その最新作『ハロウィンの花嫁』は、劇場映画にふさわしいスケール感はもちろん、細部に至るまでファンの“夢”が詰まったゴージャスな内容となった。一言で言えば、ヲタほど語りがいのある映画なのだ。ゆえに、予備知識を蓄えておくほど解像度が上がり、感動が増す。
そこでアニメ!アニメ!では、劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』をより楽しむためのポイントを5つに絞ってご紹介する!
※以下の本文にて、原作・TVアニメ、そして映画シリーズ作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さいませ。
目次
高木&佐藤カップル遂に結婚か!? 『本庁の刑事恋物語』最新版!
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「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」“ウェディングビジュアル”
まずは、今回のメインどころでもあるキャラクター周りを整理しよう。『ハロウィンの花嫁』では「高木渉&佐藤美和子の刑事カップル」「伊達航・諸伏景光・松田陣平・萩原研二の警察学校組」にフォーカスが当てられる。これまでに描かれてきた彼らのバックストーリーを知っておくと安心して楽しめることだろう。
高木刑事と佐藤刑事においては、TVアニメ版の「本庁の刑事恋物語」シリーズがオススメ(佐藤が重体に陥る劇場版第4作『瞳の中の暗殺者』もマストで押さえておきたい)。捜査一課の刑事・高木は、先輩の佐藤に片思いしていた。しかし佐藤は過去に惹かれていた松田刑事を目の前で亡くしており、そのトラウマを引きずっていて……。というところから、事件を一つずつ乗り越えて二人は仲を深め、いまでは恋人へと進展。その高木&佐藤がついに結婚か!?というのが本作だ。
ちなみに『ハロウィンの花嫁』には「佐藤を悩ませるトラウマ=死神のイメージ」「佐藤と松田が組んでいた1週間の詳細」「松田が命を落とした連続爆弾事件の犯人が脱獄」などなど、これまでのエピソードと絡んだ要素が大量に盛り込まれている。そのうえで、いつも強気な佐藤が弱音を吐く→高木が諭すという展開や、互いの愛情がしっかりと伝わるシーンが用意されており、恋愛ドラマとしても見せ場がしっかり。普段は頼りなさもある高木が今回とにかくカッコいいため、ファンの皆々様は楽しみにしていただきたい。
ちなみに高木刑事は元々アニメ版のモブキャラだったが、声優の高木渉が劇中で「高木です!」と名乗ったことで役柄が拡大したという誕生秘話がある。それがここまでのキャラクターに成長したことは、実に感慨深い。
卒業後の警察学校組の“共闘”が描かれる!
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「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」場面写真
そして、高木&佐藤とも関係が深いのが警察学校組。警察学校組とは、伊達・降谷・諸伏・松田・萩原の警察学校の同期5人組。彼らの活躍においては、原作漫画に加えて、彼らの警察学校時代を描いた公式スピンオフ『警察学校編 Wild Police Story』上下巻を参照しておこう(現在アニメが放送中)。
彼らは降谷(安室の本名)以外は死亡しており、伊達は高木の教育係だった。松田は爆発物処理中に殉職した萩原の無念を晴らそうと犯人捜しに乗り出し、暴走が過ぎたため捜査一課に異動となって佐藤と出会う。諸伏は潜入捜査官として黒の組織に潜入中、正体がバレて自決。同じく潜入中の降谷(安室)は、その原因が赤井秀一(彼もFBI捜査官として同時期に黒の組織に潜入していた)にあると考え、赤井に恨みを抱いている。第20作『純黒の悪夢』ほかで安室VS赤井が勃発したのには、こういった理由がある。ちなみに松田と萩原、降谷と諸伏は幼なじみだ。
上記の説明で黒の組織が登場したように、警察学校組は『名探偵コナン』を観ていくうえで欠かせないメンバーなのだが、5人中4人が死亡しているために警察学校卒業後、そろって活躍する機会がなかなか描かれなかった。7年前に殉職した萩原を除く4人が勢ぞろいする3年前の事件を描く『ハロウィンの花嫁』は、「映画でしか観られない」エピソードなのだ!
さらに、現在パートでは安室が3年前の事件にもかかわるプラーミャの罠にハマり、首輪爆弾を仕掛けられるというスリリングな展開や、捜査一課に異動後一週間で殉職した松田の“秘密”も描かれ、過去と現在が複雑に絡み合うストーリーになっている。
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「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」場面写真
実在の渋谷の名所にコナンたちが集結!
このように、キャラムービーとしての魅力が大きい『ハロウィンの花嫁』だが、コアファンのみに向けた仕様にいきすぎないように様々な工夫が凝らしてある。そのひとつが、大迫力の映像的スペクタクル。廃ビルで繰り広げられる警察学校組のアクロバティックなアクションや、灰原哀&毛利小五郎に降りかかるアクシデント、コナンが爆弾処理に挑むシーンなどスリリングなシーンが目白押しだが、今回の目玉といえるのは渋谷が舞台になっていること!
