレベルだと思います。だからこそディズニープラスでは、クリエイターが世界中でさらに活躍できる環境を作って送り出したいです。

日本発のアニメは世界でも需要がありますが、作品名に比べるとアニメクリエイター名はまだ有名どころやベテランしか知られていません。多くのクリエイターが世界中で認知され才能を評価されるよう、協力して作品を生み出していくつもりです。その結果世界中にファンが広がり、国内アニメの地位もさらに上がると考えています。

クリエイターのこだわりが感動を生む


――日本のクリエイターが持つ魅力とはなんでしょうか。

八幡:作品に対する強いこだわりです。私は長年アニメの企画や宣伝などに携わってきて、ときには「そこにこだわるのか!」と驚かされることもありました。

アニメは画面内のすべてが設計されてできています。背景の木1本、空の微妙な色彩など、映り込むものを駆使して何かを伝えようとしているのです。監督が最後までこだわった空の色が、最終的には見た人の心を打ったり、伏線になってラストにカタルシスを生んだりといったこともありました。こうしたこだわりの積み重ねが人の感動を生むはずです。日本では監督たちのこだわりが制作チーム全体に行き渡っており、純度の高いものづくりができていると感じます。

成田:クリエイティブの原点である発想の独自さも、世界に誇れる強みだと思います。ディズニープラスではクリエイターが持つ発想にさらに磨きをかけ、世に出すために協力しようと考えています。アニメに限らず、実写なども含めさらに上質なコンテンツを生み出したいです。

――ディズニープラスが今後の国内アニメに期待しているポイントを教えてください。

八幡:国境も時代も超越し、ノーボーダーで人の心を動かすことができる点です。アニメは世界中で100年近く愛されるほどの力を持つ媒体だと思います。ディズニープラスでも最高のストーリーテリングを大切にしつつ、ノーボーダーにアニメを届けていきたいです。

成田:日本のアニメーションはすぐれたエンターテインメントのひとつです。私たちを現実とは違う新しい場所に連れて行き、ドキドキやワクワクを提供してくれます。キャラクターが持つ夢、そこに立ちはだかる困難、仲間と乗り越えていく過程など、心に響く部分もどこかにあるはずです。そうした最高のストーリーテリングをディズニープラスで配信する作品からも楽しんでいただけると思います。

また、日本発のアニメに期待しているのは私たちだけではありません。世界中のみなさまの期待に応えるためには、青臭い言い方かもしれませんが、原点に立ち返って愚直に取り組むことが大切です。ディズニープラスだからこそできるクオリティーの高い作品を送り出していきます。

作品を未来の夢につなげたい


――動画のサブスクリプションサービスは年々増加しており、どのプラットホームを選べばいいのか迷ってしまいます。アニメファンにとってのディズニープラスならではの魅力を教えてください。

八幡:ディズニーやピクサーなどの作品と、日本国内のアニメがどちらも楽しめることです。普段は国内アニメを見ていた人が初めてディズニー作品に触れおもしろさを感じる場合もあるでしょう。同時にディズニー作品ファンに対しても「国内アニメにもこんなに素敵なものがあったのか」と知るきっかけ作りができると思います。ディズニー、ドラマ、映画、ドキュメンタリーなど複数の窓口を持っているディズニープラスだからこそ、みなさまの新しいエンターテインメント体験が広がっていくはずです。

成田:実際にディズニー作品や、エッジの効いた作品など、さまざまな方向から入ってきてくださったお客様が、視聴作品の幅を広げていく流れが見られます。ストーリーテリングを重視したコンテンツばかりなので、お客様が普段見ているジャンルとは違う作品だったとしても魅力が伝わるのです。

ディズニープラスでは「世間ウケがいいからこの作品を配信しよう」と決めているわけではありません。今後も心血を注いでおもしろいコンテンツを発信し、お客様の新たな感動を呼び起こしたいと思っています。

――今後はどのような客層をターゲットにしていくのでしょうか。

八幡:ターゲット層を決めて入り口を狭めたくはない、と考えています。作品をおもしろいと思う人には、性別も年齢も関係ないからです。こうしたノーボーダーなファン層は、日本発のアニメが持つ魅力のひとつだと思います。ですから私たちが「この客層向けに作りました」と入り口を狭めることはせず、広く親しんでいただける作品を愚直に作っていきたいです。

――ディズニープラスの今後の展望を教えてください。

成田:ディズニープラスは世界中のみなさまに楽しんでいただくことを第一に考えています。その考え方はこれからも変わりません。さらにこれからは「ディズニープラスと組めばいい作品ができあがる」と、クリエイターからも信頼していただける仲間になりたいと考えています。私たちの力だけで実現できる範囲は限られているので、ぜひみなさまと協力して魅力を何倍にも膨らませた作品を生み出していきたいです。

また、ディズニープラスが提供するエモーショナルな体験を通して、コンテンツを作る仲間が未来にもつながっていくことを願っています。もしかすると、海外に住む子どもがディズニープラスで日本発のアニメを見て「自分もこんな作品を作りたい」と夢を抱いてくれるかもしれません。そんな人が1人でも増えるよう、今後も世界に作品を届けていきます。

八幡:日本国内のコンテンツを世界中に広めていきたいです。アニメの楽しみ方は無限に広がっており、作品を視聴する以外にも、商品化、イベント、SNSでのファン同士の交流などマルチ展開をするメディアになりました。ディズニープラスとしても、今後そのような多方面の展開ができるようなコンテンツを生み出せたらと考えています。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

八幡:ディズニーは日本でも70年以上にわたってさまざまなエンターテインメントを届けており、長い間ファンのみなさまと絆を作ってきた歴史があります。ディズニープラスやスターでは、そんな歴史に新たな1ページを書き始めました。私たちもワクワクしながらコンテンツに向き合っているので、新しいチャレンジを続けるディズニープラスのこれからにぜひご期待ください。

もちろんディズニー作品もどんどん増えていきますので、長年ディズニーを愛してくださっているファンのみなさまにも引き続き楽しんでいただけると嬉しいです。

成田:ディズニープラスは日本のアニメファンにとっても、一番魅力的なサービスになるように成長していきます。みなさまに選んでいただくための努力を続けていきますので、今後の展開をぜひ楽しみにしていてください。まだまだ未発表の作品はありますし、私たちの思想がさらに色濃く出たコンテンツがこれから世に出る予定ですので、ご期待いただければと思います。

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単に動画を配信するだけでなく、コンテンツを作る仲間として同じ目線で作品に向き合うディズニープラス。日本発のアニメが持つ最高のストーリーテリングやクリエイターの魅力を世界中に伝えようと、今後も多角的な取り組みを続けていく。国内アニメ市場でもさらに存在感を増していくディズニープラスに、ぜひ注目してほしい。

《ハシビロコ》

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