『マクロスΔ』の戦術音楽ユニット・ワルキューレ(美雲ΔJUNNA、フレイアΔ鈴木みのり、カナメΔ安野希世乃、レイナΔ東山奈央、マキナΔ西田望見)によるライブ「SANKYO presentsワルキューレ LIVE 2022 ~Walküre Reborn!~」が、2022年4月9日と10日に千葉・幕張メッセで開催された。「『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』を追体験できる」というコンセプトで、2Daysのライブが繰り広げられた。
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2日目、幕張メッセの3つのホールを繋げた巨大な会場の中央に、五角形の大きなセンターステージが位置している。その角から外へ向かって5本の花道が広がり、その先に小さなサブステージがある。しかもセンターステージの中央にはせり上がっていくステージがあり、その舞台周りは LEDスクリーンで覆われている。
上方にも同じ形のスクリーンがあり、すっぽりとリフトアップされるステージを覆い隠し、五角形の筒になるような仕掛けになっていた。 その巨大な筒状のLEDスクリーンに宇宙が映し出され、それが渦巻の銀河になっていく。
その映像がいつしか培養液のような水の泡に変わり、中から歌声が聴こえてくる。声の主は、Yami_Q_rayの闇雲ΔJUNNA だ。LEDに映し出された結晶体に透過され、 一人で「Glow in the dark」を歌い始めると、一瞬で会場を制圧。圧巻の歌を響かせた。
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スクリーンの奥で、黒いドレスをまとった闇雲がかすかに揺れる。不穏な空気の中で始まったライブ。この始まり方から察したファンもいるかもしれないが、『劇場版マクロスΔ 絶対 LIVE!!!!!!』の始まり方と同じで、今回のライブは映画を追体験できることがコンセプトとなっていた。
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そして場面が変わり、空をバルキリーが舞うと、今度はワルキューレの5人が登場する。「歌は愛」「歌は希望」「歌は生命」「歌は神秘」「歌は元気」「聴かせてあげる、女神の歌を!」と決めセリフを叫び、停戦記念ライブでの「唇の凍傷」へと続けた。会場を埋め尽くした 19,000人の観客が、5 色のワルキューレカラーのペンライトを思い思いに掲げ、全体が華やかになる。センターステージということで、フォーメーションも360度仕様で、ファンへ歌を届けていく。
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背面弾きでのギターソロから始まった「つらみ現在進行形」では、五角形の端に立って、ポジションを移動しながら歌っていく。〈獣みたいね〉では、それぞれが獣ポーズで魅了していた。
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MCでリーダーのカナメΔ安野希世乃が挨拶をし、地球で5回目のワクチンライブが開催できる喜びを語ると、レイナとマキナの組み上げたシステムによって拍手やペンライトがワルキューレの力になると伝える。そこで元気印のフレイアΔ鈴木みのりがクラップを促し、「もっと!もっと!」と盛り上げた。
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今回は、ワルキューレの最新アルバム「Walküre Reborn!」を引っさげてのライブでもあるため初披露の曲が中心となったが、ワルキューレはそんなことを微塵も感じさせない、洗練されたパフォーマンスを続ける。
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美雲ΔJUNNA によるアジテーションを合図にスタートする「無限大 DRIVE」では、5つのサブステージへ散り散りになって歌っていく。最後はセンターステージへ駆け戻り、カナメがメインで歌う「キキワケナイ!」へ。この歌謡曲テイストもワルキューレの魅力のひとつだ。腕の振りだけで表現したシンプルなダンスも昭和歌謡感が漂い、コーラスをする4人も楽しそうにダンスする。
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新型マルチドローン ver.22という名のトロッコに乗って、マキナΔ西田望見とレイナΔ東山奈央は会場中を駆け巡って「マダマニア」を歌う。センターステージやサブステージで踊っていた 3 人と合流して、5人で〈またね〉と歌って曲を終えると、続いてはレイナΔ東山の「キズナ→スパイラル」だ。電子の世界のような緑に染まった会場で、激しいオケの中で透き通った歌声を響かせるレイナと、それに寄り添うような4人の美しいコーラスが心地良くさせた。
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それぞれのソロゾーンが続き、最後にはフレイアが「風は予告なく吹く~Freyja Solo~」を歌う。この曲は〈30年に一度の星座が近づいてる〉と、寿命が30年のウィンダミア人の特徴を思い出させる曲だ。りんごの木のように真っ赤に染まる会場で、ステージには風のような青いライトが照らし、その中で赤いスポットライトに包まれながら、フレイアが歌を届ける。
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2コーラス目からはそれぞれが花道を歩いていき、主線を歌うフレイアΔ鈴木みのりに、離れたところから4人が〈ねえ私たちここにいるわ〉と、歌と想いを届ける。最後の〈Don't let me down〉のフェイクの部分では、涙をうっすら浮かべながらも笑顔でいるように見える。