漫画『呪術廻戦』の渋谷事変や、ゲーム『Ghostwire: Tokyo』など、直近でも様々な作品の舞台となっている渋谷。その地にコナンたちが集結し、ヒカリエやスクランブル交差点、ミヤシタパークといった実在する場所で活躍するのは、現実とのオーバーラップ含めて非常に興味深い。リアルな“ステージ”の設定が、臨場感を高めてくれるのだ。そこに「ハロウィン」という設定が加わり、ハロウィン当日の渋谷エリアでとんでもない事態が発生する!というクライマックスへとつながっていく(余談だが、ハロウィンのシーンではコスプレイヤーにも注目。作中に登場する“とあるキャラクター”の姿を探してみよう)。
カメラワークも凝っており、渋谷の俯瞰図からスクランブル交差点にめがけて一直線に向かっていくカメラワーク、渋谷上空で繰り広げられるスカイアクションの際にはカメラが360度回転するほか、アニメーションならではの強みを生かしたシーンが多々用意されている。
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』予告
“コナンあるある”もしっかり網羅!
また、『名探偵コナン』といえば……な“あるある”な仕掛けがいくつも用意されている点も、ファンには嬉しいところ。佐藤の花嫁姿を見たコナンが「俺もいつか蘭と……」と妄想するシーンや、おなじみの「蘭!」「新一?」の「離れていても心はつながっている」演出に加えて、劇場版第1作『時計じかけの摩天楼』や第5作『天国へのカウントダウン』を彷彿とさせる演出など、シリーズ愛が十二分に感じられる。
ここに挙げた例はあくまで一部で、本編内ではまだまだ大量に「オールドファンがグッとくる」演出やセリフが仕掛けられている。高木&佐藤や警察学校組だけでなく、それぞれのキャラクターの見せ場や言動に至るまで、細やかな気配りと深い理解を感じられるのだ。
本作の監督は『ハイキュー!!』シリーズで知られる満仲勧、脚本は『から紅の恋歌』『紺青の拳』も手掛けた大倉崇裕だが、早くもこのコンビの再タッグを期待してしまうクオリティ!
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「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」場面写真
シリーズの歩みとともに楽しむ
少々コアな目線だが、劇場版コナンの“歩み”から観るという楽しみ方も。第3作『世紀末の魔術師』でちらりと見られたが、近作は明確に「海外要素」が盛り込まれている。第23作『紺青の拳』はシンガポール、第24作『緋色の弾丸』はアメリカが舞台の一つとして登場し、第19作『業火の向日葵』はオランダの画家ゴッホが題材に。そういった傾向を知っておくと、今回の「世界に悪名をとどろかせる爆弾魔プラーミャが日本襲来」というストーリーがすんなり受け入れられることだろう。
また、劇場版コナンは基本的には各作品が独立した形式だが、劇場版と原作の『名探偵コナン』は密接につながっている。古くは「劇場版のオリジナルキャラクター・白鳥任三郎が原作に逆輸入」から、近年になると「沖矢昴の正体が劇場版で判明」など、よりその関係が強固に。
原作とのリンクが濃くなるなかで、人気キャラを掘り下げる傾向がいっそう強くなり、赤井秀一&その家族(赤井ファミリー)&FBI、安室透(降谷零)を筆頭に、古参キャラでも服部平次&遠山和葉、京極真&鈴木園子といったカップル単位で魅せていくつくりになってきた。『ハロウィンの花嫁』においてもこの「キャラの深堀り」「カップル推し」が効いていて、安室(降谷)と警察学校組、高木渉と佐藤美和子の両軸で物語が設計されている。
つまり、『ハロウィンの花嫁』は劇場版コナンの“流れ”をしっかり汲んだ作品であるということ。そのため、過去作から観てきたファンにとっては「今回は警察学校組と高木&佐藤ペア!」と制作発表時からワクワクできるというわけだ。
さらに、細かい部分でいうと恒例となるオープニングの「チュートリアル」の魅せ方も作品のテイストに合わせた“遊び”が施してあり、「今回はどんな演出で来るんだろう?」というテンションで臨めば、開始1秒からアガるはず。
また、主題歌もB’zや倉木麻衣といったテレビ版からおなじみの面々だけでなく、東京事変やポルノグラフィティ、福山雅治などより幅広いミュージシャンが手掛けるように。今回はBUMP OF CHICKENの書き下ろし新曲「クロノスタシス」がエンドロールを彩る。音楽面では、本作から『PSYCHO-PASS サイコパス』『ジョジョの奇妙な冒険』の菅野祐悟が劇伴に参加している点にも注目だ。
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BUMP OF CHICKEN
“コナンユニバース”拡大中!
コミックスは4月13日に101巻が発売され、公式スピンオフ『警察学校編 Wild Police Story』『ゼロの日常(ティータイム)』『犯人の犯沢さん』がすべてアニメ化されるなど、まさに“コナンユニバース”が拡大中。
沼にハマると無限に楽しめるのが最近のコナンシリーズの新たな特長であり、今後の劇場版もキャラ推しの内容になることが予想されるため、ライトファンの方々はこれを機にもう一歩踏み込んでいただきたい。劇場版コナン恒例の“次回作予告”の受け取り方も変わってくるだろうから……。劇場版コナン観賞者の多くは、映画館で次回作予告が流れた瞬間に周囲の観客が息をのむ瞬間に出くわしたことがあるはず。
最前線でシリーズを追いかけていると最初から最後まで120%没入できる、それが劇場版コナンなのだ。
(C)2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
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