続く「愛してる」は、『劇場版マクロスΔ 絶対 LIVE!!!!!!』の結末を知ってから聴くと、胸にグッと来るものがある曲だ。スクリーンには、ハヤテとフレイアのシーンが映し出され、2人の大切な時間を思い浮かべながら〈何度生まれ変わっても 愛してる 愛してる〉と 笑顔で優しく歌われる。
サブステージで歌う5人がテレスコリフターで10mほども上昇し、そこに大量の紙吹雪が舞う光景は幻想的で美しい。そこからフレイアが最後の〈愛してる〉というフレーズをアカペラで歌い、最後に少しだけ笑った。
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そのフレイアの想いを引き継ぐように、バンドは演奏を続けていく。ワルキューレをずっと支えてきた頼もしいバンドメンバーである、西脇辰弥(Key&Band Master)、外園一馬(Gt)、BOH(Ba)、佐野康夫(Dr)の4人だ。「愛してる」のアウトロを弾き終えると、西脇辰弥のハーモニカがメロディを奏で、そこからアコースティックでサウンドを積み重ねていく「りんごのうた」は、とても心に染みるものとなった。
余韻を感じながらライブの前半を終えると、そこから『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の物語は進み、ライブもクライマックスへ突入していく。
まず Yami_Q_ray の「Diva in Abyss」が響き渡る。〈「歌は歓喜」「歌は絶望」「歌は欲望」「歌は狂気」「歌は闇 逝かせてあげる 堕天使の歌で」〉と、5人は不敵で無邪気な笑みを浮かべながら歌い、声を重ねる。
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ギラギラしたメンバーカラーと黒の対比が印象的な衣装をまとい、トロッコに乗って会場を駆け巡りながら力強く、攻撃的な歌をぶつけると、さらに「綺麗な花には毒がある」を誘惑するような表情とパフォーマンスで歌う。最後はセンターステージに戻り、そこで姿を消すと、暗闇の中で“1、2、3、4、5、6、7、8”とカウントが聴こえる。つま先でカウントを取るのは、リン・ミンメイの名シーンを彷彿させる映画でもインパクトがあったシーンだが、スピーディなワルキューレのカウントに合わせて、会場では大きなクラップが起こった。
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そのクラップに応え、Yami_Q_ray が消えた場所から再びステージに現れたのはワルキューレだ。ここから、花が咲いたようなカラフルな衣装をまとった 5 人の逆襲が始まる。「未来はオンナのためにある」で力強い歌声を響かせると、間奏ではカッコ良くソロダンスを繋げていく。
バルキリーのアクションシーンもスクリーンで流れ、追体験してきた映画も、ついに最終局面を迎える。フレイアが生きることは歌うことなんだと決断するワルキューレとの感動的なシーンの映像が流れると、「絶対 LIVE!!!!!!メドレー」が始まり、それを5人で全力で歌う。ただの天才パイロットであるマクシミリアン・ジーナスの超絶バトルシーンも映し出されるなか、戦術音楽ユニット・ワルキューレも、その歌のパワーを見せつける。
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そして、ハヤテが宇宙を駆けるシーンで「ALIVE~祈りの唄~」が始まる。1コーラス目で、フレイアΔ鈴木みのりは自分の命が燃え尽きるまで歌う。その想いを受けて美雲やカナメが声を重ねていく。
フレイアのステージだけがせり上がっていき〈生きる喜びあなたの元へ〉と歌う彼女を見上げながら、4 人も声を届けていく。そして〈ーー心から愛してる〉と力の限り歌い、ステージから消えていくのは、どこまでも映画とリンクした演出となった。
「宇宙(そら)のかけら」の1コーラス目では、声を少し震わせながら歌う美雲が心を動かす。その後もフレイア以外のメンバーで歌を繋げていく。そんな4人のもとへ、再びフレイアが現れ歌声を重ねる。そこからハヤテとフレイアのやり取りが流れ、ひとつの物語が締めくくられた。
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大きな感動に包まれているとオルゴールのイントロが流れ、「みんな、今日はワルキュ ーレに会いに来てくれて、ほんにありがとう! また絶対笑顔で会えるように、最後の曲盛り上がっていくんよ!」と、フレイアの元気な声が会場中に響き渡る。
映画のエンディングテーマとなっている「ルンに花咲く恋もある-movie edition-」は、みんな楽しそうに、 笑顔でステージを駆け回りながら歌う。曲間には、バンドメンバーの紹介とソロ回しがあり、ステージ上のカメラに向かって歌っていた。〈BAN BAN〉と歌うところで、風船が割れてりんごを模した小さな赤い風船が会場に広がっていくのもきれいな光景だ。最後は会場の観客と大きくジャンプをして「あんがとーございました!」とライブ本編を終えた。
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大きな拍手に応えてのアンコールでは、イントロから会場がどよめいた。マクロス40周年記念超時空コラボアルバム「デカルチャー!!ミクスチャー!!!!!」から、「ユニバーサル・バニー」が始まった。シェリルが1人で歌う曲を、ワルキューレらしい五重唱で歌っていく。ちなみに、初日は「サヨナラノツバサ」が披露された。
最後のMCでは、それぞれが自身の言葉で思いを語った。
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安野希世乃は「5人でワルキューレのステージを、この2022 年にできることが幸せなことだと噛み締めながら立っていました。素晴らしい演出の今回のステージは、長年 5 人でやってきた私たちだから、そしてこのバンドメンバーの皆様、スタッフの皆様とだからこそできたライブなんだと感じていました。今日会いに来てくださった皆さんも本当にありがとうございます。奇跡のようなライブだったと思うので、立ち会ってくださった皆さんに大きな感謝を伝えたいです。いつかまた、今日やった新曲と合わせて、ワルキューレ特盛みたいなライブができたら嬉しいなと思っていますので、きっとまたステージでお会いしましょう」とコメント。
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東山奈央は「『マクロスΔ』がスタートしたときは、新作劇場版を作らせていただく未来はまったくなかったので、スタッフさんの愛情、皆さまの大きな声援があったからこそ辿り着いた未来でした。物語はいろいろと感じ入るものがあったんですけど、よくぞここまで描ききってくださったという気持ちで胸がいっぱいです。孤高の天才ハッカーだったレイナも、5人でたくさんのことを乗り越えたことで絆を手にしていったので感慨深いものがありました。そして、私たちも力を合わせて作り上げた今回のステージ! 2 日間で終わるのはもったいない! ツアーで回りたいくらい! 私たちは戦術音楽ユニットです。戦う誰かを応援するために歌を歌っています。皆さんがこの会場をあとにしても、生活の中で今日のライブのいろんな場面が心を支えてくれますように。今日のことがそんなかけがえのない思い出になっていたら嬉しいです。心のワクチン打ちましたので、またみんな元気でお会いしましょう!」と挨拶する。
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西田望見は「優しいスタッフの皆様に支えられてこのステージに立つことができました。そしてワルキューレメンバーは精神的にも体力的にも不安なときに優しい言葉をかけてくれて。“私たちがステージにいるから大丈夫”という言葉が力になりました。ワルキューレの 5人でなければステージに立てなかったなと思っているし、みんなが大好きだなと噛み締められました。そしてライブを見てくださったファンの皆様、本当にありがとうございます。いつも私は“ワルキューレワールドに連れていきます”って言っているんですけど、 私が皆さんにワルキューレワールドに連れてきてもらえているんだなって、今回のライブをやってみて思いました。皆さんが応援してくれるからこそマクロスの世界に入れるんだと思うと感謝しかありません。ありがとうございます! これからもがんばりますので応援よろしくお願いします」とトーク。
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JUNNAは「ここにいるスタッフやファンの皆さん、そしてワルキューレメンバーがいたからこそ、2日間、歌を最後まで届けることができました。1 曲目 1 人で出ていくときは不安だったけど、みんなが見守ってくれて、私はステージに堂々と立つことができました。最初このステージをやると聞いたときは不安しかなかったんですけど、この 5人だからこそできたステージで、5 人で幸せだなと思いましたし、感情全部ぶつけられるライブでした。物語の中で歌う歌って、いろんな感情が溢れてきて、私もそれを乗せて美雲として歌えるんだなって、6年やってきて、それがこのステージでもしっかり出せたと思います。ワルキューレはこれからもどんどん上に昇っていけると確信したので、これからも応援、お願いします!」と述べる。
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鈴木みのりは「全宇宙のマクロスファンの皆様ありがとうございます。ワルキューレは性格も声色も違うけど、5人ひとつになったとき、素敵なユニットになるとあらためて思いましたし、5人でステージに立たなければ意味がないと感じました。今日のライブはいろんな気持ちを込めて歌わせてもらったんですけれど、フレイアとしてはハヤテが劇中で、戦いのない、悲しくも辛くもない優しい歌をフレイアは歌うんだと言ってくれたので、私はそんな歌をフレイアとして歌いたいと思いながら、昨日と今日歌わせていただきました。リハーサルやレコーディングのときも悲しい涙ではなく、フレイアの気持ちが体に入ってきて、 言葉にするとどうしても涙が出てきてしまう。これはライブでちゃんと歌えるんだろうかと思っていたんです。でも本番は、皆さんが優しく包み込んでくれて、素敵な演出で自分の目標通りのフレイアとしての優しい歌を歌うことができたと思います。今日、皆さんとこの時間をフレイアとして過ごすことができて本当に幸せでした。これからもフレイア・ ヴィオン役の鈴木みのりとしてワルキューレで歌い続けていきますので、安心してください」と呼びかけた。
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5人が想いを伝えると、ラストは「ワルキューレはあきらめない」を歌ってライブを締めくくる。ガッツリ5人でダンスをして、魂を燃やしながら声を張り上げて歌った。
なお、この日は『劇場版マクロスΔ 絶対 LIVE!!!!!!』と同時上映の『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』を収録したBlu-rayとDVDが、9月28日にリリースされることが発表された。
今は40周年記念イヤーの真っ最中の『マクロス』シリーズ。勢いが止まらない中、次はどんな驚きをくれるのか、まだまだ目が離せない。